教科書検定

このメールは、以前情熱スリーに送ったものの、採用されなかったメールです。

文田さん根建さんこんばんは。

突然ですが僕の趣味は、教科書検定です。教科書検定ってあれですよ、この国の頭いいっぽい人たちが、教科書の内容がちゃんとしているか確認するやつです。文⚪︎省って省庁の中でもだいぶ影薄いじゃないですか。そんな機関だけにこの国の全ての教科書を任せるのは心配だなと思い、僕もお手隙(てすき)のあいだに審査のお手伝いをしてあげてます。

先月、仕事帰りに本屋で英語の教科書を買い、ニトリのローテーブルでいつものように検定行為にはげんでいました。

いつものようにページをめくって、そこに書いてある英語の文章と、対応する和訳に目を通しました。

英文 I am an office worker.

和訳 私は会社員です。

なるほど、これは自分の職業を聞かれた時に使える英語ですね。


英文 I think so.

和訳 そう思います

これは相手に共感する時につかえるフレーズですね。便利です。


英文 Please tell me your schedule.

和訳 あなたのスケジュールを教えてください。

ふむふむ。誰かと待ちあわせする時に便利な文章です。


…ちょっと待ってください。なんでこんなに実用的な文章しかのっていないんでしょうか。

「ワインはブドウから作られている。」「浜辺にそって歩いてはどうですか。」あの使用頻度の低すぎる文章たちは、一体どこにいってしまったのでしょうか…?

 思い返せば、あれは僕が中学一年生だった頃。引っ込み思案な僕は、教室の誰とも話せず、孤立してしまいました。しかし、英語の授業中、隣の席の山田くんが授業中に言いました。

「ケンとマイケルは友だちですか?って、友達じゃなかったらめちゃくちゃきまずいよね。」

それを言った瞬間、教室は笑いにつつまれました。山田くんはうけたのに味を占め、英語の文章に難癖をつけるようになりました。

「共通の敵がいると団結力が強まる」とはよく言ったもので、普通の会話もままならないほど未熟な僕たちは、「使い所の少なすぎる英文」という共通の敵によって奇跡のまとまりをみせました。しかし、英語に実用性を追い求めてしまったせいか、そんな文章たちが教科書から姿を消してしまっていたのです。中学生たちは、どうやってクラスメイトと団結すればいいのでしょうか。若い時の僕が泣いている姿が脳裏に浮かびました。

我々に必要なのは「会議室は現在使われています。」でも「電車が遅延しているため遅れます。」でもありません。

我々に必要なのは

「それは机ですか?いいえ、椅子です。」であり、

「今日は何曜日ですか?」であり、

「私はたった今テニスをしています」であり、

「あなたはアメリカ人で、私は日本人です」であり、

「宿題はケンによって終わらせられたところだ」なのです。たくさん使えるかなんて、もはやどうだっていいんです。

悔しくなった僕は泣きながら文科省に電話をしましたが、改装工事中ということでかかりませんでした。来週有給とって再チャレンジしようと思います。

文田さんと根建さんの好きな英単語はなんですか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?