「追っ手の姿は?」「見えないようだ」

「ひとまず順調だ。まぁ、こんなとこで追っ手が居たら終わりだがな」
「くっくっく」
「何を笑ってやがんだ」
「いやなに、あの泣き虫のチビスケに護衛を依頼する事になるとはと思ってな。立派になったもんだ。もっとも、チビスケなのは相変わらずなようだが」
「余計なお世話だ、この身体が役に立つ仕事なんていくらでもあるさ。アンタこそ同族にしちゃデカすぎるだろ」
「くっく、まぁそうだな。ところで、ご母堂はお元気か?」
「あぁ、身体が弱いのは相変わらずだが、何とか元気にやってるよ。あの時アンタが金と医者を用意してくれたお陰でな。あん時の恩が無かったらこんな仕事受けてねぇよ」
「恩は売れる時に売っておくモノさ。何がどう転ぶかわからんからな」
「さぁ、余計なおしゃべりはそこら辺にして、この毛布にくるまって、その穴倉で身体を休めろ。上から枯葉をかけてやる。オレは水と食い物を調達しておく。明日からの山越は厳しいぞ、しっかり休んどけよ」
「……。この岩転がってこんか?」
「コレは岩じゃない、植物だ。根を張ってるから転びやしない。ほら、さっさと寝ろ。オレの指示はすぐ実行しろ。それがこの仕事の絶対条件だ。それさえ守れば、何が何でも逃してやるさ」
「あぁ、よろしく頼む。おやすみ」
「あぁ、しっかり休め」

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#ベイルファイア #マルチ

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