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粗みじんの旬:右体28

(月)

 遊びに来てくれた友だちと『裁かるゝジャンヌ』をプロジェクターで写して観た。法廷でおじさんたちがニヤニヤキョロキョロする静かだけどうるさいシーンと、後半の火刑の火が上っていく、戦いが進んでいく、動きがあって息遣いがきこえてくるシーンの対比にびっくり息をのんだ。恩寵?来てないとは言っていないのだけれど。

 中華屋さんで大皿の炒飯と焼きそばを食べて、しずかに笑ってたな。

(火)

 いろんな合間に音楽を聴かないとやっていけへんのやけど。合間が膨らんで時間がどんどん痩せていくんやけど。

 授業行ったあと、二度目の整体へ。おしりに電流がびりびり。前はこの時間にうつらうつらできたけど今日はできず。前よりさらっとした感じで帰される。

 からすまぁ⇄髙田皓輔の企画ネットプリントを出して読みながら帰る。

硬いボタンをあなたがしきりに触ってて目の裏に即席の水族館を
絵のなかに跳ね橋の影のびてゆきくすぐったいほど先を進んだ
/からすまぁ「蝶の誇り」

きょうりゅうのなめてる飴は特大でやっぱり特注の飴だった
鼻歌のあなたの歌はどれもみな知らない歌でそれでよかった
/髙田皓輔「絵本のある本棚」

ふたりともコメントで連作の話をしていて、その言葉の位相がぜんぜん食い違っていなくて、しかしお互いの作ったものに首をかしげていて、へんな干渉の仕方がいい。そういう干渉の仕方を可能にしているこの企画が面白い。本棚と「きょうりゅう」世界を行き来する感じ、すき。だらっとした「やっぱり」「それでよかった」がすき。連作を調整するの器用だなー。まだそういうことまったくできない。

(水)

 久しぶりに歌会をした。大人数。できるだけ評を立体的にすることを心掛けてしゃべる。新入生がたくさんしゃべってくれてうれしかった。それにしてもこの時期に新歓とかいろいろ行くのは、偉いというか、元気がありすぎるな、と思う。人が溢れていてご飯屋さんに入れなかったし。こういうのが大学の活気で、それがやっぱり三年くらい一時的に消えかかっていたのだと思う。コロナの社会的恐慌状態って、僕らが感じる以上に大きかったんじゃないかな。そういえばけっこう傷ついたよ。

 二個下ってことは僕の弟と同じ年で、2020年と2021年が中学三年と高校一年のときに来ているから、感じ方としてずいぶん違うのだろうと思う。こういうことは世代の前も後ろもたぶん分かってくれないだろうけど、二つや三つ違いの上下の人には、たぶんわかる。

 あと、気軽に喋ってくれるのはすごくありがたい。僕の代も一個下の代も、警戒心が強いひとが多すぎる、僕を筆頭として、ではあるけれど。恥を知っているということの大事は分かるけど、それは、恥じらいが強いこととはぜんぜん一致しない。そのへん、こちら側の人間は混同しがちだと思う。

(木)

 おりゃおりゃおりゃって、1限から6限まで授業に出た。休み時間に建物のあいだを歩いて、知っている人に会ってたくさん手を振る一日、すごくたのしい。バイトを飛んだときに送別会を開いてくれたくれた子に、遠くてはっきりは分からなかったけど、シルエットで認識して手を振れたのがよかったね。

 忙しいほうが向いている、と思う。悩むのが得意で、中毒になっている節があるから、放っておくと退屈になりたがり、なると悩んで、思考が同じところをループして、身体が固くなる。しばらくは動いて動いて、悩殺されるのではなく悩殺するほうの愉悦を探る。

 昼休みにネットプリント『風来vol.1』を出して読む。すごい。この二人で組むのすごくいい。し、モチーフこれ合わせて作っている?

岩陰にむかう緋鯉のようでいていずれ見れなくなるアーカイブ
デパートのボールプールにとりどりの令和の初期の子どもがつどう
年金とかはどうすればよく梅の花おちてゆくのを片目で追った
/豆川はつみ「fork」

端正な粗みじん切りだ、と思う。
雪原も朱の実も、ここに実際にあるわけではない、しかし手のひらが見えている。手のひらまでの空気のよどみ、澄みぐあいも、見えている。感触としてはそれだけで十分で、緋鯉はそこに泳いでいる。両目で見ても、片目で見ても。

その頃のしばらく降り続けた雪が写真の中でただぼやけている
水玉のバックパックで駆け下りる山道で死ぬほど声がでて
薄い雪がビニール傘を覆いつつそれでも外の方が暗かった
/伊島研二「エコー」

こうして並べられると下の句のリズムの取り方や文体がぜんぜん違って面白い。68とか86とかのスピードの緩急か、字余りで伸びていってだらっとした動詞で落ちるような等速か。と言ったところ?

(金)

 昼からのほうが授業出るのが難しい。朝ごはんも昼ごはんも食べるの忘れた。あったかい麦茶を水筒に入れて出てこられたのはよかった。冷やす時間なかっただけだけど、あったかいほうがずっとおいしくないか?って思えた。史料学の授業で記念と記録の違いとか私文書と公文書の違いとか。日記って記念的すぎる?過去にベクトルが向きすぎている? 

 腹筋が怠けている。背筋を伸ばすための腹筋をかんぜんに手放してるやん。ってなる。本気で姿勢頑張るにはどうしたらいい?ぼく、がんばりたいです!


sosohungrywithb@gmail.com

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