【論文紹介】UGRec: Modeling Directed and Undirected Relations for Recommendation

文献情報

タイトル:UGRec: Modeling Directed and Undirected Relations for Recommendation
著者:Xinxiao Zhao, Zhiyong Cheng, Lei Zhu, Jiecai Zheng, Xueqing Li
会議:SIGIR 2021

概要

Knowledge graph(KG)上の有向枝で表現される関係(「ユーザがアイテムを購入した」「アイテムがカテゴリに属している」など)に加えて、無向枝で表現されるアイテムの共起関係(「一緒に閲覧された」「一緒に購入された」など)も考慮してユーザとアイテムのベクトルを求める推薦手法UGRecを提案。著者によるTensorFlowでの実装がGitHubで公開されている。

従来研究との差異

有向枝で表現されるKGだけを使った推薦手法は数多く提案されているが、無向枝で表現されるアイテム間の共起も同時に考慮した手法はほとんど提案されていない。両者を考慮した研究として、2018年に発表された「Learning over Knowledge-Base Embeddings for Recommendation」がある。この研究では、アイテムi1とi2がある関係rのもとで共起している場合に、TransEを使って「i1のベクトルにrのベクトルを足したものがi2のベクトルになる」と「i2のベクトルにrのベクトルを足したものがi1のベクトルになる」を同時に満たそうとするため、rをゼロベクトルにして、i1とi2のベクトルを同じにするような不適切な解に収束する可能性がある。それに対して本論文では後述するように、関係ごとにアイテムのベクトルを超平面に射影して、その超平面上で共起するアイテムのベクトル同士を近づけるようにすることでこの問題を解決している。

手法

有向枝で表現される関係のモデル化、無向枝で表現される関係のモデル化、ユーザへの推薦結果の生成、の3つに分けて提案手法を説明する。提案手法の全体像は下図のようになっている(図は論文より引用)。

有向枝で表現される関係のモデル化

図の「Directed Relation Spaces」にあるように、以下の3種類の関係を扱うとする。

  • Belong to:アイテムとカテゴリまたは製造業者の間の関係

  • Made by:アイテムと製造業者の間の関係

  • Buy:ユーザとアイテムの間の関係

アイテム、カテゴリ、製造業者、ユーザはそれぞれ同じd次元のベクトルで表現され、TransDを用いたモデル化を行っている。例えば「Buy」の関係であれば、ユーザとアイテムのベクトルを「Buy」に対応するベクトル空間に射影する。ユーザuがアイテムiを購入した場合、その射影先の空間でのuのベクトルに「Buy」という関係のベクトルを足すとiのベクトルに近づくようにベクトルと射影用の行列を学習する。
ただし、同じアイテムを購入したユーザが複数いる場合、購入の動機はユーザによって異なるので、attentionの仕組みを取り入れることで各ユーザの各動機に対する重みを考慮している。ユーザuがアイテムiを購入するときの動機を表すattentionはd次元ベクトルで表され、「Buy」という関係のベクトルとのアダマール積をとったうえで、上記の「uのベクトル+Buyのベクトル=iのベクトル」を「uのベクトル+attention反映済みBuyのベクトル=iのベクトル」に変えて学習する。

無向枝で表現される関係のモデル化

図の「Undirected Relation Hyperplanes」にあるように、以下の2種類の関係を扱うとする。

  • co-view:一緒に閲覧されたアイテム間の関係

  • co-buy:一緒に購入されたアイテム間の関係

アイテムベクトルは、それぞれの関係に対応する超平面に射影される。例えば「co-view」に対応する超平面上では、アイテムi1とi2が一緒に閲覧されている関係にあれば、その超平面上でのi1のベクトルとi2のベクトルが等しくなるようにアイテムと関係のベクトルを学習する。
ここでも、2つのアイテムがどういう観点で一緒に閲覧されたのかはアイテムのペアごとに異なることを反映するために、attentionを導入している。

ユーザに対する推薦結果の生成

ユーザuが対象の場合、uの学習済みベクトルに、attentionを考慮した「Buy」のベクトルを足した位置に近いアイテムほど推薦に適しているとみなしてuへの推薦結果(ランキングされたアイテムのリスト)を生成する。

実験

公開されているAmazonの購買データセット(Games、CDs & Vinyls、Movies & TVsの3カテゴリ)を使用。有向枝で表現される関係と無向枝で表現される関係は手法の説明であげた例と同じものを使用(データセットに含まれている)。HRとNDCGで従来手法を上回った他にも、有向枝と無向枝の両方の関係を使っているため購入アイテム数の少ないコールドユーザに対する精度も高いことを示した。

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