【論文紹介】Fighting Mainstream Bias in Recommender Systems via Local Fine Tuning

文献情報

タイトル:Fighting Mainstream Bias in Recommender Systems via Local Fine Tuning
著者:Ziwei Zhu, James Caverlee
会議:WSDM 2022

概要

アイテムを消費するユーザには、消費傾向の似たユーザが多数いるmainstreamユーザと、類似ユーザがほとんどいないnicheユーザが存在する。本論文では、一般的な推薦手法ではmainstreamユーザに比べてnicheユーザの方が推薦精度が低くなることを示したうえで、nicheユーザの推薦精度を改善する手法を提案している。提案手法のコードはGitHubから利用可能

従来研究との差異

ユーザに対する推薦精度のバイアスを扱った研究では、ユーザの年齢や性別を対象とすることが多かった。ユーザのmainstream度合いを対象とした研究としてWSDM 2021の「Leave No User Behind: Towards Improving the Utility of Recommender Systems for Non-mainstream Users」があるが、バイアス解消のためにユーザのレビュー文などの付加情報を必要としていた。本論文の手法では、付加情報を使わずにユーザのアイテム消費履歴のみからバイアスを解消する。

手法

提案手法の全体像は下図のようになっており、(1) ベース推薦モデルの学習、(2) 各ユーザの類似ユーザ抽出、(3) 推薦モデルのファインチューニング、から構成される(図は論文より引用)。

(1) ベース推薦モデルの学習

使用するモデルはMFやBPRなど何でも良いが、本論文では深層学習ベースのモデル(VAE)を使用。普通に学習するとmainstream度の小さいユーザに対する推薦精度が低くなるため、損失関数を工夫する。
外れ値を検出するための深層学習ベースの既存手法(DeepSVDD)を使って、各ユーザのmainstream度を計算。推薦モデル学習時には、各ユーザのロスが計算されるが、mainstream度の小ささに応じてユーザのロスの重みを大きくすることで、学習時のそうしたユーザの重要度を高める。

(2) 各ユーザの類似ユーザ抽出

各ユーザは消費したアイテムが1、未消費のアイテムが0の値を持つベクトルで表現される。ユーザuの類似ユーザ集合を抽出するために、このベクトルを拡張する。具体的には、uのベクトルとJaccard係数の高いベクトルを持つユーザ集合を求め、それらのユーザの平均ベクトルと、uのベクトルの線形和をuの拡張ベクトルとする。
全ユーザの拡張ベクトルを求め、uの拡張ベクトルとの類似度が閾値以上のユーザをuの類似ユーザとして抽出する。

(3) 推薦モデルのファインチューニング

uとuの類似ユーザだけを使って、(1)の推薦モデルを適用することでuのベクトルを更新する。

実験

ML1M、Yelp、Epinionsの3種類のデータセットを使用。nDCG@20で評価。提案手法を使うことで、nicheユーザに対する推薦精度が改善され、かつmainstreamユーザの推薦精度も改善された。
「(1) ベース推薦モデルの学習」だけを使っても、nicheユーザの推薦精度は改善されるが、その反動でmainstreamユーザの推薦精度は悪化していたので、提案手法のファインチューニングがユーザ全体の推薦精度の改善に貢献していた。

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