見出し画像

#好きな番組と、その頃のこと

この文章は、スカパー!とnoteで開催するコラボ特集の寄稿作品として主催者の依頼により書いたものです。

「#好きな番組」というテーマなのですが、たくさんあって絞りきれないので、その中でも僕が子どもの頃に脚本という仕事を認識したきっかけや、その後の人生に影響を与えてくれた番組について書いていきたいと思います。

①連続ドラマ「振り返れば奴がいる」(1993年1月 フジテレビ)

中学一年生の冬、連続ドラマをしっかりと見始めた頃だと記憶しています。
主演の織田裕二さんと石黒賢さんが大病院を舞台にバチバチする物語ですが、あまりに面白いため「誰が作っているんだろう」と、脚本家という職業に初めて注目した作品でもあります。本作を書かれた三谷幸喜さんは初めてゴールデン帯のドラマを担当されたそうで、そのことも強く印象に残っています。

ドラマは全体的にシリアスな内容ではあるものの、鹿賀丈史さん演じる外科部長が、脳外科の人たちへお土産としてカニ味噌を贈ったり、西村まさ彦さん演じる平賀先生が、紙袋に入った賄賂を隠そうとしてロッカーに押し込もうとするも、床に札束をぶちまけて盛大にバレるシーンなど、コメディ要素も多々あったと記憶しています。

②連続ドラマ「彼女たちの時代」(1999年7月 フジテレビ)

「ノストラダムスの大予言、はずれたじゃん……」と、全国の子どもたちが拍子抜けしていた、1999年の7月頃に放送していたドラマです。僕は大学生になって上京し、演劇サークルに入っていて、演劇をやりながら漠然と将来は脚本の仕事をしたいな……と思っていました。とはいえ、どうやってなればいいか分からず、他にやりたいことも特になく、一人暮らしの暗い部屋で見ていたドラマが「彼女たちの時代」でした。

岡田惠和さんの脚本で、深津絵里さん、水野美紀さん、中山忍さんが出演されていました。全編通して上質な会話劇が心地よく、先行き不透明な人生に悶々とする彼女たちに、自分の状況を重ね合わせて見ていました。

③連続テレビ小説「あまちゃん」(2013年前期 NHK)

本作の脚本は宮藤官九郎さんですが、宮藤さんとは2006年に一瞬だけ接点があって、僕が「大人計画フェスティバル」という廃校を使った文化祭のようなイベントで、一人芝居「正名僕蔵の大運動会」の作・演出として参加した時、近くの教室でやっていたのが「宮藤官九郎の“あの娘おばけがダンクシュート決めたらどんな顔するだろう屋敷、略しておばけ屋敷”」でした。夕暮れ時の教室で、校庭から流れてくる星野源さんのライブに耳を傾けながら、お化けに扮した宮藤官九郎さんと腕相撲をするという貴重な体験をしました。

その後、僕は2008年にテレビドラマの脚本家としてデビューするのですが、それから2013年までの五年間は鳴かず飛ばずの時期でほとんど仕事はなく、昼間は駒沢のバッティングセンターで豪快に空振りし、夜は酒を飲んで腐っていた頃に放送していたドラマが「あまちゃん」でした。

ドラマの面白さは言うまでもないことですが、あの時、僕と腕相撲してくれた宮藤官九郎さん……と思い出しながら、改めてテレビドラマの脚本とは一体どんな作りになっているのか、オンエアされたドラマとシナリオ本を見比べたりしながら勉強したのを覚えています。

④ドキュメンタリー「ドキュメント72時間」(2006年~現在 NHK)

実際、脚本家として仕事をするようになってからよく見るのはドラマよりもドキュメンタリー番組が多く、中でもNHKの「ドキュメント72時間」は、好きな番組です。ある場所にカメラを据えて三日間、通りかかる人にインタビューして人間模様を追うシンプルな番組です。

毎回、自分の書くドラマには10人~20人ぐらいのキャラクターが登場するのですが、それぞれの年代や性別、性格や話し方を書き分けるのはとても大変で、油断するとみんな似たような感じの口調になってしまいます。

そうならないためにも、色々な年代の人たちの話し方や思考などを普段からたくさん見て、聞いて、観察して、自分の中にストックしていく必要があって、ドキュメンタリーを見て「作りものではない」言葉にできるだけたくさん接するようにしているのです。

個人的に好きな回は「大病院の小さなコンビニ」「札幌・サンドイッチ店 24時間営業は続く」「沖縄 追憶のアメリカン・ドライブイン」「真冬の津軽の列車にて」「どろんこパーク 雨を走る子どもたち」「海が見える老人ホーム」など、たくさんあります。

フィリピン・パブを舞台にした回では、昼間は工事現場で働いて、夜は飲みに来ていると言う客の高齢男性に、ディレクターが「つまり、現場監督さんってことですか?」と聞き、「あ、うん、まあ、そうだね……」と、戸惑いながら答える彼の雰囲気に、人としての味を感じました。

お気に入りのホステスの隣でどこかバツが悪そうな、でもちょっと仕事の誇りが垣間見えるような、絶妙な感情が見えた気がしたのです。彼が実際に現場監督だったかどうか、真実は分かりませんが、こういうところにキャラクターや台詞のヒントが散りばめられていると感じました。

⑤連続ドラマ「おっさんずラブ」(2016・18・19・24年 テレビ朝日)

真っ白な愛が降り積もる

自分の書いたドラマの中で好きな番組を挙げるとしたら「おっさんずラブ」でしょうか。この番組に限らず、脚本というのはドラマ制作チームという大きな船艦の隅っこでひっそりと航路図を書いているような仕事なのですが、自分でも予想のつかない旅になり、様々な経験をさせてもらった作品です。2024年の1月にはおっさんずラブ -リターンズ-という続編も始まりますので、是非よろしくお願いします。最後は宣伝でした。

地上波だけではなくNetflix, U-NEXT, Hulu, Amazon Prime Videoなど配信チャンネルにも好きな番組はたくさんあるのですが、またいつか書く機会がありましたら、その時にでも。

※「#好きな番組」のその他の作品や、スカパー!×noteのコラボ特集の詳細はこちらでご覧いただけます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?