愛好家

以下のメールは、約1年前に情熱スリーポイントに送ったものの読まれなかったメールです。懐かしかったのでここに供養いたします。

RN・くだらない質問

　文田さん根建さん、中田敦彦さんこんばんは。

　先日ケンタッキーに入ると、高校生の男女が赤本片手に話していました。

　男子が「ここまで勉強して、受験がうまくいかなかったらたらどうしよう…」と弱音を吐くと、一方の女子が「私は、君がどこの大学に行こうが大好きだよ！」と返しました。どうやら二人は受験生カップルのようです。いけてない学生時代を送っていた僕は、受験生の分際でイチャイチャしているカップルに心の底から殺意を感じました。しかし、ポテトを食べるのが遅いことと、家にイヤホンを忘れることで有名な僕ですから、会話を聞かないようにする手立てがありません。嫌々会話を聞いていると、あろうことか二人は、受験生の分際で有名人しりとりを始めました。

「じゃあ俺から行くな！石原さとみ！」

「『み』？みかぁ…ミッツマングローブ！」

「『ブ』？ブなんでいねぇよー！」

「えー、じゃあミッツの『ツ』で許してあげる〜」

　しりとりで勝手にルールを緩和させるタイプの人間が虫唾が走るほど嫌いな僕は、更にイライラしました。しかし、二人のしりとりは終わりません。

「　『つ』ねぇ…辻希美！」

「また『み』？じゃぁ…水嶋ヒロ！」

「『ロ』は難しいなぁ…あ！六角精児！」

「えーすごい！『じ』は難しすぎるから『し』でいくね！志村雄彦！」

「だれだよそれ！」

「元バスケ選手の人！だって他の人全然浮かばないんだもん笑」

「『志村』だったら志村けんでいいだろ！『し』なら柴咲コウとかもいるし」

「確かにいるけどぉ…でも志村雄彦がいいの！」

「ん？ま、いいけど…じゃぁ…小松菜奈！」

「『な』ね！中田敦彦！」　

　僕はこの会話を聞いていて、あることに気づいてしまいました。彼女の方が出した芸能人の名前の共通点です。ミッツマングローブ、水嶋ヒロ、志村雄彦、中田敦彦、全員の出身大学は慶應義塾大学です。そして彼女が持っていたのは慶應文学部の赤本で、机の上には慶應の生協でしか買えないオリジナルのボールペンが転がっていました。そうです。彼女は、重度の慶應愛好家だったのです。

「こ、こ、小池栄子！」

「また『こ』！？じゃあこがけん！あ！『ん』ついちゃった！」

「俺の勝ち！じゃあ今日塾あるから先行くな！終わったらラインするわ！」

　しりとりがひと段落すると、男子校生は足早にケンタッキーを後にしました。僕は一連の流れを見ていて、彼女が彼に言った、どこの大学に行こうが好きという旨の発言に、疑惑の目を向けざるを得なくなっていました。

　彼女は彼が見えなくなるまで手を振ると、筆箱からシャーペン2本を取り出し、ドラムスティックのようにクロスさせて持ちながら、嬉しそうに足をパタパタさせていました。何をしているんだ…と思いましたが、すぐに気づきました。そうです。クロスしたペンがモチーフでお馴染み、慶應の校章を手元で表現していたのです。

　また、ひとしきりクロス行為を終えると、彼女はカバンから、石原良純の著書『石原良純のこんなに楽しい気象予報士』を取り出し、安らかな顔で読み始めました。石原良純は幼稚舎出身であり、生粋の慶應ボーイです。

　更に、スクールバックに付けてある定期券の区間をよく見ると、日吉・三田間(ひよし・みたかん)でした。

　彼女が言った、どんな大学に受かろうが好きという言葉は確実にダウトです。

　文田さん根建さん、慶應義塾大学出身の中田敦彦さんが最近ダウトだと思ったことはなんですか？