IT25・50とは?「未来を予測する一番いい方法は、自らそれを創ることだ。(アラン・ケイ)」
昨晩、2018年12月10日(月)に「インターネット商用化25周年 & 「The Demo」 50周年記念シンポジウム「IT25・50 本当に世界を変えたいと思っている君たちへ」に参加しました。
2018年は、1993年にWebブラウザ『NCSA Mosaic』が発表され、インターネット商用化が本格的に始まってから25年。そして、1968年12月9日(米国時間)、ダグラス・エンゲルバートが、マウスやウインドウ、ハイパーテキストなど、その後のパーソナルコンピュータ、インターネットの歴史の出発点となった『The Mother of All Demos(すべてのデモの母)/The DEMO(ザ・デモ)』を行ってから50年を迎えます。
そこで、ITが誕生した日からちょうど50年後の昨日、「パーソナルコンピュータの父」アラン・ケイの賛同を得て、インターネット商用化25周年 & 「ザ・デモ」 50周年記念シンポジウム「IT25・50 本当に世界を変えたいと思っている君たちへ」が全国で同時開催されました。(主会場は、慶應義塾大学三田キャンパス東館6階G-Lab)。
僕の所属している地域ICT推進協議会はこのシンポジウムの共催者であり、昨晩は、神戸会場(AREA51)でこのシンポジウムに参加しました。忘年会も兼ねていたので、ビールを飲みながら高尚な話を聞き、ゆるいディスカッションを行いました(笑)
○専門家に任せるな!
このシンポジウムの目的は3つあります。
①本当に世界を変えた偉人の話をみんなで聞こう。
②どうしたら本当に世界を変えられるか、みんなで考えよう。
③みんなで本当に世界を変えよう。
最初に、コンピュータとインターネットの歴史が流れ、「私たちは、誰かが世界を変えてくれるのを待っていればいいのでしょうか?」という問題提起が出されました。
私たちは、誰かが世界を変えてくれるのを待っていればいいのでしょうか?
「政府やGAFAのようなプラットフォーマーたち、あるいは巨額な資金を運用する投資家たちが変えてくれるのを待っていればいいのでしょうか?」という問題提起が出され、世界のリーダー達のすごく悪そうな顔のスライドが表示されました(笑)
ここでの答えは明確でした。そうやって誰かが世界を変えてくれるのを待っている限り、いつまでたっても、あなたが主体的に関われる社会はやってこないということです。要するに、「専門家に任せるな!」ということです。
専門家に任せるな!
○凡人をして非凡なことを成し遂げる
「もし、あなたが、もっと自分自身が主体的に関わることができる未来社会、主体的に関わることで、明るく楽しく暮らせる未来社会を望むのであれば、今一度、ダグラス・エンゲルバートやアラン・ケイ、スティーブ・ジョブズといった、ITの歴史に燦然と輝く変革者たちが、何を考え、どう世界を変えてきたのかを振り返ってみるといいでしょう。」
という流れで話は進みます。
彼らが創り出した「パーソナルコンピュータ(個人のためのコンピュータ)」という言葉、そして、「インターネット(ネットワークのネットワーク)」という言葉には、壮大なビジョンが含まれています。
それは、専門家ではない、『普通の人々』の力を拡張し、『普通の人々』が協力しあい、力を合わせて問題解決をしてゆく未来社会を創造していこうということです。
P.Fドラッカーの有名な言葉ですが『凡人をして非凡なことを成し遂げる』はマネジメントの本質です。つまり、凡人を非凡な人間に育てられなくても、凡人に非凡な仕事をさせることは可能であるという意味です。
「ITを活用して、みんなで知恵と力を合わせて世界を変えるにはどうしたらいいか? 理想的な市民社会を創造するのはどうしたらいいか?」
を考えようと呼びかける理由はここにあります。繰り返しになりますが、専門家に任せてはいけない。
○Augmenting Human Intellect: A Conceptual Framework
パーソナルコンピュータ、インターネットの歴史の出発点となったのは、50年前の「The Mother of All Demos(すべてのデモの母)/The DEMO(ザ・デモ)」です。
「The DEMO」は、誰でも直感的に利用できるパーソナル・コンピュータという概念を、世界に伝えてことで有名ですが、マスメディアはこのとき『マウス』に焦点を合わせました。確かに、キーボードのような専門家が利用するようなインターフェースと違って、マウスの登場は革新的だったのでしょう。
しかし、エンゲルバートは不満でした。なぜなら、彼が本当に伝えたかったのは、そのパーソナル・コンピュータを活用して、『みんなで知恵と力を合わせて世界を変える』という目的だったです。要するに、目的が伝わらずに、手段の一部だけが伝わったということです。車に例えると、『車で駆け抜ける喜び』や『家族の楽しむドライブ』が伝わらずに、「シガーライターソケットが搭載されました」と伝わったということです(笑)
このとき、エンゲルバートは「Augmenting Human Intellect: A Conceptual Framework 」という論文を発表しています。なんと1962年10月の段階で、いま話題になっている人工知能のコンセプトをまとめていたのです。
最近では、人工知能(AI)という言葉に別れを告げ、これからは「拡張知能
(extended intelligence:EIまたはXI)」と呼ぼうという取り組みが、伊藤穰一さんが率いるMITメディアラボと米電気電子学会(IEEE)が始まったところです。その根本となる構想が、既に1962年の段階でエンゲルバートが考えていたのですね。
○アラン・ケイ基調講演「未来を予測する一番いい方法は、自らそれを創ることだ」
1968年12月9日、歴史的な「THE DEMO」に参加したアラン・ケイは、ほぼ同時期にパーソナルコンピュータの理想型として「Dynabook Concept(ダイナブック構想)を発案し、ゼロックスのパロアルト研究所で「暫定的ダイナブック」を開発しました。
IT25・50では、イギリスに住んでいるアラン・ケイと慶應義塾大学、そして全国開催地がキャプション付きの機械同時通訳でつながりました。おそらく、ディープラーニングの音声認識システムを利用していると思われますが、自然な感じでアラン・ケイのお話を聞くことができました。もう少し洗練すれば、2020年の東京オリンピックの同時通訳にも応用できると思います。
アラン・ケイの「暫定的ダイナブック」に触発されたスティーブ・ジョブズが世界初の商用パーソナルコンピュータMacintoshを開発し、ビル・ゲイツがWindows を開発、世界を大きく変えてゆきました。話のネタですが、ジョブズがiPadを出したときに、ビル・ゲイツが「あれはダイナブックのパクリだ!」と指摘したら、「何を言うか!先にお前が盗みに入ったところを、後から俺が盗んだだけだ(笑)」というジョークが生まれたそうです(笑)
アラン・ケイが「ダイナブック構想」の詳細を著したのは、1972年に発表した論文「A Personal Computer for Children of All Ages(すべての年齢の子供心を持った人たちのためのパーソナルコンピュータ)」でしたが、驚くべきことにアラン・ケイは、「ダイナブック構想」は今なお実現していない、実現するのはこれからだ」と言っています。
IT25・50では、「ダイナブック構想」は壮大なビジョンなので、無学な僕には説明することができないのですが、直感的に思ったのは、「あぁ、これは東洋哲学の悟りに似ているな」ということです。『全にして一、一にして全』に到達すること、数学的には集合論やらトポロジーやらが沢山出てきて、具体的なことはよくわかりませんでしたが、恐ろしく壮大なビジョンを持っているなということだけは伝わりました。
矛盾や対立や差異を含んだ複雑な概念、宇宙から素粒子までの要素と関係性を、すべて同時に情報処理しているようなイメージです。なるほど、天才とはこういう人間のことを言うのか。というか、本当に人間か?
そして、最後に有名な言葉、「The best way to predict the future is to invent it(未来を予測する一番いい方法は、自らそれを創ることだ)」で、講演は終了しました。
The best way to predict the future is to invent it.
(未来を予測する一番いい方法は、自らそれを創ることだ)
それからは、慶應義塾大学とアラン・ケイでディスカッションしていましたが、神戸会場はビールやお酒を飲みながら、楽しく未来についてディスカッションしました。
難しいことはよくわかりませんけど、世の中には偉大な天才がいるけど、天才一人では世界を変えることはできない。専門家に任せてはいけない。いま、むかしも、これからも、人類は、凡人をして非凡なことを成し遂げるという方法で世界は少しずつ良くなってきた。人類の叡智を縮減したテクノロジーを利用して、みんなで知恵と力を合わせて世界を変えていきたいと思いましたヽ(=´▽`=)ノ
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