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明日もまた、暗闇の中で

まーちゃん🖌️-----------------------------


今日という日を言葉にするために、毎日毎日机に向かっているのかもしれないと思った。
思ったけど、てんでだめだ。
喜びが、嬉しさが、幸せが、最高が、感謝があふれてくるだけで、全然なんにも、本当にまとまらない。

M-1の決勝じゃないし、テレビに出た訳じゃない。まだ優勝もしてない。ほんの少し、手がかかっただけだ。
でもこれが、この一歩が、この光が、私たちはずっとずっと、本当に欲しかった。

ガングリオンが面白くなったのは、正直ここ半年か1年くらいのことだ。

もちろんその時々の面白さはあるけれど、それは文化財のニンかクボの巧さ、片方に起因するものが多く、パフォーマンスが安定しなかったり、ネタを作るのも一苦労だったりして、かなりしんどい時期が長かった。
やっては違う、やっては違うを繰り返す日々は、ふたりにとってきっとストレスだったと思う。

どれだけ考えても、どれだけ練っても、ときにウケても、ずっと暗闇から抜け出せないまま。
それでもふたりは、暗闇の中で手を伸ばして、たくさんの先輩や信頼できる芸人さんに助けを求めながら、少しずつ、着実に、格段に面白くなっていった。
だんだん「良い」と言ってくれる人が増えて、応援してくれる人が増えて、自信が出て、少しずつ評価されるようになった。たくさんライブに呼んでもらえて、バトルライブも勝てるようになってきた。それでもどうしても、やっぱりふたりは、私たちは、まだ暗闇の中にいた。

23歳、芸歴4年目。
あとがないような年ではないけれど、絶対に「今」、なにかを掴まなければならない気がしていた。
自分たちが大きくなるために、好きと言ってくれる人たちのために、救ってくれたたくさんの大切な人たちのために。もらったたくさんの愛を返すために、あとはどうしても、目に見える結果が欲しかった。

そんなふたりが23歳の年に始まった25歳以下の賞レース、昨年の雪辱を晴らしたいM-1グランプリ1回戦。今、結果が欲しいふたりにとって、最短ルートの一歩目となる『運命の日』は、奇しくも2日連続になってしまった。
ネタ尺も客層も、審査員も違う別の大会。調整も大変だったろうし、のしかかるプレッシャーも、若くて繊細なふたりが耐えうる量を超えていたかもしれない。

それでもふたりは、この2日間を、最高の形で駆け抜けた。

言葉にするのが無粋なくらい、全部がベストパフォーマンスだった。お客さんも、大阪から駆けつけてくれたファンの人も、東京でいつも応援してくれている人も、会場にいない大切な人たちも、みんながガングリオンの味方だった。
舞台上からの景色はもちろん、私が想像し得ないほど最高だったと思う。

U-25決勝進出を決めたあと、3人で集まって「完璧すぎる」「これは売れる」とふざけあった。ちょっと斜に構えて、調整できるライブのスケジュール確認までやった。余裕ぶった。
余裕ぶったあと、どこでも良いと入った店の片隅で小さく乾杯して、少し黙って、3人であり得ないくらい泣いた。
クボは、大切な人たちからの祝福の言葉を噛み締めながら、「なんでこんな、自分のことみたいに。」と呟いた。
左手で、いつもの大切なネックレスをぎゅっと握って、大粒の涙を流して、文化財の肩を叩いて「諦めなくてよかった」といった。
文化財は「ほんとにそうです。」とだけ言って、クボの目をじっと見つめた。

本当に、君たちはすごいよ。

私は舞台には立たない。手伝えることは限られているし、祈るしかないことばかりで、本当に無力だ。それでも、こんな最高のふたりが私を選んでそばに置いてくれていることを、「みんなで掴んだ」と言ってくれることを心の底から誇りに思う。

これからもきっと、やっては違う、やっては違うを繰り返す日々だ。
暗闇の中で掴めたと思った光は幻想かもしれないし、行く先に欲しい未来があるかはわからない。
それでも、ふたりのあんな顔が、あんな姿が、あんな涙が、あんな喜びが見られるなら、暗闇の中で一緒に手を伸ばしながら、このまま、いけるところまでいけたらいいなと思う。

準決勝を終えたあとの抽選会。クボはにぼしいわしさんの名前を出した上でしっかり失敗し、文化財はあたふたして変なすかし方をしていた。
ひつじねいりさんを困惑させ、完全に会場を変な空気にしたふたりを観ながら、「やっぱり、こういうとこもガングリオンだな。」と、ひとりで笑った。

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