PLAceで目指すこと

※2016/6/28〜前、中、後編と分けて別のブログに掲載した記事の転載です※

 イギリスのEU離脱の国民投票結果を受け、世界の混迷が加速しそうな今日この頃。こんな時こそ、自分たちのビジョン、ミッション、目的、目標など、何を目指し、何を成していきたいのかを再度確認する時だと思います。

なので、来月で設立して1年が経つPLAce株式会社を設立した経緯や目指すことについて、ちゃんと書き留めておくことにしました。

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 先日の記事に書いたとおり、私が教育に関心を持ったのは10年前の学生時代の体験が大きな要因だった。結局、課外活動に熱中しすぎて博士課程の時は就活を一切せず、そのまま無職になるところを拾ってもらうなど、大学院修了後は、様々な縁があって主に大人向けの研修開発に従事してきた。

 その間に結婚し、子どもが生まれ、父親としての人生も始まった。そして、昨年、これからの仕事を考える2つの出来事が起こった。その出来事が、子ども(未成年)の教育を事業の柱にする決意をさせ、会社設立のきっかけとなった。

子どもが長く過ごす環境をより良くしたい

 一つは、昨年から長女が幼稚園に通いだしたこと。

 ついに公教育に触れることとなった娘は、すべての時間を家庭で過ごしていた状態から、起きている時間の多くを幼稚園で過ごすことに。園選びはもちろん、小学校どうする?中学校は?高校、大学は?・・・と、夫婦間で娘の進路について会話するようになった。

 我が子が成人するまでの大半の時間を過ごす公教育を少しでも良くしたい。制度が変わるのを待っていると子どもは大人になる。今、出来ることから始めなければ。

 もう一つは、本当に運良く、高校の授業設計に携わる機会をいただけたこと。

 これは大きな転換点だと思った。学校教育は参入障壁が高い。そこに小さな一歩でも入り込むことができた。大きくシフトする時が来た。税務的には個人事業の方が良かったが、ここで法人にして、立場をとると決めた。はっきりと公教育を仕事の対象にしようと。

 そうやって2015年の7月、PLAce株式会社を設立した。

保育・教育現場を取り巻く市場

「教育関係の仕事をしています」

そうやって名刺交換をするとよく聞かれることがある。

「教育って儲からないでしょ?なんで教育にしたの?」

 それは一つの事実だと思う。特に公立の園や学校は自由に使える予算が少ない。さらに、保育・教育現場は参入障壁が高い。

 先生たちは多忙だ。学校内でやることがたくさんで(部活などがあるとほぼ毎日学校にいる)、外との接点がほとんどない先生が多い。自分の学校以外の接点は、せいぜい別の学校の同じ教科の先生。先生以外で最近会った人はと尋ねたら「文具を届けに来た業者の人くらい」と返事が来た。

 更に、物品の購入についても限定的だ。例えば、多くの幼稚園・保育園が定番5社のカタログから玩具や教材を購入している。それ以外から購入するのは稀だという。新しい玩具や教材の情報は出入りの業者が営業に来た時に仕入れるくらい。

 書籍の購入も取引業者が決まっている場合もある。外部の講師からオススメの参考文献をamazonのリンクとともに教えてもらい、それを印刷して出入りの業者に頼み、届くのに1週間以上待ったというケースもあった。

 こういう状況があるので、企業が新しく参入しようとしても既存の業者を通じて販売するか、習い事などの周辺産業での商売にするか、その2択になりがちのようだ。

 これが全てではないだろうが、私がこれまでインタビューなどを行った園や学校はこのような状況が多かった。

保育・教育現場の本丸に取り組む

 子どもたちは起きている時間の大半を保育園、幼稚園、学校で過ごす。なので、家庭と同じくらい保育・教育現場の子どもへの影響は計り知れない。しかし、多くの「教育」を志す人たちは(先生を除いて)”学校”をフィールドにしない。それは先述の通り、「参入障壁が高い」状況があるからだ。

 そして、習い事などの周辺産業は充実し、都市部や経済的余裕がある家庭の子どもたちはそれらを享受する。周辺産業に従事している人たちの中には「いつか実績を積めば公教育にも取り入れられるかも」と、淡い期待を抱いている人もいる。

 はっきり言って、それでは遅い。そんなことを待っていたら、私の子どもも含め、今の子どもたちは皆、成人してしまう。参入障壁が高い、儲からない、スケールしない・・・そんな従来の定説に引っ張られてる場合じゃない。PLAceは最初から保育園や幼稚園、学校などを事業の対象とすることを決め、試行錯誤を始めた。

 何か手だてがあるはずだ。保育・教育現場のボトルネックは何か。保育・教育現場の課題は山積している。人材、待遇、コンテンツ、カリキュラム、教材、設備、組織、制度などなど・・・。はっきり言って、すべて課題だ。ただ、現在の課題を生み出し続けている、もしくは状況を硬直させている、何か(ボトルネック)があるのではないか。

 課題を解決すれば次の課題が生まれ、課題というものは無くならないだろう。でも10年も20年も、もしくはもっと長く同じ課題がずっと言われ続けているのはなぜか?それを引き起こす構造(システム)があるはず。

 今年の始め、これまでの授業や保育園、幼稚園の調査などを振り返り、今年度の事業計画をまとめながら考えていた。そして、一つの結論(仮説)に行き着いた。あぁ、これまで何度も出てきた”皆がわかっていながら避けていること”。それが答えかもしれない。

「保育・教育現場は市場が閉じている」

使える・使えないの前に「知らない」

 熱心な先生、能力が高い先生、発想が面白い先生など、これまで色んな先生に出会ってきた。そういう先生たちは子どもたちの学びや成長のために、色んな試行錯誤をしながら子どもたちとの時間をたくさん取っている。ただ、子どもたちとの時間を取れば取るほど、外部の人との接点は減っていく。

 インターネットで簡単に大量の情報が手に入る時代だが、多くの情報は検索をしないと出会えない。良質な人脈を持っている人は、SNSなどを通じて最新情報や面白い情報を共有し、常に情報が更新され続けていく。そういう接点がない人は結局、TVや新聞くらいしか情報源がない。それでは痒いところには手が届かない。

 例えばgoogleはgoogle for educationという学校向けサービスを提供している。最近ではgoogle appsをビジネスで使う企業も多いと思うが、企業が使っているサービスと同等のものを学校なら”無料”で使える。しかもClassroomという学校用アプリもあり、そこでは生徒への情報や文書の共有、課題管理や評価、簡単なアンケートなどが手軽にできる。でも、おそらく日本の学校の先生は、このサービスの存在をほとんど知らない。

 ある高校でgoogle for educationの説明を高校の先生たちと受けたところ、これまで手間をかけていたアナログな作業が、これでかなり削減できると驚いていた。先生たちは説明が終わった後、「こういうのが欲しかった」と感想を述べ、「すぐに使いたい」と話し合いが始まった。 結果、まずは特定のコースに限定して、試験運用をしてみることとなった。

 今のは一つの例だが、世の中では日々、様々なテクノロジーや新しいサービスが生まれており、保育・教育現場で活用できるものも多い。だが、それらと現場との接点がない。現場に合う、合わないとか、使える、使えないとかの前に”知らない”のだ。

教育・保育現場のプラットフォームになる

 IT技術をはじめ、日々、様々な技術や手法が生まれ、私たちの働き方や暮らし方に大きな影響を与えている。ここ数年で働き方や暮らし方の変化は著しい。そして、それら技術は生活面にとどまらず、「教育面」や「教育組織の運営面」への活用も期待されている。

 もし、熱心な先生、能力が高い先生、発想が面白い先生たちが新しい技術や手法と出会ったら、どんな面白い学びが生まれるだろうか。

 もし、世界のあちこちで面白い取り組みやツールの使い方などがタケノコが生えるようにどんどんと生まれていったら。きっと、とっても多様で子どもたちが活き活きと遊び、学び合えるような場がたくさんできるに違いない。山積している課題もいろんな解決策が生み出され、どんどん変わっていくかもしれない。そんな生態系を作りたい。

 そのために、ツールやコンテンツ、人や情報が行き交う教育・保育現場のプラットフォームが必要だ。PLAceはその構築を目指すことにした。まずは自分たちが実践することから始める。

 プラットフォームというのは流行り言葉の一つであり、人によって解釈も違うし、実態がわかりにくい。だから「プラットフォームに俺はなる!」といきなり言われても「???」だろう。

 そこでまずは自分たちがツールやコンテンツ、情報などの提供者として実践することから始めることにした。実践を通して、一つでも多くの現場と接点を持ち、そこで起こっていること、困っていることを知る。ツールやコンテンツを作ることで提供者としての葛藤や苦労も知る。

 一つ一つの取り組みを通じて、これまでなかったつながりを生み出し、だんだんと生態系へと成長させていきたい。

子どもたちの学びのために

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