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【CoCシナリオ】1丁目17番地9号/Kuku hayate

【あらすじ】
住宅街の奥まった袋小路に、その家はあった。
「1丁目17番地9号」
家主さえ迂闊に入れない空き家。そこだけ周囲に家はなく、鬱蒼と雑草が生えた空き地が広がる。ぼうぼうと伸びた草と木に埋もれるように、腐りかけたかつて赤かったであろう屋根が見える。太陽の下でも、その家だけは彩色を失い、湿った空気を纏っていた。

あそこには何かが潜んでいる。
近隣の者達は口々に言った。
あそこに近づいてはいけない。きっと良くないものをみるだろう…と。

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シナリオ概要
推奨人数:ソロ 継続 / 新規とも可能
推奨技能:探索技能全般(※調整可能)
シナリオ形式: クローズ
ロスト: あり(低)
後遺症: なし
所要時間:
オンラインボイスセッション1時間弱
KP・PL難易度:低
システム: クトゥルフ神話TRPG6版
使用: 基本ルールブック6版
添付ファイル:記事最後にキャラクター画像ZIPファイルがあります(PNG)。セッションにご利用ください。

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※本シナリオは神話生物に関する独自解釈、オリジナル成分を含みます。
※原型がなくなるほどの改変は禁止です。
※シナリオに関してのご質問はTwitterの返信欄等をご使用ください。不特定多数の方の目に触れる可能性のある場での『ネタバレ』に関しては、ふせったーなどをご使用くださいますよう、よろしくお願いします。

本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」

【KP情報】

いわくつきの幽霊屋敷に探索者は強引に引き込まれます。幽霊屋敷の主(不動産屋・無理心中をした父)は自身の家を執着していて事故物件とし、取り壊させないために無作為に人を引き込みホラー体験を強います。中には脱出できずに家の中でゴースト化してしまっている人もいます。室内は迷路のようになっていて、間取り概念がありません。幽霊がいる部屋は無限に増やすことができます。
ゴーストの追加や細部表現などは、自由に行っていただいて構いません。目星等のダイス頻度の調整なども自由とします。

ねこまた……オリジナルの妖異です。(※漫画「ねこまた。」参照)基本的に人には見えません。猫のような外見をしていますが、猫ではありません。冷気をまとい、人に冷やっこさだけは感じさせます。軒に憑いている小さな守護神で、人の営みを見守っています。神通力はほとんどなくほぼ役に立ちません。開始時SAN値から6減少すると見えるようになります。
このシナリオ通過後・ねこまたが探索者に憑依している場合は「かわいさ」によってSAN値回復をしてくれるアーティファクトとなります。シナリオでSAN値が削れた場合、シナリオ外でダイスを振り、独自回復することができるようになります。ねこまたがまとっている服とほっかむりの模様は、探索者に憑依後定着し、探索者の好きな柄にすることができます。
※出版社にはねこまたの使用は了承済みです。連れ帰った場合、個人的に可愛がってあげてください。


【導入】
あなたは道を急いでいた。久しぶりに友人と会っていた帰り道。既に23時を回ってしまっている。急がないと終電に間に合わない。タクシーをこんな田舎道で捕まえるのは至難の業だ。そう思いながら地理をよく知らないにも関わらず、近道を選んでしまう。遠くに見える駅の明かりを便りに…。
住宅街を早足に通り過ぎる。ふと建物が途切れ、闇夜が現れる。その闇の中に街灯が灯っている。その光はくすんだ赤い屋根の家をぼんやりと浮かび上がらせていた。あなたは光を辿るようにその道を進むしなかった。
その家は古く、長く空き家のようだった。門の格子戸には「売り家」と書かれた古い看板がかかっている。だがそれは雨に晒されて大半が読めなくなっていた。
それを横目にあなたは通り過ぎようとする。
だが、それはできなかった。
全身を大きな手でむんずと掴まれたような感触。
そう感じた瞬間、一気にあなたはその家の中に引き込まれた。あまりの衝撃と速さに、あなたは一瞬気を失ってしまう。

あなたはハッと目覚める。
さほど時間は経っていないような気もするが…
あなたは見知らぬ古い家屋の室内、裏口前に倒れていた。明かりはない。床はシミができてたわんでいる。長く雨漏りに晒されていたのだろう、腐りかけた天井にも闇のようなシミがいくつも見える。下水口から鉄臭いような生臭いような空気がわずかに上がってきているのか、室内はよどんで埃っぽい空気に満ちていた。

時間を確認する。
時計は逆回転をしている。電子時計はチラチラと液晶が瞬きはっきりと表示されない。スマホのライトは生きているが、圏外。
電話をかけると…「電波の届かない届かない届かない…」とバグっている。
裏口…開かない。ノブ自体がなくなっている。
部屋…暗いがキッチンのようだ。
肌寒い。足元に冷気を感じる。
★オカルト
成功・何かの気配を感じる。小さな足音がするような…(san1/1d3)
失敗・寒い。緊張からだろうか?

裏口がダメなら玄関だ。玄関を目指すしかない。

探索箇所
キッチン・仏間・廊下・居間・階段・玄関

★聞き耳
成功・どこかから何かを引きずるような音がする。
失敗・鳴家だろうか?
★目星
成功・キッチンには扉が二つある。どちらも半開きになっていてひとつは廊下、ひとつは仏間につながっているようだ
失敗・扉はひとつのようだ。(廊下のみ)

【廊下】
雨戸は全て閉まっている。長年雨晒しだからか、木が腐ったようなにおいがする。奥の方は真っ暗でよく見えない。廊下横は居間のようだ。だが、襖は全て閉まっている。

★聞き耳
成功・ぎし、ぎしと軋む音がする。何かが揺れているような、ブランコのような音だ。いや…縄が軋む音のようだ。
失敗・風の音だろうか?
★目星
成功・廊下奥に何か黒い影がいる。だがそれはゆらゆらと揺れている。カーテンがどこかからのすきま風に揺れているのか?
失敗・暗闇に目が慣れない…闇ばかりだ。肌に腐臭のするこもった空気がこすれるような不快感を感じる。

廊下の奥からする音が近づいてくる。同時にただよう腐臭。身動きをすればその、音を発するものに気づかれてしまうのではないか…あなたはそう思い身動きも取れない。瞬きさえ出来ず息すらままならない。
「おろしてぇ… おろしてぇぇぇェ…」
ギシギシと軋む音に混じり、そんな掠れた声が聞こえた。
闇の中を「それ」をあなたは見るだろう。
女だ。
体は宙ぶらりんで、天井から縄一本で吊るされている。その縄は女の首を引き伸ばしているのか、頭が妙な角度に曲がっている。だがその頭部は黒髪に覆われよく見えない。ただ髪の隙間から絞り出すような悲鳴だけが漏れる。手足は枝のように乾いていて、ビクビクと痙攣していた。その度に裾の汚れたスカートが耳障りな布ズレの音を立てていた。(SAN3/1d6)

あなたは逃げるしかすべがない。
(居間・キッチン)

キッチンはセーフティ。
※戻る度に冷気を感じる(SAN1/1d3)

【居間】
暗い。雨漏りで黒ずんだ畳がそれを助長していた。カーテンだろうか、汚れた布が乱雑に置かれている。歩くと床がたわんだ。腐っているのだろうか、歩く度にミシミシと嫌な音を立てる。
何かの息づかいを感じる。
部屋の隅、闇の中だ。
ズル…ズル…と何かが擦れる音がする。
「ひゅー…ひゅー…」
切れ切れの息遣い。
思わず、そちらを凝視するだろう。

丸くうずくまった体。
何かが背中から数本生えている。
それが立ち上がらないのには訳があった。手首と足首を一緒くたに縛られているせいで立ち上がれないのだ。だから膝をするように移動してくる。巨大なダンゴムシのようにも思えた。
背中から生えていると思ったものが、近づいて来たことで明らかになる。
突き立てられた包丁だ。その体から生えているのではない、刺さったままなのだ(SAN3/1d6)

やはりあなたは逃げるしかない。
(キッチン・仏間)

キッチンはセーフティ。
戻る度に冷気を感じる(SAN1/1d3)
※SAN値6以上減少でねこまたが見える。

【仏間】
がらんとした部屋。仏壇が置かれていたのであろう壁のへこみには、枯れてクズ束になった花束があった。今にも崩れてしまいそうだ。
この部屋は、嫌に寒い……(SAN1/1d3)※幽霊は出現しません。ねこまた顕現のためのSAN値調整部屋です。

ねこまた顕現
それは真っ黒の大きな目をしていた。真っ直ぐ見上げてくる深淵のような瞳に吸い込まれそうだ…だが、不思議と嫌な気持ちはしない。不気味だがその姿形は可愛くもあった。
頭には耳だろうか、突起がふたつ。一見猫のようにも見える。ずんぐりとした二足歩行の小さな体。尻からは尻尾とおぼしきふたつの膨らみが生えていた。
体には何かを纏っているのか、頭につけたほっかむり同様の模様があった。
その模様はわずかに…動いているようにも見えた。水たまりに浮かぶ油の膜がゆらぐように……

その存在はあなたを見て、嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねる。それが動く度に冷気を感じた。だがその冷気は、澱んだ空気の中にあってもなお、とても澄んでいた。
★アイデア
成功・今まで感じていた冷気はこいつのせいだとわかる。
失敗・なんの生き物だろう…?

ねこまたはあなたをひとしきり心配そうに見ていた後、ジェスチャーであなたに指し示す。おそらくは玄関の方角だ。あなたの前に立ち、あの不気味な存在がいないかどうかを確かめてくれる。大丈夫ならば、あなたを先導してくれるだろう。あなたはその小さな存在についてゆく。
立ち止まったり、迂回したりしながら、あなたたちは玄関を目指す。

★ねこまたジェスチャー・アイデアロール発生×2
ねこまたは扉の前で次の部屋の様子を伺う。そのたびにジェスチャーをしてくれるのでアイデアをダイス(※回数は任意)
成功・迷わず玄関まで向かえる。
失敗・背後から澱んだ気配を感じる(SAN0/1d2)

外見はそんなに広い家ではなかったはずだ。なのに部屋は入り組み迷路のようになっていた。追ってくる澱んだ空気を背中に感じながらも、あなたは先を行くねこまたの小さな姿にすがるしかなかった。ねこまたも、時折あなたを振り返りながら、懸命に道を示した。

ようやくあなたたちは玄関に到着する。ねこまたははやくはやくと鍵のある箇所を小さな手でたたく。
内鍵だ。だが錆び付いて上手く回らない。ねこまたは応援している。
だが扉をガタガタ言わせた音でか、背後にあった階段の上から何かの気配が近づく。ねこまたがハッとして冷気が強くなる。手がかじかむほどの冷気だ。
階段上から、何かが勢いよく落ちて来た。それが玄関に転がる。
一瞬、古い薪か何かかと思った。
だが違った。
それは胴から下の脚だ。古びたデニムをはいている。それがゆっくりともがくように動いていた。それは赤黒い紐のようなものと繋がっていて、階段の階上へと伸びていた。……紐だと思われたものが、人間の腸だとわかるのに時間はかからなかった。
では、それと繋がった階上にあるのは何か。濡れた音が階段を一段、一段降りてくる(SAN1/1d3)
ねこまたは冷気を強くして、なけなしの防御をしてくれている。
あなたは急いで鍵を開けなくてはならない。

★dex5を2回成功で鍵が開く。
失敗したら幸運ダイス→またdex5
(13回までくりかえすこと可能)

扉が開いた。
瞬間、あなたは眩い光に目が眩む。一瞬、意識が遠のいた。だが、誰かが肩をゆさぶる感触と声にハッとする。
「ちょっとあなた、大丈夫ですか?」
あなたの目の前にいたのはサラリーマン風の中年男性だ。
彼は言うだろう。
「この空き家を管理している不動産のものです。ここで何やら騒いでいる人がいると近隣の人から連絡を受けてきたのですが」
「いや、ここではよくあるのですよ、こんなことが」
「この物件は曰く付きでね、ある事件のせいですが…取り壊すことも目処がたちませんで…私らも困ってる次第です」
「はやくお帰りなさい、あまり長居するのはよくない」
「また悪い噂が立っちゃうな…こまったなぁ…」
不動産屋はあなたを起こして敷地外まで見送ってくれた。
「どうぞ、お気をつけて」
そう言って。
ふと見上げた赤い屋根に、あなたはねこまたを見つける。あなたが無事であったことを喜んでくれているようで、ぴょんぴょんと跳ねていた。だがすぐに悲しそうにすると、大粒の涙をポロポロとこぼした。そして、あなたに「さよなら、さよなら」と手を振っている。
かれはそこから立ち去れないのか…そう、あなたは気づくだろう。

【分岐】
・「ありがとう」と言って黙って立ち去る。
・「一緒にいこう」と誘う。

誘った場合
ぴょんと尖った耳を立てて、嬉しそうにその小さな体はあなた目がけて飛んできた。体にぴとりとついた感触も衝撃もなかったが、ひやりと冷気が首筋に走る。ねこまたはあなたの腕にしがみついてすりすりと喜びを表していた。半透明の体…人通りが増えて来ても、誰もそれを気に留めない。やはり、怪異の存在ではあるんだなと、あなたにはわかる。無害、だよな…?あなたは少し不安になるが、かれが嬉しそうにしているのを見て、これでよかったんだよな?と思うだろう。

おいていく場合
あなたはひとつ礼を言い、もう振り返らなかった。あの恐怖からいちはやく逃れたかった。きっとあの小さな存在は、屋根の上で手を振ってくれているだろうが……それすら振り払うように、すべてが夢だったと思い込みたいがために、足を早めるのだった。

後日談

あなたは家につき、気になってあの家について調べるだろう。するとネットであの「1丁目17番地9号」の記事を見つけた。
その記事にはあの家で、凄惨な一家心中事件が起こったことが書かれていた。妻と2人の子供が父親によって殺されたのだ。父親の不動産業が失敗したことにより…と書かれる中、その父親の写真を見て、あなたは驚くだろう。

自分を みおくった あのサラリーマンじゃないか と。

一体、どこからが怪異で、現実だったのか。
あなたは二度と、あそこには近寄るまいと心に誓うことだろう。
(※ねこまたを連れ帰った場合、しばらくすると怪異の家は勝手に倒壊する)

END

AF「ねこまた」
連れ帰った場合、ねこまたはあなたに憑りついていますが、基本悪さはしないいい子です(冷気は感じます)。あなたの日常を大半居眠りしながら見守ってくれます。あなたのSAN値が基本SAN値から-6以上減少したままであれば姿が見え続ける。回復をすると、見えなくなるが、冷気は感じ続ける。
また、何らかの理由でSAN値が下がって姿が見えるようになると、そのあどけなさで癒してくれる(1d6)一人でSAN値回復ができます。
火属性の攻撃を一度肩代わりしてくれる。だがねこまたは消滅してしまうので注意。
ねこまたが憑りついている間・オカルト1d10増加


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