スラヴ語エノク書についての考察

スラヴ語エノク書、または第二エノク書は、古代の宗教的文献の一つであり、義人エノクに関する秘密の書として知られています。この書は、エノクが神から特別な啓示を受けたことを記録しており、彼の霊的な旅や神との関係を深く掘り下げています。エノクは、聖書の中でも特異な存在であり、彼の物語は多くの信仰や神秘主義に影響を与えてきました。

この書の冒頭部分では、義人エノクが賢者であり、偉大な書記であることが強調されています。彼は神によって特別に選ばれ、天上の生活や全能の神の王国についての知識を授けられました。ここで描かれる神の王国は、揺るぎないものであり、数多の目を持つ主の玉座が存在する場所です。この描写は、神の偉大さや神秘性を強調しており、読者に深い畏敬の念を抱かせます。

また、エノクは天の軍勢やケルビムの存在についても言及しています。彼は、これらの存在が持つ力や美しさ、そして彼らが奏でる歌声の素晴らしさを証言する役割を果たしています。このような描写は、エノクがただの人間ではなく、神聖な存在との接触を持つ特別な人物であることを示しています。

さらに、スラヴ語エノク書は、無限の光の目撃者としてのエノクの役割を強調しています。これは、彼が神の真理や神秘を理解し、それを他者に伝える使命を持っていることを示唆しています。このように、エノクの物語は、神との関係や霊的な成長についての深い洞察を提供しており、信仰の重要性を再認識させるものとなっています。

この書は、古代の宗教的な思想や神秘主義に興味を持つ人々にとって、非常に貴重な資料であり、エノクの教えや彼の経験を通じて、神との関係を深める手助けとなるでしょう。スラヴ語エノク書は、単なる宗教的文献にとどまらず、精神的な探求や自己理解のための重要な鍵を提供しているのです。


第一章の詳細な解説

この章は、義人エノクの特異な体験を描写しています。エノクは三百六十五年を生きた後、第一月のある特定の日に、ひとりで家にいるときに、深い悲しみを抱えていました。彼は泣きながら、心の中で何かを思い悩んでいたのかもしれません。このような状況の中、彼は寝台でまどろみつつ休んでいると、突然、地上で見たこともない非常に大きな二人の男が現れます。

この二人の男は、輝く太陽のような顔を持ち、燃える松明のような目をしており、その姿は神聖さを感じさせます。彼らの衣服からは泡が広がり、両手は黄金の翼のように美しく、エノクの枕元に立っていました。彼らはエノクの名を呼び、彼は驚いて目を覚まします。実際に目の前に立つ二人の男を見て、エノクは恐怖を感じ、思わずおじぎをします。

その後、二人の男はエノクに向かって「しっかりしなさい。恐れることはない」と告げます。彼らは、永遠なる主が自分たちをエノクのもとに遣わしたことを伝え、今日、エノクが彼らとともに天に昇る運命にあることを告げます。この言葉は、エノクにとって非常に重要な意味を持ちます。彼は、地上に残る息子たちや家族に対して、何をすべきかを命じるように求められます。

エノクは、彼らの言葉を受け入れ、息子のメトセラとリギムを呼び出し、二人の男が言ったことをすべて語ります。この行動は、彼が家族を大切に思い、彼らに対して責任を果たそうとする姿勢を示しています。また、彼が天に昇ることが、彼の家族にとっても重要な意味を持つことを暗示しています。

この章は、エノクの信仰、神との関係、そして家族への愛情を描写しており、信仰の力や家族の絆、神の意志に従うことの重要性を教えてくれます。エノクは、恐れを乗り越え、新たな道を歩む決意を固めるのです。

第二章の教え

さて、私の愛する二人の息子よ、私は今、どこへ向かっているのか、そして何が私を待ち受けているのかを知りません。しかし、あなたたちには大切なことを伝えたいと思います。神から遠ざかってはいけません。常に主の前を歩み、主の定めを守ることが重要です。あなたたちの救いのための犠牲を軽んじてはいけません。そうすれば、主もあなたたちの手の仕事を軽んじることはないでしょう。

また、主から贈り物を奪ってはいけません。そうすることで、主もあなたたちの倉から獲得物を奪うことはないでしょう。羊の初子や牛をもって主を称えなさい。そうすれば、あなたたちは永遠に主に祝福される者となるのです。神から遠ざかることなく、天と地を創造しなかった空虚な神々を崇拝してはいけません。主があなたたちの心を、主への恐れの中で強めてくださることを願っています。

今、私の子よ、主が私をあなたたちのもとに戻してくださるまで、誰も私を探し出そうとしないでください。これは、私があなたたちに伝えたい大切な教えです。信仰を持ち続け、主に従うことが、あなたたちの未来を明るく照らす道となるでしょう。

第三章の神秘的な体験

私が息子たちに話をしていると、突然、ある男たちが私を呼び寄せました。彼らは私をつばさに乗せ、第一天へと運び上げてくれました。そこで私が目にしたのは、星辰の位階にいる長老たちでした。彼らは、星々の運行や年ごとの移動を私に見せてくれました。

その後、私は二百人の天使たちを目にしました。彼らは星をつかさどり、諸天の組み合わせを管理している存在です。次に、私が見せられたのは、地上の海よりもはるかに大きな海でした。この海の上を、天使たちがつばさを広げて飛んでいました。

さらに、私は雪と氷の貯蔵庫を見せられました。その貯蔵庫を守っているのは、恐ろしい天使たちです。次に、雲が出たり入ったりする雲の貯蔵庫や、オリーブの油のような露の貯蔵庫も見せられました。これらの貯蔵庫を守っている天使たちは、地上の花そのもののような美しい姿をしていました。

このように、私は天の世界の神秘的な光景を目の当たりにし、神の創造物の壮大さを感じることができました。これらの体験は、私にとって非常に貴重なものであり、神の計画や宇宙の秩序について深く考えさせられるものでした。

第四章の啓示

その男たちは私を連れて、第二天に降ろしました。そこで私は、際限のない裁きにとらわれた囚人たちの姿を目にしました。彼らは苦しみ、悲しみに満ちた表情を浮かべていました。また、そこには断罪された天使たちがいて、彼らもまた泣いているのを見ました。この光景を目の当たりにした私は、同行していた男たちに尋ねました。「なぜこの者たちはこんなにも苦しめられているのですか?」

男たちは私に答えました。「彼らは主に背き、主の声を聞かず、自分たちの意志で談合した者たちです。」その言葉を聞いた私は、彼らの悲惨な状況に対して深い悲しみを覚えました。

すると、断罪された天使たちが私におじぎをし、こう言いました。「神の人よ、どうか私たちのために主に祈ってください。」私は彼らに対して答えました。「私が誰であるとおっしゃるのですか?私は死すべき人間であり、天使のために祈るなどということはできません。私自身がどこに行くのか、何が私を待ち受けているのか、誰が私のために祈ってくれるのかも全く分からないのです。」

このように、私は第二天での出来事を通じて、神の意志に背いた者たちの苦しみと、彼らが求める救いの切実さを感じました。彼らの悲しみは、私にとっても重い心の負担となり、神の前での人間の存在の脆さを改めて考えさせられる瞬間でした。

第五章の天国と地獄の対比

次に、男たちは私を連れて、第三天に昇らせ、天国の中央に降ろしました。その場所は、言葉では表現しきれないほど美しい景色が広がっていました。すべての木々は花を咲かせ、果実は豊かに実り、食物は常に豊富で、風は香り高く、静かな流れが庭園全体を巡る四本の川が、すべての良いものを生み出していました。また、そこには生命の樹があり、主が天国に入る際に休息される場所でもありました。この生命の樹は、香りの素晴らしさにおいて比類のないものでした。近くにはオリーブの木があり、絶えず油を注ぎ出していました。そこには良い実を結ぶ木しかなく、祝福された場所であることが感じられました。

天国を守る天使たちは常に輝き、絶え間ない声と甘美な歌で神に仕えていました。私は思わず言いました。「これはなんと素晴らしい場所なのでしょうか。」すると、男たちは私に答えました。「エノクよ、この場所は正しい人のために設けられています。正しい人とは、苦悩に耐え、自分の魂を悩ませ、不正から目をそらし、正しい判断を下し、飢えた人にパンを与え、裸の人に衣服を与え、倒れた人を起こし、不正を受けた人々を助ける人です。さらに、主の前を歩み、主に仕える人のことを指します。そのような人に、この場所は永遠に与えられるのです。」

その後、男たちは私を天の北方に昇らせ、恐ろしい場所を見せました。そこにはあらゆる苦しみと苛責があり、闇と霧に包まれ、光はなく、暗黒の火が絶えず燃えていました。炎の川がその場所全体に押し寄せ、寒さと氷、そして残酷で無慈悲な天使たちが武器を持って容赦なく苦しめていました。私は思わず言いました。「これはなんと恐ろしい場所なのでしょうか。」男たちは答えました。「エノクよ、この場所は地上で不敬な行いをした不信心者のために設けられています。魔法や呪術を行い、自分の業を自慢し、人の魂をこっそり盗んだり、他人の財産で不正に富を得たり、飢えた人を満腹にできるのに飢えさせたり、裸の人から衣服を奪ったりする者たちのためです。こうした人々に、この場所は永遠に与えられるのです。」

このように、私は天国と地獄の対比を目の当たりにし、正しい行いと不正の結果がどれほど異なるかを深く理解することができました。天国の美しさと祝福は、正しい人々の努力と信仰によって築かれたものであり、地獄の恐ろしさは、不信心者の行いの結果であることを痛感しました。

第六章の天体の運行

次に、男たちは私を持ち上げ、第四天に昇らせました。そこで私は、太陽と月の運行や移動、すべての光線を見せられました。私は両者の運行を計り、光の強さを比較しました。その結果、太陽は月の七倍の光を持っていることがわかりました。太陽と月はそれぞれの軌道を持ち、彼らの車は風のように走っていました。昼も夜も、太陽と月は休むことなく行き来していました。

太陽の車の右側には四つの大きな星がつり下がり、左側にも四つの星があって、常に太陽と共に進んでいました。さらに、太陽の車の前を行く天使たち、すなわち飛ぶ精霊たちは、それぞれ十二の翼を持ち、太陽の車を引いていました。主が命じると、彼らは太陽の光線と共に地上に降り、露や暑さをもたらしました。

次に、男たちは私を天の東方に連れて行き、そこで太陽が昇る門を見せてくれました。この門は、定められた時ごとに一年全体の月の運行や昼と夜の変化に従って開かれます。六つの大きな門のうち、三十スタディオンのところにある一つの門が開いていました。私はその門の大きさを計ろうとしましたが、正確にはわかりませんでした。

太陽は昇るとき、この門を通って西へ向かいます。太陽が第一の門を出るのは四十二日間、第二の門は三十五日間、第三の門も三十五日間、第四の門も三十五日間、第五の門も三十五日間、そして第六の門は再び四十二日間です。こうして、時が戻り、一年の日々が終わることになります。

次に、男たちは私を天の西方に昇らせ、そこでも六つの大きな門を見せました。これらの門は、東方の門の開閉に応じて開かれ、太陽は東方の門から昇る回数や日数に従って、西方の門から沈むのです。太陽が西の門から出るとき、四人の天使が太陽の光輪を取って主のもとへ持ち上げ、太陽は光なしで進みます。その後、天使たちは再び光輪を太陽に戻します。

男たちは私に太陽の運行の計算と出入りする門を見せてくれました。主がこれらの門を作り、太陽を一年の時刻盤として示しているのです。また、私は月の運行についても示されました。男たちは月のすべての運行と循環を見せ、東方と西方に光輪に包まれた十二の門を見せてくれました。月はこれらの門を通って、通常の時刻に昇ったり沈んだりします。

月は東方の第一の門を通って正確に三十一日間、第二の門は三十五日間、第三の門は特別に三十日間、第四の門は正確に三十日間、第五の門は特別に三十一日間、第六の門は正確に三十一日間、第七の門は正確に三十日間、第八の門は特別に三十一日間、第九の門は正確に三十一日間、第十の門は正確に三十日間、第十一の門は特別に三十一日間、そして第十二の門を通って正確に二十二日間昇ります。西方の門も同様に、東方の門の開閉に従って月は昇り、三百六十四日で一年を終えます。

さらに特別な四日があり、これらの四日は天と年から除かれ、日数には含まれません。なぜなら、この四日は一年の時を超えてしまい、二日は月の満ちる時に、他の二日は月の欠ける時に来るからです。月が西方の門を終えると、向きを変え、光を保ったまま東方の門に向かって行きます。こうして月は昼も夜も円を描いて進み、その軌道は天に似ており、月が乗る車は風のように走り、飛ぶ精霊たちがその車を引いています。

最後に、私は天の中央に、鼓と絶え間ない音の楽器を持って神に仕えている軍隊を見ました。それを聞いて、私は心を楽しませました。

第七章のエグリゴリたち

次に、男たちは私を連れて、第五天に昇らせました。そこで私は、多くの軍勢、エグリゴリたちを目にしました。彼らの姿は人間と同じですが、その大きさは巨人よりも大きく、顔は悲しげで、沈黙を守っていました。第五天にいるにもかかわらず、彼らには何の勤務もありませんでした。

私はそばにいた男たちに尋ねました。「なぜ彼らはこんなにも悲しげで、顔が打ちひしがれ、沈黙を守っているのですか?この天においてお勤めがないのはなぜでしょうか?」すると、男たちは私に答えました。「彼らはエグリゴリです。彼らの中から、二人の君公とそれに従う二百人が地上に降りて、人間の女とともに身をけがすためにヘルモン山の背で約束を破り、身をけがした結果、主の断罪を受けたのです。そのため、彼らは自分の兄弟たちのことや、彼らに加えられた侮辱のことを泣いているのです。」

私はエグリゴリたちに言いました。「私はあなたがたの兄弟に会ったことがあり、彼らの行いを知っています。また、彼らの祈りも知っています。私は彼らのために祈りました。主は天と地が終わるまで、彼らを地の下に断罪されたのです。だから、なぜあなたがたは兄弟を待っているのですか?あなたがたは主の顔前に仕えるべきではないでしょうか。かつてのお勤めを始めなさい。主の顔前に仕えなさい。あなたがたの神なる主の怒りを買って、この場所から追い出されないように。」

私の教えの慰めを聞いたエグリゴリたちは、天において四つの隊形になりました。そして、私のいるところで、彼らは一緒に四つのラッパを吹き鳴らしました。こうしてエグリゴリたちは一つの声のようになり、主に仕え始めました。彼らの声は主の顔前に上りました。

このように、エグリゴリたちの悲しみと沈黙は、彼らの過去の行いによるものでしたが、私の言葉によって彼らは再び主に仕える決意を固めたのです。彼らの声が主に届くことを願いながら、私はその光景を見守りました。

第八章の天使たち

次に、男たちは私を連れて第六天に昇らせました。そこで私は、集まっている七人の天使を目にしました。彼らは輝かしく、非常に高貴で、その顔は太陽の光線のように明るく輝いていました。彼らの顔や外形、衣服の付属物には違いがなく、まるで一つの存在のようでした。

これらの天使たちは、世界の秩序や星、太陽、月の運行を支配し、それらの指導者となる天使や他の天使たちに教えています。また、天の生活全体に和合をもたらし、命令や教え、歌の美しい声と名誉ある賞賛を支配しています。さらに、彼らは時や年を支配する天使、川や海を支配する天使、果実や草、湧き立つものすべてを支配する天使、そしてあらゆる民族の天使がいます。彼らは生活のすべてを支配し、それを主の顔前で記録しています。

その中には、フェニクスが七人、ケルビムが七人、そして六つの翼を持つ者たちが七人いて、彼らは声を揃えて一緒に歌っています。彼らの歌の内容については語ることができませんが、主は彼らの足元にいる者たちのことを喜ばれています。

このように、第六天には多くの天使たちが集まり、主の意志を実現するために働いている様子が描かれています。彼らの存在は、宇宙の調和と秩序を保つために欠かせないものであり、主の前での彼らの奉仕は、天の世界における重要な役割を果たしています。

第九章の解説

この章では、エノクという人物が神秘的な体験を通じて、天の世界に昇る様子が描かれています。エノクは、彼を導く男たちによって第七天に連れて行かれ、そこで壮大な光景を目の当たりにします。彼は、体を持たない存在たちや、火の軍勢、さらには大天使や天使たちの集まりを見て、恐れと震えを感じます。このような神聖な存在たちの中にいることは、彼にとって非常に圧倒的な体験であったことでしょう。

男たちはエノクに対して「しっかりしなさい。恐れることはない」と励ましの言葉をかけます。これは、彼が見ている光景がどれほど神聖であっても、彼自身がその場にいることを許されている特別な存在であることを示しています。エノクは、遠くから主の玉座に座る神を見つめ、天の軍勢が位階に分かれて進み、主におじぎをする様子を目撃します。彼らは喜びと歓喜に満ちた光の中に帰っていくのです。

また、主に仕える栄光の天使たちは、昼も夜も主の前でその務めを果たしており、絶え間ない奉仕を行っています。特に、ケルビムの軍勢や六つの翼を持つ天使たちが主の玉座を囲み、賛美の歌を歌っている光景は、神聖さと荘厳さを一層引き立てています。

しかし、エノクはこの神聖な場面を見ている間に、彼を導いていた男たちが離れてしまい、彼は一人で天の端に置かれてしまいます。彼は恐れと畏敬の念からひれ伏し、孤独を感じます。その時、主は栄光の天使ガブリエルをエノクのもとに遣わします。ガブリエルは再びエノクを励まし、恐れずに立ち上がるように促します。彼は「主の顔前に永遠に立つのです」と告げ、エノクに特別な使命を与えようとしています。

エノクはその言葉に対して、恐怖のあまり魂が身から離れそうになるほどの感情を抱きます。このように、彼の体験は神聖な存在との接触による恐れと畏敬の念に満ちており、彼の心の中で葛藤が生じていることが伝わってきます。この章は、神の存在の偉大さと、それに対する人間の小ささ、そして神聖な使命を受け入れることの難しさを象徴的に表現しています。

この章では、主人公であるエノクが神の前に立つ場面が描かれています。エノクは、彼をこの神聖な場所に導いた二人の男たちを呼ぶように求めます。彼はその二人を信頼しており、彼らと共に神の前に進むことを望んでいます。すると、天使ガブリエルが風のようにエノクを持ち上げ、神の顔の前に連れて行きます。

エノクは、神の強く、威厳に満ちた姿を目にし、彼の存在の偉大さに圧倒されます。彼は、自分がどれほど小さな存在であるかを感じ、神の玉座やその周りにいるケルビムやセラフィムの軍勢を見て、神の栄光を実感します。エノクはその場でひれ伏し、神におじぎをします。

その後、神はエノクを呼び寄せ、「恐れることはない。立ち上がり、永遠に私の前に立ちなさい」と命じます。ここで、偉大な大天使ミカエルがエノクを立たせ、神の前に導きます。神は自らの僕たちにエノクが永遠に神の前に立つために進むように指示します。栄光の天使たちはその言葉に従い、エノクの進行を祝福します。

さらに、神はミカエルにエノクの地上の衣服を脱がせ、良い香油を塗り、栄光の衣服を着せるように命じます。ミカエルはエノクの衣服を脱がせ、特別な油を塗ります。この油は非常に明るく、香りは没薬のようで、まるで太陽の光のように輝いています。エノクは自分自身を見つめ、栄光の天使たちと同じ姿になったことを実感します。

この章は、エノクが神の前に立つことの重要性や、神の栄光と威厳を強調しています。また、エノクが神に選ばれ、特別な存在として扱われる様子が描かれており、彼の霊的な成長と変容を示しています。神の前に立つことは、エノクにとって大きな栄誉であり、彼の信仰の深さを物語っています。

第十章の解説

この章では、神が大天使ヴレヴェイルを呼び寄せ、エノクに特別な任務を与える場面が描かれています。ヴレヴェイルは神の事績を記録することに優れた天使であり、神は彼にエノクに本を渡し、葦ペンを持たせるように命じます。この「本」は、文字が書かれているものではなく、エノクが書き取るためのノートのようなものであることが示されています。

ヴレヴェイルは急いで行動し、ミルラ樹の模様が施された本をエノクに持ってきます。そして、彼はエノクに葦ペンを手渡し、様々な事柄について語り始めます。彼が語る内容は、天と地、海のすべてのこと、自然の運行や生成、年の移り変わり、日の運行、命令や教え、さらには甘美な歌声や雲の出現、風の静まり、武装した軍勢の歌の言葉など、多岐にわたります。

ヴレヴェイルは、エノクに対して三十日三十夜の間、休むことなく教えを語り続けます。エノクもまた、彼の話を聞きながら、三十日三十夜の間、休むことなくすべての記号を書き留めます。エノクが書き終えると、ヴレヴェイルは彼に座るように指示し、彼が語ったことを正確に書き写すように求めます。

エノクは、さらに三十日三十夜の倍の時間をかけて、ヴレヴェイルの言葉を忠実に書き写し、最終的に三六十冊の本を完成させます。この過程は、エノクが神からの知識や教えを受け取り、それを記録する重要な役割を果たしていることを示しています。

この章は、エノクが神の意志を受け継ぎ、知識を記録する者としての使命を担う様子を描いており、彼の霊的な成長と神との関係の深まりを強調しています。また、ヴレヴェイルの役割も重要であり、彼がエノクに知識を授けることで、神の計画が進行していることが示されています。

第十一章の解説

この章では、主がエノクに対して創造の秘密を明らかにする重要な場面が描かれています。主はエノクを自らの近くに呼び寄せ、彼に特別な知識を授けようとしています。エノクは主におじぎをし、主の言葉に耳を傾けます。

主はまず、エノクに対して「おまえが見たすべてのもの、静止しているものと動いているもの、わたしによって成されたもの」を明らかにすると宣言します。これは、創造の全体像を理解するための重要な前提です。主は、万物が存在する以前の状態について語り始め、虚無から存在へ、見えないものから見えるものへの創造の過程を説明します。

主は、これまで天使たちにさえ明かしたことのない秘密をエノクに伝えることを決意し、彼に特別な存在であることを示しています。創造の初めに、主は光を創り出し、その光の中を見えないものとして走り回る様子を描写します。この表現は、主が創造の過程において持つ力と、すべてのものが形を持つ前の状態を象徴しています。

次に、主は「アドイル」と呼ばれる存在を創造します。アドイルは非常に大きな存在であり、その腹の中には偉大な世を持っているとされています。主はアドイルに対して自らを解き放つよう命じ、その結果、様々な創造物が生まれることになります。この過程は、主の意志がどのようにして具体的な形を持つものへと変わっていくのかを示しています。

この章は、創造の神秘と主の無限の知恵を強調するものであり、エノクに対して特別な知識が授けられる重要な瞬間を描いています。主は、すべてを見守り、彼の意志が実現することを確信しているのです。エノクは、この知識を心に留め、主の言葉をしっかりと受け止めるように促されています。

創造の過程に関する解説

この章では、主がアドイルに命じて創造を進める様子が描かれています。主はアドイルに対して「みずからを解き放て」と命じ、その結果、アドイルは自らを解き放ちます。これにより、主が望んでいたあらゆる創造物が生まれる基盤が整います。主はこの創造の過程を見て満足し、自らの玉座を設けてそこに座ります。

主は光に対しても命令を下し、「より高みに昇って、確固としたものとなり、高みのものの基いとなれ」と言います。この言葉は、光が創造の中で重要な役割を果たすことを示しています。光は他の何も存在しない高みへと昇り、創造の基盤を形成します。

次に、主は玉座から立ち上がり、深淵の中で呼びかけます。「見えないもののうちから固きものが生じて見えるものとなるように」との命令により、「アルハズ」という固く重い黒い存在が現れます。主はこの存在をよしとし、下へ降りて確固としたものとなるように命じます。これにより、暗闇の中に新たな秩序が生まれます。

主はさらに、エーテルを光で包み、暗闇の上に広げることで宇宙の構造を形成します。また、水から大きな石を固めて造り、奈落の霧に干上がるように命じ、落ちたものを奈落と名づけます。これにより、創造の基盤がさらに強固なものとなります。

主は海を一ヵ所に集め、陸と海の間に永遠の境界を設けます。この境界は水によって破壊されることはないとされています。次に、主はおおぞらを固め、それを水の上に置き、天の軍勢のために偉大な光の太陽を創造します。この太陽は地上を照らす役割を果たします。

さらに、主は石から大きな火を起こし、その火からすべての体のない軍勢や星の軍勢、ケルビム、セラピム、オパニムを創造します。これらの存在はすべて火から生じたものであり、創造の多様性を象徴しています。

最後に、主は大地に命じて、あらゆる樹木や山、青草、まかれた種を成長させます。生き物を創造する前に、その食物を用意するという点は、創造の計画性を強調しています。このように、主の意志によってすべてのものが秩序立てられ、創造の過程が進んでいく様子が描かれています。

創造の完成と人間の創造についての解説

この章では、主が創造の最終段階において、海に命じて魚や地をはう蛇、飛ぶ鳥を生み出す様子が描かれています。これにより、自然界の多様な生き物たちが誕生し、創造の過程が一層豊かになります。すべての生き物が創造された後、主は自らの英知に命じて人間を造ることを決定します。これは、創造の中で人間が特別な存在であることを示しています。

主はエノクに対して、これまで語ったこと、天で見たこと、地で見たこと、そして本の中に書いたことすべてが、主の英知によって成し遂げられたものであると伝えます。主は、下の基盤から上のそれまで、すべてを創造したことを強調し、助言者や後継者がいないことを明言します。これは、主の創造が完全に独立したものであり、主自身の意志によって行われたことを示しています。

主はまた、自らの目がすべてを見ていることを述べ、もし主がすべてを眺めればそれは静止し、顔をそむけるとすべてが破壊されるという力強いメッセージを伝えます。これは、主の存在が創造物に対してどれほどの影響を持っているかを示すものです。

エノクに対して、主は心をそらさずに自分に語りかけている者を認識するように促します。そして、エノクが書いた本を持って行くように指示します。主は、エノクに「セメイル」と「ラスイル」という特別な存在を与え、地上に降りて息子たちに主が語ったことを告げるように命じます。

主は、すべての軍勢が自らの創造によるものであり、主に逆らう者も服従しない者もいないことを強調します。すべての者が主の権力に仕え、主の意志に従うことが示されています。エノクは、自らの手で書いた本を息子たちに与えるように命じられます。この本を通じて、彼らはすべてのものの創造主を認識し、主以外に他のものが存在しないことを悟るでしょう。

この知識は、エノクの子孫に受け継がれ、世代から世代へと伝えられていくことが約束されています。これにより、主の創造の真実が広まり、すべての人々が主の存在を認識することが期待されています。この章は、創造の完成と人間の特別な役割、そしてその知識がどのように伝承されていくのかを示す重要な部分となっています。

エノクへの神の約束と警告

この章では、主がエノクに対して特別な約束をし、彼に仲介者として天軍の長ミカエルを与えることを宣言しています。これは、エノクが持つ書きものと、彼の先祖であるアダムとセツの書きものが、最後の世まで破壊されることなく保存されることを意味しています。主は、エノクの書きものが重要であり、未来の世代にとって価値のあるものであることを強調しています。

主はまた、地上を守るために天使のアリオフとマリオフに命じて、エノクの先祖の書きものを保存させると述べています。これにより、次の洪水が起こる際にも、エノクの種族が減ることはないと約束しています。主は人間の堕落を知っており、彼らが主の教えを無視し、他の神々を礼拝することを警告しています。人々は主が与えたくびきを捨て、実のない種をまき、偶像崇拝に陥ることで、地上全体が不正や不義、姦通に襲われると予言しています。

その結果、主は地上に洪水をもたらし、大地が泥沼に沈むことを決定します。しかし、主はエノクの部族から一人の義人を残すと約束します。この義人は主の意志に従って行動し、その種から新たな種族が生まれることになります。この新しい種族は、数多く、非常に大きなものとなるとされています。

この章は、エノクに対する神の特別な配慮と、未来に対する警告を含んでいます。主は人間の堕落を見越しながらも、エノクの家系に希望を与え、義人を通じて新たな未来を築くことを約束しています。エノクは、この神の意志を理解し、次世代に伝える重要な役割を担うことになります。

エノクへの神の約束と使命

この章では、主がエノクに対して特別な使命と約束を与える重要な場面が描かれています。主は、エノクと彼の父祖によって書かれた本が、地の守り手たちによって信の人々に示されることを告げます。この本は、その種族にとって非常に重要なものであり、最初の時以上に後の世でたたえられるとされています。これは、エノクの書きものが未来の世代にとって価値あるものであることを示しています。

主はエノクに対して、家で過ごし、息子たちや家族に主の名において語るために三十日の猶予を与えると約束します。この期間中、エノクは「魂を保っている者だれもが、わたし以外に存在しない」ということを理解するように求められます。三十日後には、主がエノクに天使を遣わし、彼を地上と息子たちのもとから主のもとに連れて行くと告げられます。

主はエノクに対して、彼のために席が用意されており、彼は永遠に主の顔前にいることになると約束します。エノクは主の秘密を知り、主の僕たちの書記となることが期待されています。これは、彼が地上のことすべてと天にあることを書く役割を担うことを意味しています。また、エノクは主にとって偉大な世の裁きを証明する存在となることが求められています。

主はこれらのことを、まるで隣人に語るようにエノクに語りかけます。この表現は、主の言葉が親しみやすく、エノクに対する深い信頼と期待を示しています。エノクは、主から与えられた使命を果たすために、特別な役割を担うことになります。

この章は、エノクに対する神の約束と、彼が果たすべき重要な使命を強調しています。エノクは、主の意志を地上に伝えるための重要な存在となり、彼の書きものは未来の世代に受け継がれることが期待されています。主の言葉は、エノクにとっての指針となり、彼の人生における重要な意味を持つことになるでしょう。

第十三章

わが子よ、今、父の声を聞きなさい。今日、私があなたたちに命じることは、主の前を歩むことです。これは主の意志に基づくすべてのことです。私は、あなたたちに今存在するすべてのことと、裁きの日までに存在するであろうすべてのことを伝えるために、主の御使いとしてあなたたちのもとに遣わされました。

さて、わが子よ、今日私が語るのは、私自身の言葉ではなく、私をあなたたちに遣わされた主の言葉です。あなたたちは、あなたたちと同じように作られた人間である私の言葉を聞いていますが、私は主の火の御言葉から受け取ったものを伝えています。主の御言葉は火のかまどのようであり、そこから出る言葉は炎のようです。

わが子よ、あなたたちは、あなたたちに似て作られた人間である私の顔を見ることができますが、私は火で熱せられ、火花を放つ鉄のような主の尊い顔を拝見しました。あなたたちは、あなたたちと同じ人間の目を見ることができますが、私は人間の目を恐れさせる輝く太陽の光のような主の目を拝見しました。

わが子への教え

わが子よ、あなたたちは、あなたたちに似て作られた私の右手を見ることができますが、私は天をも満たす主の右手を拝見しました。あなたたちは、私の体の広がりを見ることができますが、私は限りなく比類のない、終わりのない主の広がりを見ています。あなたたちは私の言葉を聞いていますが、私は絶え間ない嵐の雲の中で、大きな雷のような主の言葉を受け取っています。

今、わが子よ、あなたたちは地上の王の話を聞いています。地上の王の前に立つことは恐ろしいことであり、辛いことです。なぜなら、王の意志は生と死を左右するからです。諸王の王の前に立つことができる者は、誰がその恐れと灼熱に耐えられるでしょうか。しかし、主は恐怖の長である天使の一人を呼び、私のそばに置きました。その天使は雷のような姿をしており、手は氷のようで、私の顔を冷やしてくれました。なぜなら、私は火の灼熱の恐怖に耐えられなかったからです。このようにして、主はその言葉をすべて私に語られました。

さて、今、わが子よ、私は主の口から、または私の目が見たことを通じて、初めから終わりまで、そして終わりからまた初めまで、すべてのことを知っています。私はすべてを知っており、本の中に天の果てとそれを満たすものを記録しました。私はそれらの運行を計り、軍勢を知り、星の数を無数の多数として記しました。

星と自然の運行について

一体、どのような人間が星の動きやその循環、または導き手や導かれるものについて考えることができるでしょうか。天使たちもその数を知らないのですが、私はそれらの名前を記録しました。また、私は太陽の周期を計り、太陽の光が昇ることや沈むこと、さらにはあらゆる運行を計算し、その名前を記録しました。

さらに、私は月の周期を計り、日々の運行や日ごと、時間ごとの月の光の減少を計算し、本の中にその名前を記録しました。雲の住処やその特性、翼、雨や水滴についても調べ、雷の轟きや稲妻の不思議を書き留めました。また、雷の動きや進む道を見せてもらいました。雷は綱によって上がったり降りたりし、激しさで雲を引き裂いたり、地上のものを破壊したりしないようになっています。

私は雪の倉庫や氷の貯蔵庫、冷たい空気についても記録しました。また、ある時に鍵番が倉を雲で満たし、その倉が空にならない様子を観察しました。風の部屋についても記録し、番人がどのようにおもりとますを持ってくるかを見ました。最初に風をおもりに乗せ、次にますに入れ、加減よく地上全体に送り出すのです。それは激しい一吹きで大地を揺らさないためです。

裁きの場所と天国の光景

そこから私は連れられて裁きの場所に来ました。そこで私は地獄の扉が開かれるのを見ました。また、牢獄のような場所も目にしました。そこは容赦のない裁きが行われる場所でした。私は降りて、裁かれる者たちのすべての裁きを見届け、すべての問いを知りました。ため息をつき、不信心な者たちの滅びを嘆きながら、心の中でこう思いました。「幸いなのは、生まれなかった者、あるいは生まれたとしても主の前で罪を犯さなかった者であり、この場所に来ず、その苦しみを負わない者である」。

その後、私は大きな門の近くに立つ地獄の鍵の番人を見ました。彼らの顔は大きなまむしのようで、目は消えた明かりのように見え、歯は胸にむき出しでした。私は彼らに向かって言いました。「あなたたちに会わず、あなたたちの行いを見なければよかった。また、私の部族の者が誰もあなたたちのもとに来なければよかった」。

そこから私は義人たちの天国に昇りました。そこで私は祝福された場所を見ました。すべての被造物は祝福され、すべての人は喜びと楽しさ、無限の光、そして永遠の命の中で暮らしていました。そのとき、私が見たことを、わが子よ、あなたたちに伝えたいと思います。

「幸いなのは、主の名を恐れ、常に主の前に仕え、生命の捧げ物を捧げて生きる者です。幸いなのは、正しい裁きを行い、裸の人に衣服を与え、飢えた人にパンを与える者です。幸いなのは、孤児や未亡人に正しい裁きを行い、不正を受けたすべての人を助ける者です。幸いなのは、変化の道から身をそらし、正しい道を歩む者です。幸いなのは、正義の種をまく者で、その人は七倍に刈り入れるでしょう。幸いなのは、隣人に真理を語るために真理を持つ者です。幸いなのは、唇に慈悲と柔和さを持つ者です。幸いなのは、主の御業を理解し、それを称賛し、御業から創造主を知る者です」。

地上での導きと記録

そしてわが子よ、私は地上での導きを試しながら、それを記録しました。私は一年を組み合わせ、月を集めて、日を算出し、さらに時間を計算しました。時間を測り、記録したのです。また、地上のあらゆる種子を区別しました。その後、主が私に命じたように、あらゆるますと正義のはかりを測り、それらの中に違いを見つけました。ある年は他の年よりも貴重であり、ある日は他の日より、ある時間は他の時間よりも貴重です。このように、ある人は他の人よりも貴重です。それは大きな富や心の賢さ、知恵、弁舌の巧みさ、または沈黙によるものです。しかし、主を恐れる者よりも偉大な者はいません。主を恐れる者は永遠に栄誉を得るでしょう。

主は御手で人間を造り、その顔に似せて、小さな者も大きな者も創造しました。人間の顔を侮辱する者は、主の顔を侮辱することになります。人間の顔を嫌悪する者は、主の顔を嫌悪することになり、人間の顔を軽蔑する者は、主の顔を軽蔑することになります。人間の顔に唾を吐く者には、怒りと大きな裁きがあります。

幸いなのは、裁かれる者を助け、傷ついた者を支え、困っている者に与えるために、どんな人にも心を向ける者です。なぜなら、大いなる裁きの日には、人間の業すべてが記録によって新たにされるからです。幸いなのは、正義のます、正義のおもり、正義のはかりを持つ者です。なぜなら、大いなる裁きの日には、すべてのますとおもり、はかりが市場のように前に並べられ、各人は自分のますを知り、それによって自分の報酬を得ることになるからです。

主への捧げ物と心の理性

主の前に捧げ物を急ぐ者には、主もその受け取りを急がれるでしょう。主の前で灯明を増やす者には、主はその人の貯蔵庫を豊かにされるでしょう。果たして主がパンやろうそく、羊や牛を必要とされるのでしょうか。しかし、主はそれによって人間の心を試されるのです。なぜなら、その時、主はご自身の偉大な光をお送りになり、その光の中で裁きが行われるからです。そして、誰がその光の中で身を隠すことができるでしょうか。

今、わが子よ、あなたたちの心の中に理性を置きなさい。そして、あなたたちの父の言葉、すなわち私が主の御使いからあなたたちに伝えるすべてのことに耳を傾けなさい。この本、あなたたちの父の手で書かれたこの本を取り、読みなさい。そしてその中で、主の御業を認識しなさい。唯一の主のほかに存在するものはなく、その主は目に見えないものの上に基礎を置き、見えないものの上に天を広げ、大地を不定のものの上に基礎づけ、水の上にそれを置かれた方です。また、ただ一人で無数の被造物を創造された方でもあります。

誰が大地のほこりや海の砂、雲の水滴を数えたことがあるでしょうか。主は大地と海を解けないかせで結びつけ、火から理解しがたい美しさを切り抜いて天を飾り、見えないものからすべての見えるものを作られた方です。この本を分かち与えなさい。あなたたちの子供に、またその子供に、あなたたちのすべての親族に、すべての世代に、そして思慮深く主を恐れる者に与えなさい。そうすれば、彼らはこの本を受け取り、それはあらゆる良き食物よりも彼らを喜ばせるでしょう。そしてそれを読み、その教えを受け入れるでしょう。

一方、思慮がなく主を知らない者はそれを受け入れず、拒むでしょう。この本の教えが重荷となるからです。幸いなのは、その重荷を背負い、それを自分のものとする者です。なぜなら、大いなる裁きの日にその重荷を見いだすことになるからです。

裁きの日に向けての教え

わが子よ、私は誓って言いますが、人間が存在する以前から、その人に裁きの場が用意されており、そこでその人を試すためのますとおもりがあらかじめ用意されています。また、私はすべての人間の行いを記録しますが、誰もそれから逃れることはできません。だから、今、わが子よ、忍耐と柔和をもって日々を過ごしなさい。あなたたちが来るべき永遠の世を受け継ぐためにです。

もし主のために病気や傷、暑さや悪事があなたたちに降りかかるなら、それに耐えなさい。また、それを返報することができるときでも、隣人に返してはなりません。なぜなら、返報するのは主であり、大いなる裁きの日に主があなたたちの復讐者となるからです。

兄弟のために金や銀を失いなさい。裁きの日に肉の宝を受け取るためです。また、孤児や未亡人に手を差し伸べ、力に応じて貧しい人を助けなさい。そうした人々が試練のときにあなたたちの防壁となるでしょう。もし重く苦しいくびきが主のためにあなたたちに現れたら、それを外しなさい。そうすれば、裁きの日にあなたたちの報酬を見いだすことができるでしょう。

朝、昼、晩に万物の創造主をたたえるために主の家に行くことは良いことです。幸いなのは、賞賛に心を開き、主をたたえる者です。呪われるのは、隣人への侮辱や中傷に心を開く者です。幸いなのは、主を祝福し、たたえつつ自分の心を開く者です。呪われるのは、主の前で呪いや誇りに心を開く者です。

幸いなのは、主のすべての御業をたたえる者です。呪われるのは、主の被造物を誹謗する者です。幸いなのは、自分の手の労働を高めるためにそれを見つめる者です。呪われるのは、他人の労働を損なうためにそれを見つめる者です。

幸いなのは、古の父祖の基盤を守る者です。呪われるのは、自分の父祖の掟や境界を犯す者です。祝福されるのは平和を植えつける者です。呪われるのは、平和の中にいる人を滅ぼす者です。祝福されるのは平和を語り、平和を持つ者です。呪われるのは、平和を語りながら心の中に平和がない者です。

大いなる裁きの日に向けての教え

これらすべてのことは、大いなる裁きの日に、ますの中と本の中で証明されるのです。だから、今、わが子よ、あらゆる不正から心を守りなさい。そして、永遠に光を受け継ぐためにおもりの中に留まりなさい。

わが子よ、「父が主とともにいるので、私たちの罪を取り去ってくださるだろう」と言ってはいけません。あなたたちは理解しているでしょうが、私はすべての人間の行いを記録しており、誰も私の手で書いたものを消すことはできません。なぜなら、主はすべてをご覧になっているからです。

だから、今、わが子よ、あなたたちの父のすべての言葉、私があなたたちに伝えるすべてのことに耳を傾けなさい。それがあなたたちにとって休息を受け継ぐことにつながるように。あなたたちに与えた本は隠してはいけません。望む者すべてに語り、彼らが主の御業を知るようにしなさい。

さて、わが子よ、期限の日が近づいており、定められた時が迫っています。私とともに行く天使が私の前に立っています。私は明日、永遠に受け継ぐ天に昇るでしょう。だから、わが子よ、あなたたちが主の前であらゆる善意を行うように命じます。

第十四章

メトセラは父エノクに答えました。「父上、何があなたの目を喜ばせるでしょうか。私たちの家や息子たち、すべての家族のために食物を用意しましょうか。そして、あなたはこの人々を祝福してからお出かけになるのでしょうか」。

エノクは息子に答えました。「息子よ、聞きなさい。主が私に栄光の香油を塗られた日から、私の中には食物がなく、地上の食物は私にとって喜ばしくありません。私は地上の食物を望んでいない。しかし、あなたの兄弟や私の家族、そして民の長老たちを呼びなさい。彼らに語り、出発できるようにしなさい」。

そこでメトセラは急いで行き、兄弟のレギム、アリイム、アハズハン、ハリミオン、そして民のすべての長老を呼び、父エノクの前に連れてきました。彼らはエノクにおじぎをしました。エノクは彼らを迎え、祝福し、彼らに答えました。

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