091 初めて子どもの寝顔を可愛いと思えました
久しぶりの投稿なので、ちょっと刺激的なタイトルにして、この間の無量を許してもらおうと思ったわけではありません。彼女は本当にそう言ったんです。
その日、少し年下かなと思われるボーイフレンドと、彼女は初めて店に上がって来てくれました。
余計な話ですが、女性は30代後半、40代になってから女性ホルモンの分泌が衰え、男性ホルモンが主になるので、40-50代が最も元気で若々しいという話を、細胞科学の本で読みました。
そういえばそうだよなぁ、、、って思いませんか?
男は60前後から急速に衰えて、平均寿命だって10才ほど違うし。。。
つまり、10前後年上の女性と結婚すべし、という法律を作ったほうが、男女とも幸せかも。えっ?大きなお世話だって。。。
というわけで(どういうわけ?)、彼女の話に戻ります。
彼女は二十歳すぎてすぐ、初めて恋した男性と結婚して、すぐ男の子が産まれたそうです。
ところが、結婚した途端、その結婚は気の迷いだったことがわかって、子どもが産まれた直後に離婚。以後、女手一つで子どもを育ててきたそうです。
想像を超える壮絶な人生があったのだと思います。だって、子どもが成人するまで、一度も可愛いと思う暇がなかったって言うのだから。
その子は高校を卒業したら進学はせず、働くと言ったそうです。これ以上、母親に苦労をかけたくないと思ったのでしょうね、きっと。
以来、その子は、彼女にとっては命を削ってでも守るべき扶養家族ではなくなりました。40過ぎて、初めて自分の人生を生きる時間ができたのです。
これまで控えていたお酒を楽しむようになり、ボーイフレンドもできました。ボクの店で勧められるまま(いえ、求められるまま、出したんですよ)、彼女があけたグラスは11杯!
ズラーっとカウンターに並んだグラスは、これだけ飲んでいるという歓喜の表現なのか、そろそろやめ時を求めての戒めなのかは聞き忘れましたが、彼女は相当酔っていました。
ボクがボーイフレンドに大丈夫なのか、と尋ねると、彼は「もう、こうなったら飲みたいだけ飲ませてあげてください」だって。ちょっと、できたボーイフレンドでしょう?
やっぱ、男のほうが年下がいいみたい。そんな話じゃないってば〜、、、
で、彼女が言ったのです。
「マスター、私、この歳になって初めて子どもの寝顔を可愛いと思っています」
ええ〜、でしょう?
だって、20歳になった男の子の寝顔を覗き見してるんかい?
いや、そうじゃなくって、それまで、たとえば3歳の時、可愛いと思わなかったのかいなぁ。。。
きっと、そんな余裕もないほど必死だったんでしょうねぇ。。。
ボクは泣きそうになってしまいました。友人を亡くして以来、突然泣きそうになることがあり、うろたえますね。でも、生きててよかった、この店をやってよかった、と思えた瞬間でした。
彼女は20歳になった息子に、これからは自分のために生きるから、別々に暮らそうと言って、今、ボーイフレンドと住む家を探しているそうです。
うー、コロナ騒動が小休止しても一向に戻らないお客さんを思うと、もうボクの役目は終わり。年中無休の店なんていらないじゃんか〜と、そろそろ店を閉めるか、、、と思うこともあるのですが、こんな奇跡に出会うと、なかなか店を閉じられませんね。
しかも、こうした奇跡がチョクチョク起きるのですから。これって、九条Tokyoだけで起きていること?
ンなあー、、、バーのマスターやママって、どうしているんでしょうね。こうした奇跡を、自分一人の胸にしまって生きているのでしょうか。
ボクの名刺の肩書きは、奇跡蒐集家にしようかしらん。
あれ?、この店をオープンする時、名刺は持たないことに決めたんだった。。。
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