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不思議の国の豊25/#父はすごいと思った

前回は

ここまで、そして

#父はすごいと思った

僕が中学校になった時、

山崎と言う部落にいる孝が僕の家に遊びに来た。

彼は、身長も高く、クラスの誰よりも腕力が強く。

ケンカをしても負けることは無かった。

しかし、多くの同級生ばかりか、

上級生までもが彼を避けていた。

孝とは、河口小学校が大栃小学校に合併したころから

知っていた。

晴れた日は運動場で、雨の日は階段の踊り場で、

孝は良く相撲を取っていた。

僕は、走るのが遅いので、

みんなにスポーツ音痴と思われたいたが、

その相撲にも参加した。

ところが、まずだれにも負けない

孝に僕は偶に勝った、

と言うより、ほぼ五分で勝った。

孝に勝つのは上級生の何人かか、

同級生では僕のほかに

泰志しかいなかった。

泰志はクラスで一番背が低かった。

だが、すばしっこかった。

立ち合いから、一挙に

孝の足をはねた。

孝はおかしい様に簡単につんのめってこけた。

勿論、小兵だから、

孝につかまれればひとたまりもなかった。

そんな、同級生では、孝に勝てる珍しい僕だったのである。

自慢話をしたかったのではない。

僕は不得意なスポーツでも、

参加することで、付き合いの輪を広げようとしていた

と、言いたいだけである。

その結果として、

僕は、ご存じのように、誰とでも付き合ったから、

当然彼とも付き合った。

彼は兄がいることもあって、

ギターまで弾けた。

クラスの他の人でそれを知る人はそうはいなかっただろう。

彼はバイクが好きだった。

中古のバイクを自分で直せて、

そして乗り回せた。

みんなが言う乱暴者では誰もできない芸当だ。

彼が乱暴だとみんなに思われているのは

「単に、誰とけんかしても勝てるからだけでしかない。」

と僕は見ていた。

その彼が、僕のうちに来た。

僕はうれしかった。

母が用意してくれた、僕と弟のいつものおやつを

僕は彼に食べさせた。

「なんやこれ?!!!

こんなうまいもん食たことがない

いっつもの店で買うものには

こんなもん

ないやないか!

お前、いっつも、こんなもん食いゆうんか?」

僕はびっくりした。

みんなの買い食いが羨ましかったのに

その買い食いが当たり前の孝に

お墨付きを与えられたのである。

僕は

「そうながや!

うちは貧乏やけど、

他の家の子より、豊かなおやつやったんや。」

としみじみ思った。

それを教えてくれた、孝はすごい奴だと思った。
それにしても、あの忙しい母は

いつこれを作るんだろう?

僕には、解らないが、

それがうれしかった。

もしかしたら孝はそれが無かったのだろうか?

僕はそれを孝に聞く機会はそれ以降無かった。

以下次号




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