ここは郊外の田んぼや畑が広がるのどかな田園地帯。とても静かな所。
カモやシロサギ、アオサギ、ウ、猛禽などの野鳥が訪れる。
のどかな田園地帯とはいえ、道路はすぐ横で車通りもまずまず多い。
民家はすぐそこにあり、公民館や公園なども少し離れた所にある。
田んぼの裏には森があってその中には通りからは見えない集落があり、たくさんの家がある。
一回目の緊急事態宣言が出たばかりの頃。
「パーンパーン」
静けさを破って銃声が響いた。
田んぼの近くの歩道脇に都会のナンバー、シルバーマークの付いたランドクルーザーを停まっている。近くに大きなポインターを連れた男がいる。70代位で白髪頭の老人。オレンジ色のベストを着た猟友会だ。田んぼに向けて猟銃をぶっぱなしている。近づいて行くと老人は撃つのをやめた。
「何をしているんですか。田んぼに鉛玉をぶっ放してるんですか?」
すると彼は、ここは禁猟区ではないから問題ない、ちゃんと講習も受けているから大丈夫なのだと説明する。
「ここは家もあって人もいるんですよ。危ないからやめて下さい。」
しばらく押し問答をしたがやめようとはせず、安全であると繰り返す。
らちがあかず、すぐそばでしばらくじっと見ていた。
やりにくくなったらしく老人は去って行った。
しばらくして、2回目の緊急事態宣言が出た。
田んぼの近くにまた見慣れない車が2台、それと3人の男。車のナンバーはまたしても他の都道府県ナンバー。そしてまたシルバーマーク、60代~70代位の老人だ。皆オレンジ色のベストを着ている。また猟友会のハンターだ。
猟銃を持って田んぼの回りをうろついている。獲物を探しているようだ。
2人の男は猟銃を持ったまま2手に分かれて田んぼの奥の方を見に行ってしまった。そこで車に残っている男に話しかけた。
「ここで何をしているんですか?銃を撃っているんですか?」
「撃っていないよ」
「でも獲物が見つかったら撃つんでしょ?」
「ん・・・、いや、まあ、その、撃つこともあるかな・・・」
「ここは家もあって人もいるんですよ。危ないからやめて下さい。」
「ん・・・、じゃあ、仲間に言ってみるよ」
ところが、しばらく男の車のそばで見ていたが、男は言いに行く気配はない。こちらと目を合わさないようにしている。
田んぼの方に歩いて行った別の男が田んぼの横の通りから一番目立つ家の脇にいるのでそちらの方へ行って言った。
「ここで銃を撃つのはやめてもらえませんか?ここは家もあって人もいるんですよ。」
「何?あ?家あんの?」
すぐ目の前に家があるのに見えないわけがない。他にも何件も見える範囲に家や建物があるのに知らばっくれている。
「人?いるの?何?散歩?」
「住んでいるんですよ」
「あ?住んでんの?」
老人があまりに舐めた態度を続けるので頭に来てややブチギレ気味になった。
「なんだと、この野郎!」
押し問答をしていると、田んぼの反対側に行っていた別の男が近づいてきた。太った体格のいい老人で猟銃を持ったままこちらを睨みながら凄んで近づいてくる。じっと睨み返すと男は後ずさった。
2人の老人は先ほどの車を停めてある方に歩き始めたので後をついて行った。彼らは車に乗ったがすぐには動かない。しばらく見ていた。
やはりやりにくいと思ったのか、車はどこかへ去って行った。
こんな事がたまに起きる。
彼らの言い分は「ここは禁猟区ではないから銃を撃っていい」だ。
役所に問い合わせたら、やはり禁猟区でなければ撃っていいとの事で特に何もしてくれない。住居があり人がいるのだと食い下がると、では立て看板を立てておきますと言った。しかし月日が経っても看板は現れない。
これはここだけの話ではない。知らない人も多いかもしれないが、国中のほとんどの場所が禁猟区ではないのだ。だいたいの場所で猟銃を撃つ事が法律で規制されていないのだ。ハンターのモラルのみに委ねられている状態。それをいい事に悪質な老人が他の都道府県ナンバーのシルバーマークでやってきて無神経に楽しむ、そのために住民が脅かされる。
禁猟区などの法律はおそらく相当昔の状態のままなのだろう。
自民党政治は身内のための法律を作り、また身内のために法律を変更しない。
猟友会と自民党の関係はどうなのだろうと思わずにはおれない。
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