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FF14の自機フィギュアを作ってみた。


はじめに。


私自身、立体造形は超がつく初心者。
人生初の自作ねんどろいどを半月前に作り、その完成度に味を占めて、SDではない頭身の高いフィギュア制作も試してみようと思った。

なので、作業工程自体手探りで制作している。マニュアルは全然知らず、好奇心と愛情と勢いだけで作っている。従来あるフィギュアのように、硬度や品質などが保たれているかはわからない。
今後のため、ここに自分自身のための覚書をしたためておく。

今回、主に使用した道具たち。


制作開始

まずは設計図。自機のSSをなめくり回すように観察したのち、完成時の大きさで描き出す。今回は筋肉の形成勉強も兼ねていたので、愛するパガルザンレンジ装備を採用。スカート部分のはためきがとてもイイ。垂れ下がるぶっとい編み込みもイイ。だが、胴のアクセサリ…お前はダメだ。
顎・肩・腰・鼠径部・膝で長さと湾曲が合うようにする。
すでに心が折れそうになるが大胸筋を愛でることで何とか不安を落ち着ける。

設計図。針金で軸を作るため側面の湾曲も描いている。

軸を作る。今回は全体が重くなる想定なので、アルミではなくスチールのワイヤにする。硬い。簡単に切れない。握力がない。唐突に老いを感じる。
設計図とは別に立像のポーズ絵を急きょ描き、イメージを増幅させる。
貧相だが棒人間ができる。胴はアルミホイルで盛っておき、マスキングテープで固定。つるつるのガムテよりこっちの方が石膏粘土が盛りやすいはず。
石膏粘土は硬化するとポーズの変更が難しい。ここで軸はしっかり湾曲させておく。
足を長く見せるためには、絵でもそうだが、太ももよりも脛部分を長くするのがコツだ。
足場の木はアクアリウム用の流木。280円。安い。しかし、水そばに落っこちている実質0円の流木が280円……唐突に高く感じる。
土台はトールペイント用の木のパネルを使用。黒く着色したが、後に後悔する。

設計図の赤いラインに沿ってカットしたスチールワイヤ。腰、ひじやひざを忠実に曲げる。

石膏粘土を盛り付けていく。人体の筋肉ごとに盛ってゆく。やはり石膏粘土は重い。足がぐらつく。流木とボンドでくっついているとはいえ、このままぐらつき続けられたら作業が面倒になる。下半身が硬化するまで、腕の部分は石膏を盛らないようにした。
なのに、私は大胸筋と腹筋、あまつさえ背筋まで盛った……それはしょうがないこととする。

人体の筋肉はとても洗練されているなと実感する。

下半身がある程度硬化したことで、上半身を盛る。それでも力を入れると足首部分に亀裂が入る。この二本足で完成後も上半身が支えられるか不安になる。何か打開策を考えなければならない。
完全硬化するまで、上半身を盛るな…?
その通りだ。だが手は止まらなかった。

腹膜部分の筋肉は隠れるのに、異常に執着して作っている。

研磨に入る。楽しい。筋肉のひだは着色と同時にぼやけるだろうという予想なので、深めに作る。片足をあげていることで腹筋や鼠径部筋肉にゆがみを出す。ちょっとしたことで本物らしくなるなと実感。柔らかな人体は常に線対称ではないのだ。精密に左右均等にすることは気にしなくていいと確信を持つ。
土台部分を何とか汚すまいとする悪あがきサランラップが物悲しい。これから土台はどんどん汚れていくこととなる。何故はじめに黒く塗った、自分。
この時、胴部分装飾代わりのピアスが届く。候補ははじめ三つだった。

「欠損」という魅力を感じる。残された「美」が際立つせいだろう。

一番の悩みどころだった、編み上げニーハイブーツ。石膏粘土では編み上げの細かい造形は難しいし脆い。何をするときも編み上げブーツのことを考えていた。ブーツのひもを通す部分が何かのアクセサリパーツで代用できないかと考えていたが、どれも当てはまらない。
ふと、昔持っていた軍用ブーツを思い出す。アレはひも通しではなくフックだった。なら、フックでもいいのでは…ひもはヘンプ紐を使うとして…金具は……小型で引っかかりがあるもの……
そうだ、「虫ピン」だ…!
夕方のウォーキング中、マスクの中でつぶやいた。
さっそく虫ピンを取り寄せ、足に打ち込んでいく。引っかかりが残るように慎重に…そしてボンドが硬化した後、ひもを編み上げていく。いいぞ…イメージ通りだ! 
夜中2時、無言で編み上げ部分を指で何度もなどる。性癖とはこうして生まれるのだと知る。

脚部分のしわも性癖をくすぐられる。

スカートでほぼ隠れてしまう下半身はこの段階で完成させ、表面を耐水性にするためジェッソを塗ってしまう。ニーハイブーツのひもも硬化、定着するだろうし。
そして足の脆弱さをカバーする案を実行。スカート部分は布特有の湾曲もあるので、要所にワイヤを入れることにした。硬い。帰って来い握力。
これで、下半身の重量を支えられるだろう。
パガルザン装備は腰回りや下半身部分がどっしりとしている。そのため、この段階では腰部分を細く作ってある。
しかし…パガルザンのあのスカート布部分…すべてを石膏粘土で作ると重くなってしまう。それに石膏で作るときっと割れが生じる。どうすべきか、また考え始める。

ドク・オクトパスみたいだなと思う。

石膏トルソーを軽量化するために何か昔学んだような気がする。…わらを混ぜるんだったか…けれど藁はかさ高過ぎる。それに布の柔らかさは出せない。軽くて、扱いやすく、しわを生成しやすい……そうだ、布っぽさも出るしガーゼに石膏をしみこませて形成すればいいんじゃないか?
ん、待てよ。それって何かに似てないか。
そうだ、ギプスだ。ギプスは石膏のしみ込んだ包帯で固めていく。アレを応用できるじゃないか。いい案だ。
さっそくアマゾンで……
なんだ、普通に創作用の石膏テープなるものが売られている。どうやらジオラマなどで使用されるもののようだ。いい、まずは試してみよう。
基礎部分は石膏粘土にして、はためく部分は石膏テープを張り重ねていくことで布っぽさを出す。うむ。イイ。パガルザンのボロボロ具合も出る。
しかし、この時土台は石膏を含んだガーゼから滴る水のせいで取り返しのつかない汚さだった。

石膏テープ優秀過ぎるとフレに熱く繰り返し語っていた。うざすぎる。

石膏テープはものすごく乾燥が早い。硬化も早いので、作業はスピード勝負だった。巻き上がるスカートを形成してゆく。その代わり硬化してしまえば硬く軽く、さすがガーゼということもあって布っぽさも出る。飛び散る粉末は辟易したが、それに勝るポテンシャルだった。
大きな三つ編み装飾にはアルミワイヤを仕込む。それによって硬度と柔らかい動きを付けている。このあたりで石膏テープの硬化の強さで土台にぐらつきがなくなる。はじめ貼っていたワイヤをカット。それでもぐらつきは皆無だった。強固な下半身を手に入れる。

三つ編みはじめは楽しかったが、徐々に面倒になる。
これでもかと石膏テープでひだを作った。後のことは考えなかった。

下半身部分が出来上がったことで、落ち着いて腕を形成していく。やはり下半身部分がどっしりとしたので、腰を細くしておいてよかった。腕の筋肉はそれなりに盛れるぞ。嬉しい。ただ手首から上は手装備がつくので細めにしておく。
背筋も作りこんでゆく。背筋は人によって形が様々で、これという資料が見つからなかった。最終的にリアル筋肉模型を参考にする。見すぎてちょっと気持ち悪くなる。
おかげで納得のいく背筋はできた。

羅漢らしい肉体になる。欠損部分が物悲しい。
背筋と腕の筋肉がとても綿密につながっていることが分かった。

腕の装備を石膏テープで作り、ヘンプ紐で細かい装飾を付ける。ひもはこの後ジェッソで硬化するのでむき出しのまま。石膏粘土との親和性も高い。
手もついてあとは頭部だけ。
緊張は最高潮だ。
頭がうまくできなかったら…ここまでの工程はすべて無駄なる。
何度も自キャラを眺める。
…どうしてハイランダーは眉毛がないのか……
いつもそこに疑問が残る。

ここまではバランスよくできた。…頭が小さくても、大きくてもダメだ。

成し遂げた。何とか頭部がうまくいった。
とっとこのチャームポイントであるトサカをどこまで再現できるか不安だった。盛りすぎて頭が大きくなってもダメだし、小さすぎてもダメだ。側頭部のはねも大事にしたい。落ち着け…それでも一番優先すべきはバランス…何もかも盛りすぎてはいけない。
あと…とてもよくない思いだが……
隻眼でよかったなと、思った。
ごめんな、とっとこ。

雄々しくもシャープな鼻筋とほうれい線、薄い唇に心を砕く。
イケメンは才づち頭だと聞く。つまり前後に長いのだ。

研磨を終え、表面を耐水性にするためジェッソを施す。石膏粘土は水分を塗布すると吸水してしまうので、着色前の下準備だ。表面も滑らかになるのでアクリルの定着もよくなるだろう。
くっ…スカートのなか塗りにくい……筆が届かない…
ひとしきりおっさんのスカートの中を覗き筆でつつきまくる。
人には見せられない姿だ。
白い素体はここでお別れ。…さらばだ…。

石膏特有の大理石のような滑らかさは、それはそれでよかった。


着色へ。


パガルザンは汚れた風合いがあるので、汚れを筆でたたくようにおいていく。本来薄い色から着色していくのが自分の癖なのだが、今回ばかりは濃い色から塗っていく。大丈夫だ、アクリルは不透明絵の具。問題ない…。
上へ上へと明るい色を置き、立体感を出していく。細かい部分にも絵の具が入るように叩くように塗っていく。そのため、筆は安いものがいいだろう。すぐに先が割れてくる、荒い使い方だ。
スパッタリング用の筆も使用しつつ、ユーズド感と布感を出していく。
黒は今回ランプブラックを使用。
ランプブラックはさらっとした塗り心地だが粘りが強く、乾くと艶が出る。それがブーツなどと親和性が高い。他の部位よりも少し革っぽさが出るのだ。
混色は、必ずベースとなる色を入れる。今回は「セピア」。赤だろうが皮膚色だろうが白だろうが黒だろうが、絶対混色をする。そうすることで色味がばらけず親和性が出る。

そして、第2回オッサンのスカートの中を覗いて筆でつつきまわす会が開催された。

すべての部位にグラデーションで奥行きを作っていく。
ブーツの虫ピンにはブロンズカラーを置く。立体感が増す。

肌を塗る。混色でありつつ一番失敗したくない部分なので絵の具は余ってもいいので大量に作っておく。ムラやミスが出た時、修正がかけられるほどの量だ。もう一度同色に混ぜるとなったら、さすがに無理なんで…
乾いたときにアクリルは発色するので、くすんだ深めの色で作る。案の定乾いたら、赤みを増した。ピュアレッドのせいだろう。
2.3度重ね塗りをしてムラをなくし、最後に傷と白いペイントを入れる。
そして。目の描写。
ここばかりは一発勝負。
女子の繊細な瞼にシャドウを入れるかのように、ていねいに筆先を整える。
震える筆先。
そそり立つ小指。
ここ一番緊張した。 
そして思う。
隻眼でよかった……と。

そして一つ嘘をつく。

眉毛を描いた。

カッコよくなった。

時には嘘もいいものだ……未明4時、コーヒーをすすりながら思った。


マットな風合いは叩き塗りをした結果。ブーツだけは艶を保持している。
装飾で背中のペイントは隠れるが、ちゃんと描く。


完成

つや消しのニスをスプレーし、ピアスを改造した胸飾りをつける。小さな丸カンとエンドのティアドロップ、チェーンで前後をっなぐ。
私の爪はネイルの為長い。この作業で一番指がつりそうだった。
一度ペンチでとっとこの頭を殴ってしまい、傷つけ塗り直すという事故もあった。
しかし……完成だ。
予想通りの、いや、予想以上の完成度ではないか? これは、本当に私が作ったのか?
いいや、頑張りのおかげだ。
綿密に計画を立てて、愛情を注いだ結果だ。
やればできる。
やらずに悩んでいるなら、やってみる方がいい。
もしかするとできるかもしれないじゃないか。


それに賭けるのも、いいもんだ……と。


土台も再着色してキレイに。
再度の高い色をトップに置いているので、深みがありつつ立体感が増す。
実際のパガルザンの胸飾りを作ることは初めから諦めて正解だった。


最後に。


フィギュアは自分の中で遠いものだった。
長いこと2次元が作業場である漫画家として仕事をしているので、遠くなるのはしょうがないのかもしれない。
今回、作ってみようかと思ったのは、フィギュアのメイキング動画を見てのことだった。繰り返し見ている中で、見よう見まねで技術を拝借できるのではないかと思ったのだ。
もちろん、制作に時間はかかったと思う。
けれど、乾燥時間にじっと作品を眺めて、直す部分や、付け足す部分、工夫する部分を考察しているのは、どうしてか普段やっている漫画を描く作業と似ていた。
創作とは、どこまでいっても一緒なのだなと改めて感じた。
計画性と、綿密性と、忍耐力。
この3つがあれば、ある程度の難関は突破できるのではないかと思った。

作ってよかった。
いいものができたから…ではなく、過程の思考として思う。
しっかりと考え、導き出した道筋であれば、必ず先には光が見えるものだと感じられたからだ。

しかし、困ったことが一つ。
立体がそれなりに作れるという、実績解除をしてしまった。

これからも忙しくなるばかりだ。

わくわくが、止まらない。

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