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第7章 北区(後編)完

とにかく北区は区役所の皆さんの歓迎っぷりが凄かった。
家探しもゴリゴリ動いていただき、早々に後半のお家候補もご紹介いただいた。ラッキーボーイ。
なんせこの「家を探す」というタイムリミット付きの負荷が日々の生活にこれほど重くのしかかってくるとは思わず(いや最初から分かってたやろ)精神的にも体力的にも疲弊していたので、北区役所の皆さんの動きは本当に助かった。あらためて感謝。彼ら(彼女ら)の税金を下げてあげてほしい。

「淡河デパート食堂」と書かれたガラスの扉の向こうに、上品でオシャレなご夫婦がおられた。
区役所の方にご紹介いただき、上垣内(カミガイト)という名前のお名刺をもらった。何て読むのか全然分からなかったので下のお名前「ケンジさん」と「アイコさん」と呼ばせてもらう事にした。

聞けばこの淡河デパート食堂、昔は病院だったそうだ。
確かにようく見るとその名残が見てとれる。ワザとそのままにして残してあるプレートなどもある。しかしあまりにオシャレで楽しい色使いの階段や、昭和レトロの家具や雑貨の数々に目を奪われ、ぱっと見は「万博」みたいに感じた。
「ケンジさんがここを万博みたいにしたいって。」とアイコさん。ほうら。ほうらね。

ともあれここでの生活が始まった。
聞けば僕がここの「入院患者」第一号となるそうだ。身も心も健康になって退院したいと思う。


〜中略〜


夏の北区は快適の極み。
中央区を仕事の主戦場とする僕ですが、仕事が終わって北区に帰るのが楽しくて仕方がなかった。
涼しい。景色が気持ちいい。何度バイクで「最高や!」と叫んだ事か分からない。
もう文字におこしても、ラジオで話しても、この気持ちよさを到底伝えることはかなわないと思う。不可。フカキョン。

表現者としての敗北。
でもそんなのカンケーねぇ。でもそんなのカンケーねぇ。
僕のちっぽけなプライドなんて、北区の夏はぶっ飛ばしてくれた。
それくらい魅力がぶっ飛び出てる。出てるる〜。

行くっきゃない。行ったら分かる。
夏の北区、絶対また帰ってこよう。

また来たくなる街、北区。


冬は、知らん。

第7章 北区 完