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#115 恋する支援者【思考整理】

恋活を始めてからこの1年、LINEやメッセージのやりとりをして、直接顔を合わせた人は11人くらいだと思うのだが、その中で発達障害と思われる人は半数くらいいた。そうは言っても2回以上会った人は2人だけなので、他の人ももう少し回数を重ねていれば、いろいろと見えてくる部分があったかもしれない。

自覚があるかないか

誰から見ても、“この人は障害者だな”、“周りのサポートがないと生活していくのは大変だ“というくらい程度が重い人は、理解が得られやすいという意味ではむしろ楽かもしれない。

また、(あくまで私の見立てだが)マッチングアプリで知り合った国家公務員のように、発達障害、軽度知的障害などベースに持っていそうだが、本人に自覚がない人も大勢いる。自覚がないということは、本人的にはそういう特性があってもうまく乗り切り、ハンディキャップを感じていないということ。周りから見たら、この人とは関わりたくないと煙たがられていたとしても、本人に困り事や問題を抱えていないのなら、それで何よりだ(その人の周りから、人が離れていくことはあるとしても)。

グレーゾーンとして生きる

問題はグレーゾーンの人たち。
最初は自分の性格かと思っていたが、ネットなどの情報を調べていくうちに、自分は何かの精神疾患じゃないか?先天的な障害を持っているのではないか?と疑いはじめる。
そういう自覚のある人は、この先医療や支援にもつながりやすい反面、逆に言うと、本人の抱えている問題やハンディキャップは重い。

どういう運命のいたずらか、またしてもSNSで出会った人が発達障害らしいのだが、彼は幸か不幸か自覚があるようだ。
今、恋心を抱いている男性「あーちゃん」がADHD、もしくはパーソナリティー障害の可能性を疑っている。
そんな話を聞いて、それまで眠っていた障害者支援をしていた頃の私の好奇心がムクムクと目覚めてきた。
時々「食指が動く」と表現してきたが、今は家業を継いで障害者支援の業界からもすっかり離れているのだが、長いことたくさんの発達障害者、精神疾患者と関わり、その当時の血が(ちょっとだけ)騒ぐ。

“もしつらいのなら、なんとかあげたい”
“1人で抱えていて苦しいのなら、寄り添って聞いてあげたい”
もちろん彼が困っていて、それを望んでいるのだとしたら、だけど。

診断名は鵜呑みにしない

障害者の支援員として働いていた時は、とにかく相談に来る人来る人、ほとんどがベースに発達障害がある人が圧倒的に多かった。今でこそ専門の就労移行支援事業所などたくさんできているが、15年以上前の当時は、まだ社会資源も乏しく、支援者側の発達障害についての認識も非常に浅かった。
精神科の専門医も、発達障害とわかっていても診断名をつけないドクター、発達障害自体がわからないドクターなど人によって様々だが、ほとんどのドクターは、診察室の問診で患者の困り事だけを聞いて、それに対しての薬を処方するだけ。
本人が発達障害を疑って、専門に扱っているクリニックや病院を訪れればそういった検査があるのでまた別だが、本人すら気づいていない場合、ベースにそれがあると見抜くのは難しい。

結局ドクターのつける診断名は、ベースの発達障害や軽度知的障害などの合併症である、例えば、鬱症状とか、適応障害とか、社会不安症とか、パニック障害とか、双極性障害とか、統合失調症とか。服薬によって多少症状が緩和される「今本人が困っている症状」への診断と、それを緩和させるための治療のみ。

しかし経験を積んだ支援者は、ドクターの診断名を鵜呑みにはしない。
ある時は相談室で膝を突き合わせてみっちり面談し、またある時はカフェなどくつろげる場所でお茶をしながら話を聞き、ある時は買い物に同行したり、一緒に住む部屋を探したり、もちろんハローワークなどに行って仕事を探したり、訓練を望めばそういった施設を一緒に見学に行ったり、面接会があれば同席したり。生活に困っていれば、役所の生活保護申請をしたり、一人暮らしの人は部屋を訪問して生活の様子を見たり(発達系の人は圧倒的にゴミ屋敷が多い)、親子の問題がある人は家族面談をしたり、もちろん精神科の通院同行も必要に応じて行っていた。

対象者は年齢的には大人なので、本人1人でやればできることなのだが、支援者はありとあらゆる場面で対象者と行動を共にし、アセスメントを繰り返し、本人の特性を見立てていく必要がある。
そして、最終的に見極めるべきは何か?
合併症や二次障害のベースにある、先天的な障害の有無だ。
ある人は、発達障害(ASDやADHDなど)、またわかりづらいのは、IQが70前後の軽度知的障害。一見健常者と思われがちなので、いずれも特性をよく知っていないと見極めが難しいが、いろいろな場面で行動を共にしてエピソードを積み上げていく作業をする。
グレーゾーンだと相当な生きづらさを抱えているし、支援する側としても、困難ケースが多発する人たちだ。

ADHD 元カレのケース

2年前まで付き合っていた元カレのアキヒコ(仮名)は、サークルで知り合った当初から酒を浴びるように飲んでいた。1年半前に振られた彼女のことが忘れられなくて、若干アルコール依存症気味で、このまま放って置くと入院するかも?ぐらいのレベルだった。
ひと目見て好感を持ったこともあるが、知るにつれ「この人をほっとけない」という気持ちが強くなり、なんだかわからないうちに彼に惹かれていった。当時は、私も障害者支援とは全く別の業種で働いていたためそういった知識はなく、アキヒコに関しては、テンションが高くて、時々怒りっぽくて、それでも遊びに行くと楽しくて、飽きない人だなとは思っていた。

付き合い始めた頃は、彼も30代前半で若かったのでとにかく血の気も多く、車に同乗すれば、カーレースを始めたり、前の車を煽ってみたり、高速では結構スピードを出すし危なっかしいことがたくさんあり、いつもヒヤヒヤさせられていた(しかし彼曰く、人と喧嘩した事はないらしい。高身長でガタイもいいので相手から引いていくとか?)

彼のエピソードをあげればきりがないので省略するが、彼の病気が判明するのに1つのきっかけがあった。
付き合って数年後、職場の環境の変化で鬱症状を発症した。その時は、私もすでに障害者関係の仕事をしており、一緒にクリニックに同席した。彼が困りごとや症状をドクターに話すと、ひと言「鬱ですね」で終わり、鬱症状に効く薬を処方された。
そりゃそうだよね。30分ちょっとの問診じゃ、わかるはずがない。
結局、処方された薬は全く効果が見られなかった。

それから数年後、職場でこれまでとは違う職種に異動になった影響で、2度目の鬱症状を発症した。その頃は、私も数多くの精神科医の講演会や研修などで経験や知識も積んできたので、光トポグラフィーという脳波の検査を彼に提案した。意外にも素直に受け入れた。
その結果くだされた診断は「双極性障害2型」だった。
あ〜!そっちだったか〜っ!!
彼の怒りっぽさやテンションの高さ、また、家族歴や幼少期の数々のエピソードを聞かされていたので、私も本人もADHDの特性だとばかり思っていたのだが、合併症の症状の方が強く出ていたようだ。
処方薬のバルプロ酸は、見事に彼の症状に効き目を表した。

本来なら双極性障害は、診断が下されるまでに数年かかるという。なぜなら、テンションが高く陽気な時は、それが性格だと本人も周りも思い込むため、鬱になって困った時にしか病院にもいかず、ドクターにもその症状しか話さないからだ。
腕の良いドクターなら、アルコールの依存や他の特性も聞き出し、問診の段階で双極性障害を見立てることもできたろう。

テンションが高くて陽気なだけなら良いが、彼はキレやすく、常に神経が研ぎ澄まされているので、周りに対してピリピリ、イライラしていることが頻繁にある(特に運転中や職場で)。目覚まし時計が鳴り出す前の、カチッという音で目が覚めるらしい。歩いていても、常に背後に誰かいないか(危険が迫っていないか)気になるそうだ。
こういった症状は、本人にとってはかなり辛かったようだ。

しかし、バルプロ酸を飲むとそういったイライラ感がスーッと抑えられるそうだ。完治はないので、一生服薬しなくてはならない。
かといって、もともとの特性や症状が完全に抑えられるというわけではないので、かなりの頻度で怒鳴られたり過去のことをネチネチと責められたり、こちらは地雷を踏まないように相手の顔色を見ながらビクビクすることも多かった(しかも、怒りの沸点に達しているときは、目が血走っていてめちゃ怖い💦)。
よくそんな人と19年も付き合ってたよね、と言われるかもしれないが、もちろん好きなところもいいところもたくさんあったし、私を大事にしてくれていると感じていたし、私の根底に、彼に何を言われても何をされても「この人が好き!」という揺るぎない気持ちがあったから、長く続いてこれたのだと思う。

そういえば先日、あーちゃんのことを相談したスタイリストのTさんにも言われたなぁ。
「ひなたぼっこさんてなんでいつもそういう人を好きになるんですか〜?😆普通の人を好きになりましょうよ〜」みたいなこと。
そんなの自分でもわかんないんだよね〜。それだけ隠れ発達障害の人が世の中に多いのかもしれないし…。磁石に引き寄せられるように、同類に吸いついていっちゃうのかも笑。ん?もしかしたら、私自身を受け入れてもらいやすいのかもしれないなぁ。私も、そういう人の前だから自分自身をさらけ出せるのかもしれない。

忘れられないのが、アキヒコの妹が彼に言った言葉。
「お兄ちゃん、人だけは殺さないでね」
よく彼からこのエピソードを聞かされていたが、この言葉でキレ具合が想像できると思う。(ちなみに私に対して暴力的な行為は、19年の間に1度もない。人も殺してないと思う笑。当たり前だけど😅)

ADHDとパーソナリティー障害

そして今回もうひとつ、あーちゃんの口から出た「人格障害かも?」が引っかかっている。
正直、私もパーソナリティ障害の支援の経験は乏しく、覚えている限りでは30代の女性が1人。境界性パーソナリティ障害だった。
それははっきり診断名も出ていたし、本当にその特性通りの人だったのでわかりやすい。
そして言えることは、この障害を持っている人とプライベートでは関わらないほうが無難だということ。
人間関係をかき回し、嘘をつき、親からの見捨てられ感や希死念慮があるなど相当大変な特性を持っているので、この障害の人と関わってしまうと、その混乱に巻き込まれヘトヘトに疲弊する。

ネットで検索してみて、もう一度特性を調べてみると、こんなサイトにヒットした。

【境界性パーソナリティ障害の症状】

①見捨てられることへの不安が根底にある
幼少期に「親から見捨てられるのではないか」という恐れを感じ、成長しても、心の根底には「見捨てられることへの不安」が常にある状態です。幼少期に見捨てられたという体験がほとんどないことも特徴の1つです。

自分の中にいろいろな自分がいる感じがする
「大人の自分」と「幼い自分」、「良い自分」と「悪い自分」の両極端な自分像が存在し続けます。健康な人は、これらは成長過程で一体化すると言われています。

問題行動が多発して、周囲が巻き込まれる
激しい感情に駆られ、衝動的に様々な問題行動を起こしてしまします。言葉にできない感情を、激しい破壊的な行動で表現するのが特徴です。

人をひきつけようとして人間関係を混乱させる
相談を持ちかけたり、周囲の人間関係をこじらせるような話をしたりすることなど、自分に同情してくれる人を常に側に引きつけておこうとします。

HPから1部抜粋

また、ADHDがベースにあると、双極性障害と同じく、パーソナリティ障害を併発する可能性もすごくあがってくるらしい。
それは…知らんかったわ。まだまだ私の知識不足。
ということは、あーちゃんは、まんざら両方持ってることも否定できない。

気になったのは、上記の②番目。
「大人の自分」と「幼い自分」、「良い自分」と「悪い自分」の両極端な自分が存在し続けるという表記。
やっぱり、あーちゃんはこのことを言ってたのかな?ご機嫌な自分と不機嫌な自分という感情の波も必ずあるはずだから、複合的にそう感じたのだろう

境界性パーソナリティ障害だけでもなかなか重くて、その人を知れば知るほど、人が寄り付きたくなくなるような困難さがあるのだが、これが「反社会性パーソナリティ障害」の方だったら命の危険があるから、今すぐ縁を切らなくてはいけない。
まぁ多分…犯罪は犯してないと思うのだが。どうだろう?🤔

このままあーちゃんから連絡が途絶えれば、それはそれで私も追いかけることはなく気持ちを切り替えることができる。あーちゃんに恋する年上の女としては、彼に近づくと自分自身が振り回されて疲弊するから離れようと思う反面、元支援者の私としては別の意味で興味深く、彼の行く末が心配でもあり、そんな気持ちのせめぎ合い。
なんだかなぁ〜

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