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ラーメン1人前、餃子9人前

こんにちは!みんなのクボさんです。お前のためのクボさんでもあります(ラーメンに集中するためのクボさんではないし、それは味集中カウンターです)。

そんなお前のためのクボさんは、最近少し落ち込み気味…(泣きながらお尻を振って踊る)

かかってるわけじゃないし、季節の変わり目なんて大好きやから落ち込む要素わからん。
理由なんてなく、とにかく自分という生き物に生きられてるのがだるい時期です。

なんでやろう?と悩んでいるときに、ああ、昔もこんなことあったわね、となりました。

それを今日は思い出しつつ書きます。元気になれる気がするので。


「いやもう、お姉ちゃん、しんどくてさ」



ある日、いつものように姉のうちへ行ったら、開口一番こう言われました。身構えました。こんな日は、ろくなことがありません。

「我慢できんくてAちゃんに連絡してもうてさ。そしたら今日おじちゃんもおばちゃんも休みやっていうから、、、、、みんなで王将行こって。やから会社休んだわ。」
Aちゃんは、私たちのはとこで、Aちゃん一家は、私たちが大好きな親戚です。


母のいとこのおじさんとおばさん、そしてその子どもたち。
私が小学生の頃までは毎年夏と冬に集まって旅行に行っていたのですが、
はとこのお兄ちゃんお姉ちゃんが受験だったり就活だったりで旅行に来れなくなってきたので、私が中学生になる前に集まりは無くなっていきました。
大おばあちゃんがいつも旅行を計画してくれていたのですが、
大おばあちゃんは大お年寄りでもあるので、6年ほど前に亡くなりました。

それからは今まで以上に集まらなくなり、そうこうしている間に私は演奏家を諦めたり教員を諦めたり彼氏に振られたり家族が減ったしてしまいました。今は芸人です。世の中の職業で、一番ちゃらんぽらんな芸人です。

ちゃらんぽらんしているうちに、なんと無く、ぼんやりと、会いにいくのが怖くなって、会うタイミングがあっても、理由をつけて会いに行きませんでした。

会いにいけば元気になれるのは分かっているのですが、ちょっと、ね、なんて言いますか

『好きだから会えない』人たちっているのね

億劫な気持ちと、罪悪感とが混ざった感情で電車にのっていたら、姉がざわざわしだしました。

「やばい、絶体絶命や。」

冷や汗をかく姉。
握りしめられた画面には着信。「〇〇課長」の4文字が光っています。

「どうすればバレへん?どうやっても音で駅におるってバレるよな」
「おじさんち着くまで待ってもらったらいいやん。『すみません、今体調悪すぎるんで電話待ってください』言うて」
「無理やろ、今からそのまま王将行くねんで」
「え、そうなんや」
「あと『5分後に折り返します』って言っちゃった」
「なんでそんな凡ミスすんねん」

親戚の待つ駅まで残り5駅です。
一回降りてしまっては約束の12時に間に合いません。それに、駅の喧騒で家で休んでいないのはバレるでしょうし。

「5分後に折り返しますは前言撤回して、王将で電話したら?お昼ご飯食べにきたってことにしてさ」
「いや、ちょっと待って。生理痛で会社休んでる奴、王将行く?」
「あーあ。お姉ちゃんみたいなやつがおるから、生理休暇が浸透せえへんねん」
「働いてないくせに何言うてんねん」
「ぐうの音」
「ぐうの音でたやん」
「出るわな流石に」
「まあじゃあとりあえず駅着いたらトイレでかけたらいいやん」
「トイレで電話かけても駅のトイレの音入らん?『ラーシーラーシーラーシーファー!』って、鶴見緑地線特有のやつ」
「しんどいんやんな?」

絶対音感ええねん、と、特有のやつ?と、しんどいんちゃうんかい、のツッコミを適当に選びながら、色々考えました。


母方の親戚に会いに行くのは久しぶりです。
昔、私が小学生の頃、毎回毎回別れる前に寂しくて号泣して、
「毎回こんなに泣くんやったら、もう会いにくるんやめる?」と母に怒られていたな、なんて思いました。

会うの、怖いな。
なんで怖いんやろう。
会いたくないな。
なんで大好きやのに、会いたくないんやろう。


「なあ、聞いてる?」

姉はまだ困った顔でこちらを見ていました。

「あぁ、ごめん。とりあえずもう着くし、駅で電話するしかないんちゃう」
「いや、そうじゃなくて、お姉ちゃんこの前めちゃくちゃたどたどしいセブンの店員みてさ、珍しくない?鳩の雛と一緒よな、鳩の雛ってすぐ成長するからあんま見たことないやん、あれと一緒で、セブンの店員ってすぐレジうまなるから、セブンの新人あんま見たことない」
「知らんあるある2個言うんやめて、あと、しんどいんやんな?」


会社の電話はなんとかなったそうなので、とりあえず親戚の待つ出口に向かいました。


「久しぶりやんけ、娘たち」

100キロを超える巨漢のおじちゃんは、ガハガハとハンドルを握りながら笑いました。

「王将久しぶりに来たなあ」
「月曜一緒に行ったで」
「とりあえず頼むか、すみませーん、餃子9人前と」
「餃子9人前??」
「すみません、恥ずかしいんであんま大きい声で繰り返さんといてください」
「餃子うま、今強盗入ってきたらこれ持って逃げるわ」
「あらしのよるに出会っても食べてまうわ」
「確かに、この年になって分かる、ガブのすごさ」


「晩飯はどうする?娘たち、何食べたいねん」
「私会社行かなあかんから、17時くらいに出るねん」
「会社行くん?!食べていくと思ってたわ」
「課長に呼ばれてんねん」
「怪しいなあ、えりかと二人になりたいだけちゃうか」
「おじちゃんついていこうか?」
「急にデカすぎる人間連れてきたら浮くやろ」
「浮くとかか?」
「トトロってことにしたらいいやん、課長これ見えるんですか?言うて」
「そしたら後ろで俺もでっかい声で雄叫びあげたるし」
「怖すぎる」
「即SECOM案件やろ」

そうこうしているうちに時間も経ち、そろそろ帰るわ、と二人で腰を上げたタイミングで

「ほんまにいつでも来ていいねんからな」


と、少し真剣な顔で言われました。
姉は嬉しいー!と声を上げて抱きつきました。そんな姉をじっとみながら、私はグッと下唇を噛み締めました。



全部、ずっと、本当は知っていました。


向こうからは連絡してこない理由も、私たちのことを「娘たち」と言う理由も、ずっと私たちのことを気にかけてくれていることも、もう実家がない私たちが、帰る場所が欲しいと思っていることを、知っていることも、全部全部、愛なのに、目を背けていました。

探せば愛してくれる人がいるのに、なんで私は落ち込むんだろう。
なんで目の前の、愛してくれる人から目を背けるんだろう。
可哀想だと思われたくない、思い出を崩したくない、変わったと思われたくない、色んな感情が渦巻いて、
掠れた声で、「ありがとう」と絞り出しました。
私は、姉みたいに、抱きつけませんでした。


姉と別れてから、一人、電車の中で答えを探しました。

いや、違うな、全部ほんとの感情やけど、
きっともっと、醜い答えだ。

多分、分かりました。
自分には帰る家は無く、不幸であると思い込んで、立ち直る努力から逃げるためです。

ズブズブと凹んで、でも私はこういう運命だから仕方ない、と思い込むことによって、落ち込んでる自分を正当化したいだけです。

本当は愛してくれる人が目の前にいるのに。
他人に求めて、自分で自分を助けることを諦めて誰かに縋って、たまに縋ることさえ放棄して


私は愛からもまた、逃げてしまう。


くだらない。


なんて、くだらない人間なんだろう


トボトボ泣きながら(なんで泣いてんねん)駅から家まで歩いていると、LINEが届きました。

面白い



ああ、と声に出ました

そうだな
もっとシンプルでいいな

私がこうだとか、愛だとか寂しいとか

そんなことより、もっとシンプルでいい


私はとにかく明るくて、
楽しくて、
愛に溢れた人に、なりたいんだった。


姉みたいに素直に抱きつけなかったあの日からしばらくたっても、私はまだあの日のままやな〜


金借りてるのに行った一蘭の味集中カウンターのなかで、このことを思い出して、「人って変わらんなー」と思いました。

まあ、変わんないなりに、ちゃらんぽらんなりに、うまくやっていこうや。

まずは、ケツでも振って踊ってみるか〜


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