DAZNの値上げの是非の議論と解約の是非の議論は似て非なるものである

はじめに

2022年1月21日にDAZNの契約料の値上げが発表された。
現在の価格と比べても1.5倍の価格となる大胆な値上げだ。
この値上げに対して様々な意見が飛び交っているが、気になるのはDAZNのやり方を批判するものと別に解約する人のことを批判するものがいるということだ。
今回の件で解約する人に対して、「そもそも適性な値段ではなかったのだから、適性価格になったことに文句を言うのは間違えている。」と言う主張だ。
果たして、これは適切な指摘であると言えるのだろうか?

DAZNに対する批判の理由

今回のDAZNに対する不平不満・批判がどうして起こっているのかというのは、ただ値上げしたからという理由ではない。
多くの主力コンテンツの縮小&ズレた分や手間拡張を続けたにも関わらず、値上げをされたところにある。
まず、サッカーで言えば全盛期はJリーグ・欧州5大リーグ全て・CL・ELも見れていた中、今はJリーグ・リーガ・プレミア・セリアに欧州中堅リーグの限られた試合、そして需要の少ない代表戦。
顧客の多くが望んでいたCLの放映権に至っては事前に交渉状況や確定情報のアナウンスが大々的にされることもなく、多くの人の期待を裏切ることになった。

そのような経緯があるにも関わらず、国内で人気が下がった上に放映料が上がったせいで各TV局が手放した代表の放映権を獲得。
更に言えばダーツやeSportsと言った限られた需要のコンテンツにも手を出していった。
これがどういうことかと言うと、「事前に提供されていたコンテンツにお金を払っていたのに、それらコンテンツは縮小されていって、自分にとっては興味のないコンテンツに自分が払ったお金が使われている状態」が顧客の中に出来ているということである。

もしも同じような事例が他に起きたら?

このDAZNのやり方が他の場で起きたらどうなるだろうか?

例えるなら、ある人が
「月額2000円でいつでも美味しいお寿司が満腹食べれる店(マグロやサーモンが特に人気)」
に通っていたとする。
その人は寿司が大好きで、特にマグロが大好きであったためにその店に通うことにした。
しかし、ある日その店に行くとサーモンがなくなっていた。
サーモンも好きではあったが、一番好きと言うわけではないから契約は続けた。
しかし、またある日に行くと今度はマグロまでなくなってる。
それに関しての説明は事前に一切されていない。
そのくせ、メニュー表を見ると高級タピオカドリンクとかパスタとかに手を始める。
これに対して客は不快に思うはずだ。
しかし、マグロやサーモンは食べられずとも、寿司が好きであるその人は
「まぁ好きな寿司は安く食べられるから良いか」と通い続けてきた。
そんな中で店から
「来月からの代金は3000円になります。」
と言われると、流石に何を言ってるんだ?とキレられるのは当然の流れであろう。
魚の値段が上がったからなのか?これから再びマグロやサーモンの提供を始めたいからだろうか?
このような疑問が浮かぶものの、詳細な説明がない。

この状況を客の視点になって考えれば

①こちらが本来食べたいものを食べられなくなった
②本来、食べたいものとは違うものばかり充足していく
③契約料について理由不明の値上げを言い渡される。
④料金プランが他に提示されない

この状況で契約を続けないという発想が出るのは自然な流れで、契約を切る人が悪いわけではない。

批判されるべきは客の価値観なのか

ここで「本来、寿司が2000円で腹一杯食えると思ってる価値観のが間違い」と言う客が出てきたとする。
これはある意味間違ってはいない意見ではある。
本来、毎月好きな時に腹一杯の寿司を食べようと思ったら2000円では絶対に無理なのは事実だ。
ただ、その「腹一杯に寿司を食べる権利は2000円が適性価格である」という価値観を最初に持っていたのは店であって客ではない。
この価格が適正であると判断をしたのは店であり、客は言われた金額で買っただけである。
店が2000円で売っているものを3000円で買う人なんて金持ちすぎて金銭感覚がおかしくなった人しかいないだろう。

DAZN、今後はどうなる?

今回の例ではそれぞれ
店がDAZN、客はユーザー、寿司はサッカー中継、マグロやサーモンがCLや欧州5大リーグ
高級タピオカドリンクが代表戦で、パスタがeSportsやダーツ中継
に当てはめることができる。

この中で値上げの理由が不透明であるのが最たる問題の一つである。
値上げに従って契約したところでコンテンツの拡充が我々の望み通りに行われるのかわからない。

この状況で契約を続けることが絶対的に正しいのかというのも難しい。
まず、2000円のものが3000円になったことで1人解約者が出たとする。
その1人分(2000円)の損失を踏まえて値上げまえと同じだけの収入を得るのは実は大変なのである。
最低でも解約者1人につき2人は契約を続けてもらう必要があるからだ。
さらに言えば、値上げ前に比べて収入を上げようと思ったら解約者1人につき契約続行者が3人いる必要がある。

DAZNは学生需要が高いコンテンツである。
つまり、支払い能力が低い人も顧客の層に入っている中で契約料1.5倍というのは攻めた価格設定ではないだろうか。
正直、メインコンテンツを削ぎ落としながら需要の少ないコンテンツを拡充させた上で値上げをしたサービスに新規顧客がつくかというとかなり難しい話である。
そんな中で契約を続けてもメインコンテンツが戻ってくる見込みがあるか・今見ているコンテンツも消滅しないかと言われると判断できないというのが現状。
その他者の解約状況からくる不安感も余計に解約を助長させる理由となり得る。
そして、これはサッカー民に限らず全てのユーザーに言えることなのだ。
いつ野球中継で自分の見たい球団が見れなくなるか、いつ自分が見たいマイナースポーツの中継が見れなくなるか。
それが全くわからなくなってしまっているのである。

そんな現状で値上げの是非を問うのはわかるが、解約の是非を問うのはナンセンスである。
解約を検討するものに批判をする人は自分が愚か者であるということを自覚する必要がある。
ここで議論されるべきはDAZNの手段の是非であって、ユーザーの動向の是非ではない。

おわりに

今回の値上げ騒動も携帯キャリアからの通知から発覚したようにDAZNのやり方は非常にお粗末である。
そんなDAZNがまだ顧客を満足させることができるかどうか。
このまま、かつての黒船DAZNの復興・発展が達成されるかどうか。
今後のDAZNの動向は注視する必要があるだろう。

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