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不思議の国の豊4/#誕生前夜

前回はここまで


#誕生前夜

貞代は夢を見ていた。

夫と出会った頃のあのシーンを夢で再現していた。

恋の始まりだった。

そして「明日二人の子供が生まれる」

と思った瞬間、目が覚めた。

夫も横で目を覚ましていた。

そっと、はち切れそうになっているおなかに手をあてがう。

夫も手を伸ばしてきた。

二人で、今日明日にも生まれるであろう

わが子を腹の上から愛でた。

すると、

腹の中から、挨拶が返ってきた。

「僕生まれるからね」

貞代にはそう聞こえた。

貞代にはそう感じた。

「ああ、私らぁの子供」

貞代がそうつぶやくと、

「そうやねゃ」

と夫も応じた。

そのとたんに、陣痛が始まった。

夫は飛び起き、産婆を呼びに走った。

1キロほど隣の集落の

これももう明日にでも子供を産みそうな腹のパンパンに膨れた産婆を

夫は気遣いながらも急がせた。

この産婆は二日前にも近所の赤子を取り上げた強者だ。

後日談だが、この産婆はこの二日後に自分の子供を無事産み落とした。

二人が駆け込んだときは、

お産が始まっていた。

夫の母の信江が湯を沸かし、

お産の準備を整え、奥の間で貞代に声をかけていた。

貞代は、夫が出て行ってから、

また眠気がさし、信江に声をかけられるまで

眠っていた。

夢を見た。

夢かどうかわからないが

夢のような話を見た。

【わが子が成長し世界を駆け回り、

戦争と貧困をなくそうと

各国の首脳たちに掛け合っていた。】

貞代はおかしくって

「この子まだ生まれちょらんのに、

そんなに走り回って・・・」

そう思った瞬間、

信江が気遣って声をかけているのが聞こえた。

貞代は、

「この子が子供でのうなる頃まで、

この話はだれにも言わんちょこう」

と誓った。

そして次は





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