中学受験で変な癖をつけるな!

中学受験、それも難関校受験は過酷である。
難しい問題をしかも大量に『こなす』ことで
試験場で見たことがない問題に当たらぬように準備します!
と、大手塾は宣い、
親はそれ(見たことがない問題にあたること)に恐怖し、
子どもに強制する。

今や、小学1年生から『最高レベル特訓』とか、
『灘中特訓』なる講座が散見される。

困ったことには、そのクラスの中には物凄くできる奴が居て、
『あの子にできて、うちの子にできないわけはない!』と
お母さんの眉間に深い皺が刻まれるようになる。

過酷なハードルを苦も無く自力で越えられる子も居ないではない。
最難関校に上位の成績で合格する子である。
そのような子にこそ、本当は大量演習は不要である。
寧ろ問題を篩にかけて必要なモノだけをする学習が向いている。
そして、伸び代も潰さずに済むのである。

『小5のあたま(学年の初め)で、もう志望校の合否は決まっている』
などと塾の先生にほのめかされると(本当は聞き間違えだと思うのですが)親の焦りはどんなものになるか…想像に難くない。

ここで申し上げておきたい。
小5になったばかりの時期に、合否なんて決まりません。
いくらでも“逆転”が起こります。

それより何より、クラス替えが気になるあまり、
宿題を“こなす”とか“片づける”といったやり方が
定着してしまう事の方が大問題です。

中学入試はゴールではなくて、スタートです。
そのスタートに立った時点で“壊れている”ようでは
中学、そして高校へと成長するにしたがって

伸びてゆくということは望めません。
“志望校に合格しなかったらもうだめだ”という
親御さんの考えこそが大きな間違いです。

私はその現実を何度も実感しています。

ある同級生が二人で我が塾に来ていました。
一人は西大和へ、もう一人は星光へ進学しました。
星光に行った子は残念ながら
志望していた西大和には合格できなかったのです。

その6年後。
“星光君”は東大に合格しました。それも理系です。
“西大和君”は関西の私大に行きました。

私の中では大学の入試結果など
人間の評価ではないと思っているのですが…。
いわゆる入試結果と言う意味では星光君の圧倒的勝利です。

中学受験生の大半のお母さん方は
『問題数を減らす』ことにはまずもって賛成しません。
怖くてできないのです。何が怖いのだろう・・・?

この星光君は、塾に来ている時、物凄くスローモーでした。
宿題も点検すると“ここまでしかできませんでした”とか、
“この問題、解けなかったので、諦めずに自分で解きます。”
などという言葉を何度も何度も聴きました。
そして遅ればせながら彼は必ずそのやり残しを
解消していきました。

そして彼は6年生の後半にこんなことを言いいました。
“センセイ、もう宿題は出さないでください”
どういう答えが返って来るか予想は付いたが…、
他の子にも聴かせたかったので“質問”をした。

『なぜ、宿題は要らないの?』
すると彼はこう答えた。
『だって、やらなくてはいけないことがたくさんあるんです!
それをしたいから、宿題は要りません!』と。

それを聴いた時、この子の未来が透けて見えたと思いました。
が、まさかそれが東大だとは思いもよりませんでした。
勉強を『強制してさせる』ことは良い結果には繋がらないという
実にわかりやすいケースを彼は残してくれました。



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