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MSR Internship アルムナイ Advent Calendar 2020 (15日目)

産業技術総合研究所(産総研)のです。「Microsoft Research Internship アルムナイ Advent Calendar 2020」の15日目の記事です。お声がけくださった欅さん(5日目の記事のご担当)ありがとうございます。私は博士後期課程の1年目にあたる2012年4月から8月の4ヶ月に渡ってMicrosoft Research Asia(MSRA)でのインターンに参加しました。

インターン前

私が当時所属していた京都大学の田中研究室では、私がMSRAに行く2年前に加藤誠さん(現筑波大学准教授)が、1年前に山本岳洋さん(現兵庫県立大学准教授)がいずれも博士後期課程でMSRAのインターンに参加されていました。加藤さんは私の2学年上で、山本さんは3学年上だったのですが、田中研で私と3学年差以内の博士後期課程の学生はこの二人以外にいませんでした。後にして思えば、お二人が極めて優秀な学生だったのでMSRAに行かれていたわけですが、その非常に偏った二つのサンプルを見て、博士後期課程への進学は決めていたもののまだ修士2年の学生だった私は厚かましくも「この研究室はドクターに進んだらMSRAに行くものなんだな」ぐらいに思ったのがインターンを意識した最初のきっかけでした。

その後、MSRAでのインターンについて色々と調べたり教えてもらったりする中で、MSRAで研究をしてみたいという思いが強くなり、公野さんが研究室に来られたときに教授から私のことを紹介していただいてその意思を伝え、博士後期課程に進学して半年後の2012年4月からのインターンが実現しました。インターンを開始するにあたって必要となる書類の作成や大学の事務手続きの作業は、加藤さんと山本さんが完璧に整備してくださっていたので、全く苦労しませんでした。本当にお二人には頭が下がります。

海外での長期滞在の経験がなかった私にとって、MSRAでのインターンは一つの挑戦であったわけですが、先のお二人が前例を作ってくれたことで、挑戦することが当たり前の環境になっていたことを非常にありがたく思っています。そうした環境がなかったら、自分の性格を考えると、MSRAのインターンのことを知ったとしても「手続きが大変そう」とか「ドクターでもう少し研究の経験を積んでから申し込もう」といった言い訳をして、結局行かなかっただろうなというのが正直なところです。

学生時代の同じ様な体験として、IPAの未踏IT人材発掘・育成事業(未踏ユース)への応募があげられます。当時の田中研では、山本さんと加藤さんに加えて、私の4学年上の山本祐輔さん(現静岡大学講師)と1学年上の方1名も未踏に採択された経験があって、「未踏に挑戦するのは当然」という環境が出来上がっていました。これは、当時最も近くで指導していただいていた中村聡史先生(現明治大学教授)が、指導されるほぼ全ての学生に未踏への応募を奨励されていたことが大きな要因の一つでした。当時の私は決して実装力が優れていたわけではなく、こうした環境でなければ応募していなかったと思うので、中村先生には非常に感謝しています。結果的に未踏に採択され、MSRAのインターンと並んで学生時代の経験の大きな財産となりました。

インターン中

インターンでは情報検索がご専門の酒井哲也さん(現早稲田大学教授)にメンターとなっていただきました。酒井さんがオフィスに出勤されている日は毎日、対面で研究の議論をしていただきました。そのことを当時もありがたいと思っていましたが、自分も研究者としての活動を重ねるにつれて、酒井さんのようなトップレベルの研究者と毎日議論させていただいていたことがいかに贅沢な環境だったかを改めて実感しています。(そんな恵まれた環境にも関わらず、私は北京の油が多めの料理がどうしても体に合わず食事で苦労していて、酒井さんが行きつけの和風居酒屋に何度か連れて行っていただいたときは、酒井さんとの会話もそこそこに久しぶりの和食にひたすら集中していました。。。)そうした環境のお陰で、インターン中に取り組んだ成果をNTCIR-10とAIRS'13で発表することができ、研究の進め方や論文の書き方についても大きく成長できました。

インターン後

MSRAでのインターンが終わってから約2年後の2014年9月に学位を取得し、半年の学振PDを経て、産総研のメディアインタラクション研究グループの公募に応募して2015年4月に採用され、現在に至ります。このグループでは基礎研究に取り組んで論文を書くだけではなく、基礎研究で開発した技術を使って人々のコンテンツ鑑賞や創作の支援をするために、Webサービスの公開や企業と共同での製品開発に多数取り組んでいることに感銘を受けたのが応募を決意した理由のひとつでした。学位を取得したばかりの私にとっては、基礎研究を発展させてユーザの支援まで取り組むというのは魅力的であり挑戦的でした。学生のときは挑戦することが当たり前の環境に偶然居合わせたおかげで、結果的にそれが大きな成長へと繋がりました。その経験があったからこそ、自分にとって挑戦的なことが当たり前に行われている環境に今度は自分から踏み込んでみようという決心がつきました。その甲斐あって、産総研に入所後は基礎研究の成果に加えて、以下のようなユーザ支援のためのWebサービスやアプリケーションの開発にも携わることができています。

Lyric Jumper:歌詞トピック解析技術に基づく歌詞探索サービス。株式会社シンクパワーとの共同研究。歌詞トピック推定モデルの提案・実装を担当。
Kiite:自分の好みの楽曲と出会える音楽発掘サービス。株式会社クリプトンとの共同研究。音楽推薦モデルの提案・実装を担当。
NicoBox:音声の再生に特化したニコニコ動画のプレーヤーアプリ。株式会社ドワンゴと連携。「おすすめ自動再生機能」のための音楽推薦モデルの開発を担当。

おわりに

私の場合、もちろん最終的には自分の意思でMSRAのインターンに行くことを希望したわけですが、一番最初のきっかけは偶然恵まれた環境にいられたことでした。MSRAのインターンは、挑戦することが当たり前の環境にいることの重要性とありがたさを私に気づかせてくれた点で、人生の大きなターニングポイントのひとつとなりました。理想的には、周りの環境とは関係なく自分で道を切り開くべきなのでしょうが、現在学部や修士の学生の中には「MSRを含めた海外インターンに行きたいという希望はあるけれど、やっぱりハードルの高さを感じてしまう」と感じておられる方も少なくないと思います。そんなときは「海外インターンに行くのは当然」という環境が既に出来上がっている研究室を進学先の候補として検討してみてはいかがでしょうか。自分の希望を叶える下地が出来上がっているところに進むことで、自分のモチベーションを高められるだけでなく、周りの人のサポートを受けられるお陰でハードルを下げることもできます。さらに、自らも海外インターンに行くことで、その研究室の「挑戦するのが当然」という環境が受け継がれ、その先研究室に入ってくる学生のためにもなることでしょう。

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