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誕生

2020年10月5日、午前7時49分。3060g49cmの元気な女の子が誕生しました。命名は、「椿』。

彼女が産まれる前日の日曜日、夫が休みだったため2人でヴァイオレットエヴァーガーデンを観ながらのんびり過ごしていた。スーパーに出かけて秋鮭を手に入れ、今夜はムニエルにしようか?なんて話をしていたのを覚えてる。

19時ごろ夕飯の下準備をして、先にお風呂を済ませた矢先にトイレで破水。初めてのことなので本当に破水であるかの真意が分からず、病院へ連絡して21時半ごろ診察してもらうことに。入院バッグを持って彼とタクシーで病院まで向かった後、破水していることがわかってそのまま入院することになった。

彼は本陣痛が始まるまで一時帰宅することになり、1人くらい病室で陣痛を待つ。その夜、は破水で運ばれた妊婦さんが立て続いており、ワタシを含めて計3人の女性が陣痛の待機をしていた。

入院直後はまったく陣痛の気配もなく、夕飯を食べそびれたため病室でコンビニおにぎりを食べながらのんびりその時を待っていた。看護師さんには、眠れるうちに休んでおいてね?と言われていたので、横になり数時間程度就寝。夜中の1時半ごろ少しずつ重い生理痛のような痛みが襲ってきたため、内診を受けて子宮口が少しずつ開いてることを確認。
ここからが本当に気の遠くなるような時間だった。段々と痛みの強さは増していくも、赤ちゃんは分娩時に適切とされる向きに変わってくれず、子宮口もなかなか開かない。ランダムに襲ってくる鈍い痛みに怯えながら看護師さんの内診で子宮口の開きを促してもらうものの、これが凄まじい痛み。
立ち会いを希望していたものの、当日はお産が立て込んでいたこともあって他の方との兼ね合いもあり、彼は本陣痛が始まってから呼ばれることに。
これまで経験したこのない凄まじい痛みに襲われてもがき苦しむ中、彼がようやく到着。身体を仰け反りにらなるべく痛みを逃す姿勢を模索するも、逃れられない苦しみから心が折れそうになるばかり。看護師さんが夫にお股を押さえててくださいと指示を出し、強く股の間を押してくれると少しだけ痛みがマシになる気がした。分娩に入る前は力まないように!と強く指示されるものの、痛みのあまり全身が強張ってしまう。しかし力を入れてしまうと子宮が浮腫んでしまうので入り口が塞がってしまい、もっと痛みが続く結果になる。最悪の場合、帝王切開になることもあるよ?と脅されながら看護師さんのアドバイスに耳を傾けるも、身体は裏腹に反応する。同時に吐き気が襲ってきてしまい、猛烈な痛みと嘔吐に襲われて地獄絵図そのもの。

しばらくして子宮口も9センチまで開き、あと少しで分娩の準備に差し掛かってきた。少しずつ力んでいいよ?と言われるものの、痛みが佳境に差し掛かってアドバイも頭に入ってこない。その後、ようやく分娩の準備が本格的に始まって脚をM字に固定されるものの、あまりの痛みで身体が仰け反り看護師さんに叱られてばかり。彼も「ふーって息を吐いて!動いちゃダメだよ」と必死に看護師さんの言葉を繰り返してくれるが、いっそのこと殺してくれと言う感情になる……。

ようやく本格的な分娩の段階に入り、力んでいいですよ!と医師と看護師さんによる掛け声が始まる。お腹の方を向いてと指示されるも痛みと恐怖で思うように頭を上げられず、枕元にいる彼が必死で頭を持ち上げてくれた。踏ん張っても踏ん張ってもなかなか頭が出て来ず、これまでにないくらいの力を出し切ってみるものの、簡単には出てこない。もうすぐ我が子に会えるという感動と痛みが怒涛に襲ってきて感情がおかしくなり、号泣しながら鼻水まみれになって力を入れ続ける。

この時、赤子を体内から押し出すときの痛みは本陣痛のときに経験した腰を砕かれるような痛みとは異なり、多少我慢することができた。もちろん痛いことに変わりはないけど、陣痛に比べたら多少マシだと思う。
頭がそろそろ出てきますよ!という段階に差し掛かったところで会陰切開の支持が下され、麻酔なしで陰部にメスがサクッと入れられた時は驚いた。
もう後は死んでもいいという覚悟で踏ん張ることしかできず、看護師さんと医師のもう少しだよ!という掛け声だけを頼りに踏ん張り続ける。そしてやっと頭が出てきたという時に差し掛かり、もうお産も手慣れたものよという気持ちで力を込めて、ようやく7時49分に我が子が誕生。
羊水と胎盤を押し出されたときの痛みも凄まじく、会陰切開の縫合も驚くほどの激痛で、地獄のような時間を乗り越えて誕生した我が子を目にして思わず泣いてしまった。側で見守ってくれた夫も飛び出してきた我が子を目にするや思わず涙を流してしまったようで、2人して泣き顔で赤子を迎えることになった。



もう2度とこんな経験はしたくないと思う一方、痛みを乗り越え出会えた赤子の尊さを噛み締めるたびに自然分娩でよかったのかもしれないと思える。それは、過ぎた話だからこそ豪語できるセリフでもあるけど。ただ、ただ、ワタシと赤子と夫に称賛の拍手を送りたいね。

その後、義父母や実父母に赤子をお披露目し、「お疲れ様でした」という言葉を浴びるたびに涙がこぼれそうに。優しい目で愛おしそうに赤子を抱き上げる周囲の大人を見る度、遠とき大切なものが多くの人々に愛されている実感を得て心がギュッとなる。そして、この子を産んでくれて有難うという台詞たちがまた、ワタシの心を震わせる。
どうか、どうか、貴女がこれからも多くの人々に愛される存在になれるよう、まずは母としての無償の愛を溢れるほど送りたい。

産まれてきてくれて、有難う

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