桜フラペチーノ Q

 登場人物

 鶯谷うぐいすだに 花散里はなちるさと大学 文芸部 四年 部長(♂)
 黄桃おうとう 同 四年(♂)
 花咲はなさき 同 四年(♀)
 千本ちもと 同 四年(♀)
 繁縷はこべら 同 三年(♀)
 羽場うば 同 二年(♂)
 

甲森こうもり宇和島うわじま カフェでおしゃべりする仲よしの女子高生





「それで?いったいなんのつもりなんですか」
カフェのテーブル席で、甲森こうもりはふんぞり返って言った。
「いきなり電話してきたと思ったら、返事も待たずに、話を聞いてほしいだなんて。まったく、こちとらせっかくの春休みだってのに」
「こちとら、って何? こち亀の西版みたいな?」
 向かいに座る宇和島うわじまは、相手の口からほとばしる文句を聞き流す。
「だいたい、そんなに言うなら、無理して来てくれなくてもよかったのに」
「はあ? 誘っておきながらその言い草はなんですか。せっかくの春休みだってのに。私にだって予定の一つや二つあるんですよ」
「その割には私より早く着いてたよね」
「待たせるのは失礼ですからね」
「ふうん。ていうか甲森さんの私服見るのはじめてかも。そんな感じなんだね。その帽子、なんて言うんだっけ。鳥打ち帽? 似合ってるよ」
 全身黒のコーデの中、帽子だけがちょっとアクセントになっていた。
「帽子は必須ですよ。顔を隠す面積が増えますからね。可能ならマスクだって年中つけたいくらいです」
「つければいいじゃん」
「夏が暑いでしょう。誰が理由もなくそんなことするもんですか。で、なんだってんですか。せっかくの春休みに」
「せっかくの春休みだってのはわかったよ」
 宇和島は苦笑する。こちらは袖が膨らんだ真っ白のブラウスにパステルイエローのスカートという春めいた格好だった。「実は、お知恵を拝借したいと思って」
「え? 羊毛高校のミネルヴァこと私の知恵を?」
 ミネルヴァはこうもりじゃなくてふくろうだったっけ、ていうか相変わらずおどおどした態度のわりに自己評価が高いな、と思いつつも、ここで乗っかっては話がいつまで経っても堂々巡りだと判断し、宇和島は、「そーそー」と流す。
「ほーほー」ふくろうみたいな相槌が返ってくる。
 窓の外、街路樹の桜の枝を離れた花びらが、風に乗って飛んでいく。二人が住む町では、ちょうど今、桜が満開を迎えている。宇和島がこの店に来る途中にとおった公園も、花見客でにぎわっていた。桜のにおいがまじった空気が、これぞ春という感じがして、宇和島は好きだった。そういえば以前、春の空気ってどことなくパステルな感じがする、という話を雰囲気がブルベのクラスメイトにしたら黄砂と花粉のせいだろとにべもない返事が返ってきたっけ。
 期間限定の桜フラペチーノを飲みながら、宇和島は「で、話っていうのはさ」と言う。
「いやちょっとちょっと。まだ話を聞くとは」
「どうせ聞いてくれるでしょ。甲森さんのことならわかってるんだから」
「あなた、私とそんなに交流ないですよね」
 相手はごねているが、このまま行けば話を聞いてくれることが宇和島にはわかっていた。浅めのつき合いでも、彼女が押しに弱いことは知っている。そして宇和島は押しが得意である。要するにこの会合、じゃんけんみたいに出す前から結果がわかっているのだった。
「私の幼なじみが、今春休みでこっちに戻ってきててね。羽場うばさんって言うんだけど。あ、幼なじみって言っても、私より五つ年上でね。今年、花散里はなちるさと大学の二年生なの」
「はあ」
「その人が、所属してるサークルでごたごたに巻き込まれたみたいでさ。話を聞かせてもらったんだけど、私には手に負えなくて。だからミネルヴァさまのお力を借りたいと思ってさ」
「お力と言われましてもね」
 相変わらず面倒くさそうな態度だけど、それでも相手が興味を示したのはわかった。この機を逃してはいけないと、宇和島は、「ね。先週くらいに、雪が降ったでしょ?」と続ける。疑問文にするのは相手に返答を強要するおなじみのテクニックだ。
「ああ。ありましたね」
 桜フラペチーノをストローで吸い吸い甲森は言う。宇和島とおそろいのチョイスだが、宇和島がトールサイズだったのに対し、こちらはおごってもらえるのをいいことにベンティだ。
「もう四月だっていうのに、一日だけ降った日が。この辺りはまだ咲く前でしたが、すでに咲いてた地域は、散るのがいくらか早まっちゃったでしょうね。まあ桜なんて咲こうが散ろうが興味ないですけど。そういえば昔から思ってたんですけど、サクラサクの対義語がサクラチルっておかしくないですか? 散る前に咲けてるじゃないですか。正確さを期しつつ文字数を揃えるならサクラユクでしょう」
「じつはさ」宇和島は急に早口スイッチが入った相手を無視して本筋の話をする。「その人が巻き込まれた事件が起きたのが、その日なんだ」

 羽場が文芸部の部室に入ると、彼以外の五人はもう全員揃っていた。
「遅い」部長の鶯谷うぐいすだにが、神経質そうな顔に不満を浮かべて言う。
「す、すみません」
 万年筆の底で、こんこんとテーブルをたたきながら、「たるんでるなあ、羽場」と続ける。
「先輩たちを差し置いて重役出勤とはね、まったく大したタマだよ」
 鶯谷の隣に座る黄桃おうとうが茶化す。背の低いぽっちゃり体型で、顔のパーツはどれもまるっこく、どこかゆるキャラめいている。
 本人もそれを自覚しているのか、文芸部のマスコットキャラを自称しているが、部員からの理解は得られていない。
 身を小さくしながら羽場は自分の席に着く。部室の中心には、長机を四つ、四角く並べてある。ここが自分の席だと決まっているわけではないが、先輩たちが皆、座る席が同じのため、自然、羽場も毎回同じ席に座っていた。
「羽場くんったら、おねぼうさんなんだから」右に座る繁縷《はこべら》が、ビロードのような声で話しかけてくる。「夜遅くまで何をしていたの? またアニメの一気見?」
「いや。けっこう早めに寝たはずなんですが。最近暖かくなってきたでしょ。そのせいかどうも眠りが深くて」
 羽場の言い訳を聞いた繁縷は、呆れたようにため息をつく。アンニュイとはきっとこういうことを言うのだろう。気だるげな雰囲気だ。
 また文句を言われたらたまらないと、「あ、あー、先輩。今日のネイルもすごい凝ってますね」と、机の上に置かれた彼女の手を指さした。彼女はネイルが趣味らしく、見るたびにデザインが変わっている。爪に直接絵を描くネイルチップよりも、爪形のチップを上から貼るネイルチップのほうが好みらしい。羽場くんにも今度やってあげる、と言ってくれているが、未だに一歩が踏み出せずにいた。
 今日のネイルは黒を基調としたシックなデザインだった。
「いいでしょ。今は日中だからわからないけど、これ蛍光塗料が入っててね、夜になると光るんだよ」
 爪が光って何がいいのか羽場にはとんと見当もつかなかった。
「魔女みたいだよな」
「は? 黄桃先輩、呪いますよ」
「こらこら私語は慎むように」
 鶯谷はぴしゃりと言ってから、
「全員揃ったし、早速、今日の話し合いに移ろう」
 と一同を見渡した。
 場所は花散里大学の部室棟一階の文芸部の部室。ここにいる六人はいずれも文芸部のメンバーだ。
 春休み真っ盛りの三月半ばに、こうして集まった理由は、来年度のサークルにおける方針について話し合うためだが、それはあくまで表向きの理由で、その実はゴールデンウィークの旅行の計画を立てるためである。
 年に一度、部誌を発行するほかにこれといった活動もないため、合宿とは銘打っているものの、実質ただの旅行である。文学賞を狙うようなガチ勢もいない。いやいるのかもしれないが、羽場の知る限り、この部室で誰かが文字を書いている場に居合わせたことは数えるほどしかない。
 読んだ本の感想を話し合ったりはするが、いいよね~、尊いよね~、関係性だよね~、みたいなものがほとんどだ。部室にある蔵書だってさほど多くないし、漫画を読んだりゲームしている者もいる。
 部室の奥の扉の向こうに、稀覯本がしまわれている、ということもなく、そこはただの物置で、これまでの旅行、もとい合宿で使った釣り竿と魚籠びくやら、ピッケルやら、芝生に敷くピクニックシートやら、木彫りの熊やらが、雑多に詰め込まれているだけだ。
文芸部∽旅行サークル、そんな式が成り立ちそうな、緩い集まりである。


 話し合いの結果、旅行先は長野に決定した。三泊で、途中、登山もすることに。
 意外と議論が紛糾したため、細かい旅程は翌日決めることとなった。
 羽場が帰り支度をしていると先輩の千本ちもとが近づいてきて、「ね、ね、羽場くん。帰りに本屋よってくけど、羽場くんも来ない?」
 と誘ってきた。森ガール系の風貌から受ける印象を裏切らず、彼女はハンドメイド系の雑貨が好きらしく、休日はあちこちのマルシェに赴いているという。
「嫌ですよ。どうせ荷物持ちでしょう」
 羽場の学年は彼一人だけで、一番下っ端なので、ていのいい召使い役にされがちなのだ。
「本当にいいのかな。花咲はなさきちゃんも来るんだけど」
「あ、行きます」
「露骨すぎるー」
 どす、と脇腹にパンチを見舞われた。痛みはたいしたことないが、うぐ、とうめいておく。
 千本は料理の本が見たいという。「ほら、さっき、五月に山に登るって話が出たでしょ。山道の途中でお弁当食べたら気持ちいいかと思って」
「料理、上手なんですか?」
「これから上手になる予定」
「へえ。じゃあ、その時を楽しみにしてますね」
「いいけど、お弁当を食べたきゃお金ちょうだいね」
「ええ? 課金制ですか?」
「当たり前じゃん。こんな美女の手料理をロハで食べられると思うだなんて甘いよ」
「甘いですか」
「甘いね。羽場くん、その考えは、お母さんの卵焼きくらい甘いよ」
 びし、と人差し指をつきつけてくる。指についているパールホワイトの指輪は、去年の秋に文芸部で京都に行った時、ハンドメイドのお店で入手したビーズ製のものだ。
「卵焼きって。それは家庭によると思いますけど」
「うちは甘々だったんだよ」と千本。「とにかく、作り手への敬意を払いなさい」
「そ、そんなあ」
 と嘆いてみたものの、材料費などを考えてみれば、いくらか払うほうが、筋がとおっている気がする。それこそお弁当の蕗みたいに。
「ほら、花咲ちゃんも行くよ」
 奥にいた花咲に、千本が手招きする。
「あ、うん。ちょっと待って」
 花咲は冷蔵庫の前で水分補給をしていたところだった。
 切れ長の瞳に、華奢な体型、すらりとした立ち姿に、メタルフレームの眼鏡もあいまって、どことなく秘書めいた雰囲気を漂わせているが、実は子供好きの一面もあるという。羽場なんかは去年の四月、入部早々そのギャップにころりとやられてしまった口だ。
 花咲は飲んでいた炭酸水を冷蔵庫にしまった。その際、正面側にオレンジ色の缶が三本並んでいるのが羽場の目に入る。
「ほらほら、早く早く」千本が急かす。
「ちょっと待ってってば。いま準備するから」
 花咲はそう言って、手早く、眼鏡拭きで、眼鏡のレンズをみがく。
「いい加減、コンタクトにしたらいいのに」千本が言う。
「コンタクトは怖いから絶対に嫌。少なくともわたしの目が黒いうちは」
「じゃあカラコンも駄目かあ」千本が微妙にずれた返事をした。
「ていうかね、どうしてゲームをスマホにやりたい放題のチモっちや黄桃くんが裸眼で、ゲームなんて全然やらないわたしだけメガネっ子なのよ。世の中、不公平すぎない?」
 彼女がぼやく。文芸部の連中は不思議と皆、視力がよく、花咲以外は眼鏡もコンタクトレンズもしていない。そのことが面白くないのだろう。
 ちなみにチモっちは千本のあだ名だが、そう呼ぶのはサークル内で花咲だけだ。
「レーシックとかはどうですか」
 羽場の提案は、愚問ね、と鼻で笑われた。「水晶体を直接みがくだなんて、コンタクト以上に怖いじゃないの」
 話していると部室のドアが開き、部長の鶯谷が入ってくる。
 「お、まだいたのか」
 言いながら、自分の指定席に着座する。
「鶯谷くんもどう、本屋」
「せっかくだけど遠慮しておくよ。今はちょうど読みたい本があるからな」
 にべもなく言って、机の上で開いていた分厚い本の表紙をこちらに向ける。海外のエンタメ小説だ。
「家に帰ってから読めばいいのに」鶯谷はここからバスで二十分程度のところに一人暮らししている。
「家だと集中できないんだよ。隣の部屋のお姉さんが、このところゲーム実況配信をはじめたみたいでさ」
 机の上には本の他にも、お菓子やお茶のペットボトルが置かれていた。完全に腰を据えるつもりでいるようだ。横に置いてある山の名前がついたメーカーの万年筆は成人の記念に買ったものらしい。よほど気に入っているようで、外出する時も、筆記具はこれしか持ち歩かないようにしているそうだ。もっともそれで小説やら何やらを書いているところを見たことはほとんどないので、口さがない部員たちからは文豪気どりとからかわれている。
 千本が肩をすくめる。
「あんまり遅くならないようにしなよ。なんか雲行きも怪しいし」
「雨どころか、雪が降るかも」花咲も言う。
 ここ数日に比べると気温がかなり低かった。羽場も、日が出ている間から、何度かくしゃみをしていた。
「って、もう降ってきてるじゃん」
 窓から外を見た花咲が声を上げた。
 羽場も千本も窓に駆け寄って、外を見る。「うわ、本当だ」
 窓の外、ほわほわした白いものが、降りはじめていた。風がほとんどないため、雪は上から下へ、重力に従って舞い落ちていく。積もりそうな雪質だ。
「もう桜も咲くっていうのにね」千本が息を吐いた。「二十重《はたえ》の桜も、散っちゃうかもなあ」
 千本が言う、二十重の桜とは、大学の敷地内に一本だけ植わっているものの通称だ。名前から、豪奢なものを想像しがちだが、実際は枝振りも花のつきかたも控えめで、敷地の隅に、ひっそりと植わっている感じだ。名前負けもいいところである。
 桜が咲いているのは敷地の西側で、部室棟があるのは東の端。校舎をはさんで反対方向になるため、正門からまっすぐここにきた羽場は見ていなかった。
「雪か。それはたいへんだ。そんなら諸君らも、さっさと帰ったほうがいいぞ」
 机の上、本のページに目を落としたまま、鶯谷が言った。残った連中を鬱陶しがっているのが丸わかりの態度だった。
 早く本に集中させてくれよ、という言外のオーラを感じとったのだろう、千本はため息をついて、行こっか、と二人を促した。
「また明日」
 本から視線をはずさないまま、鶯谷が言った。


 翌日。
 昨夜降りはじめた雪は、日付が変わったあともしばらくは降り続けていた。朝、羽場が起きたころにはもうやんでいたが、アパートのドアを開けた時には、3センチくらい地面に雪が積もっていた。
 花散里大学にはいくつもサークルがあるが、その部室は西側の部室棟と呼ばれる建物にまとまっている。校舎とは別の、二階建てのよくいえば古色蒼然、言葉を選ばずに言うとボロっちい建物は、かつては寮に使われていたそうだ。文芸部の部室があるのは一階の真ん中あたり。
 羽場が前日の反省を活かし、集合時刻の九時半よりも少し早く部室のドアをあけると、花咲がいる。
「あ、おはよ」
 と羽場を向いたその顔を見て驚いた。左目に黒い眼帯がついている。昨日、本屋で解散した時には、当然、そんなものはついていなかった。
「え。どうしたんです、先輩」
「あ、これ?」
 花咲が眼帯を手で押さえる。「昨日、帰ってから、隣の家の子と雪合戦をしたら、雪玉が目に当たっちゃってね。いやまあ正確にはほっぺなんだけど。ほっぺで雪玉が割れて、砕けた雪の粒が目に入ったのよ。クラスター弾みたいなものね」
「災難でしたね」
「子供の球威だったから、たいしたことはなかったんだけど。目を開けてると涙が止まらなくて」
「それで眼帯ですか。くだ狐とか飼ってそうですね」
「他人事だと思って勝手なこと言って。視界が悪くて不便だよ。眼鏡が割れなかったのはよかったけど、スペア持ってないし」
 せっかくの美貌がこれでは台無しだ。いや、これはこれでありかもしれない。
「だけど、そんなになってまで眼鏡をせずとも。いくらコンタクトが苦手だからって」
 彼女の顔にはおなじみのメタルフレームの眼鏡が乗っていた。つまり眼帯の上に眼鏡をかけている状態である。
「おお、羽場、きたか」言いながら黄桃が入ってくる。「花咲の、びっくりしただろ。さっき見た時はジョニデかと思ったよ」
 手にはココアの缶。席に荷物が置いてあるから、いったんここに来て、外の自販機で飲み物を買ってきたのだろう。
 席に戻る途中、何やら黄桃が右足を引きずっていることに気づき、羽場はどうしたのかと訊ねた。
「いや、それがさ」黄桃は頭をかく。「昨日、雪が降っただろ。アパートの階段から転げ落ちちゃって」
 聞けばジョーカーの真似をしていたらしい。
「ええ? 大丈夫だったんですか」
「まあ一段目だったからな」
 それは不幸中のさいわいだ。
「でも転びかたが悪かったみたいで、朝一で診察してきたら、捻挫だってさ。全治一週間」
「気をつけてくださいよ」
 言いながら自分の席に向かう途中、靴底が床にはりつくような感触があった。どうしたのかと見ると、床の一箇所がてかてかしていた。かがんで指で触れると、べたべたしている。指を鼻に近づけてみると、トロピカルなにおいがした。
「どうしたんだ」
「いや、なんかここ、べたついてて」常備してあるウエットティッシュを一枚引き抜いて、それで床を拭く。何度かこすってやっときれいになった。
 汚れたウエットティッシュをアルミ製のごみ箱に捨てる。ごみ箱の中には、お菓子の包装やティッシュ、それとオレンジ色の空き缶が一本入っていた。
 鶯谷の席の前の机の上には、昨日、彼が読んでいた本が閉じられたまま置いてあった。今日も早くから来て、読書に励んでいたのかもしれない。お菓子などは片づけられている。
「おっはっよっ」
 スタッカートを利かせた挨拶とともに姿を見せたのは千本だ。
「積もったねえ」
 と言いながら、トートバッグを机に置くその手から、羽場は目を話せなかった。
「ち、千本先輩、どうしたんですか。その手」
「あ、これ?」
 千本はばつが悪そうに十指を広げる。
「昨日、料理本を買ったでしょ。あのあとそれを読んでたら、作ってみたくなってね。そしたらこうなっちゃった」
「そんな漫画みたいな」
 一本や二本ならまだしも、十指すべてに絆創膏が巻かれている。どうして包丁を持つほうの手まで怪我してるのだろう。いつもの指輪も、絆創膏に置き換わっていた。ぱっと見の形状こそ似ているが痛々しさが全然違う。
「あ、味はよかったんだよ」
 千本が取り繕うように言うが、メンヘラの料理よろしく、作られた料理にはけっこうな量、彼女の血液が含まれていそうだった。
 ふぇえ。
 と、鉄とかけた地口を羽場が呟いていると、繁縷が入ってくる。
 彼女は大きく×が書かれたマスクで顔の下半分を隠していた。
 ふぇえ?
「おいおい、繁縷ちゃん、どうしたんだい」
 黄桃が驚いたように叫ぶ。
「昨日、夜寒かったでしょ」
 という声を聞いて、皆、驚いた。がさがさにしゃがれていて、いつもの美声は見る影もない、否、聞く影もない、というべきなのだろうか。「エアコンの温度を上げた時に、間違って除湿モードにしちゃったみたいで。それでこのザマってわけですよ」
 声こそボロボロだが、ネイルチップはしっかりと昨日のものとは変わっていた。譲れないこだわりなのだろう。今日のは白とピンクが入り交じったマーブル模様だった。
 それにしても、なんだかサークル全体が満身創痍だ。自分だけ健康そのものあることに妙な引け目を感じつつも、羽場は、この分ならまだ姿を見せない鶯谷はどんなふうに登場するのだろうと、いささか不謹慎な期待をしてしまう。
 全身包帯でぐるぐる巻きだろうか。
 だが集合時刻の九時半をすぎても、鶯谷は部室に姿を見せなかった。
「ウグはどうしたんだ?」黄桜が丸っこい体を小刻みにゆすりながら言った。貧乏揺すりは彼の癖だったが、見るたびに羽場は紙相撲を連想してしまう。
「僕は知りませんよ」
「わたしも」と花咲。
「あたしもー」と千本。
 喉を痛めている繁縷はうなずきで同意を示した。
「そこに本が置いてあるから、もう来ているもんだと思ってたんですけど」
 羽場は言うが、今朝、彼の姿を見た者は誰もいないという。
「本を置きっぱなしにして帰ったのかしら」花咲が言う。
「いや、それはないと思うな」
 と言ったのは黄桃だ。
「俺も今、気づいたんだが、椅子の上に財布が置きっぱなしだ」
「え」千本が慌てて、部長の指定席を見る。「ほんとだ」
「ここからあいつの家までは、バスで二十分くらいの距離だが、ほら、見てみろ。バス券も入ったままだ。あの雪の中、歩いて帰ったとは考えづらいよな」
「誰かの家に泊まったとか」羽場が言う。
 でも、と千本。「彼には、家に泊めてくれるような友人もいないはずだけど」
「ああ」と黄桃。「いるとすれば俺か、羽場だろうな」
 黄桃に話をふられ、羽場はうなずく。
 気難しい人格のせいか、鶯谷は、部の外には友人がいないようだ。もっともそれは彼に限った話じゃない。羽場はもとより、他のメンバーも似たり寄ったりだ。一人が好きだったり人づきあいが苦手だったり微妙な理由こそ違えど、基本的に文芸部ははぐれもの同士の集まりである。
「僕のところには、来てないですね」
「それは俺もそうだ」
 朝の時点で、黄桃は、鶯谷のスマートフォンにもメッセージを送っていたようだが、まだ既読はついていないみたいだ。
「まさか、その辺で行き倒れてるってことはないわよね」花咲が言う。
「さすがにそれはないと思いますけど」
「いややりかねない。ほら、見ろよ」
 言いながら黄桃はごみ箱に近づき、中から空き缶をとり出した。先ほどウエットティッシュを捨てる時に羽場も見た、オレンジ色の、表面がデコボコしたデザインのものだ。
「それは」
「缶チューハイだよ。昨日、帰る時には、ごみ箱に入ってなかったから、おそらく鶯谷が飲んだんだろ」
 マンゴー味はあいつのお気に入りだしな、と黄桃が言う。
「お前らも知ってるだろ。あいつは酒が入ると、気が大きくなって、何をしでかすかわからないところがあるんだ。覚えてるよな、去年、出雲にもみじ狩りに行った時のこと」
「ああ」
 羽場は思わず声を漏らした。昨年、彼が出雲大社で見せた醜態は、羽場もはっきりと覚えていた。
「でも、ここにいなくて、家にも帰っていないなら、彼はどこにいるの?」花咲がぽつりと言う。「まさかこの辺で倒れてるんじゃないでしょうね」
「それもありえない話じゃない」黄桃がうなずく。
「ど、どうしたらいいんだろ」と千本。
「まあ、いくら雪が降ったとはいえ、もう三月だからな。今日だって晴れて気温も上がっているし、万一、外で倒れていたところで、凍死することはないと思うけど」
 楽観的な口調で黄桃はそう言うが、表情は曇っていた。

 鶯谷を探しに行こうという案が、誰かからはっきりと口に出されたわけではない。それでもなんとなく、そういうことになった。どこにいるのかわからない以上、見つけられる確率は低そうだったが、それでもじっとしているよりはましだった。
 ひとまずキャンパス内を、二手に分かれて探すことにする。春休みで校舎の鍵はしまっているため、捜索にはさほど時間はかからない。羽場は眼帯をつけた花咲とペアになり、北側から回っていく。千本と繁縷は校舎を挟んで南側を中心に捜索していくという分担だ。
 足を痛めている黄桃は部室に待機。
 いざ出陣、というところで繁縷がごほごほと咳き込んだ。これまでも咳はしていたが、なかなか止まらない。だんだんと悪化しているようだ。
「繁縷ちゃん、大丈夫?」千本が背中をさする。
「ううう」マスクの下で繁縷がうめく。
「あ、そうだ。たしかのど飴あったっけ。羽場くん、冷蔵庫から出してあげて」
「どうして冷蔵庫にのど飴が」
「夏場に常温で置いとくと溶けちゃうからね」
「夏場って。いつから入ってるんですか」
 おののきながら、羽場は冷蔵庫を開ける。彼女の言うとおり、扉側の棚にのど飴があった。入っている時には庫内はみちみちなのだが、今日はとてもすっきりとしていて、冷蔵庫の正面側には、昨日、花咲がしまった飲みかけのペットボトルしか入っていなかった。
 冷蔵庫のドアを閉めて、繁縷にのど飴を渡すと、マスクの上からでもわかるほど微妙な表情をして、黙ってポケットにしまった。
 あとでこっそり捨てるのか、食べるのか、微妙なところだな、と羽場は思う。
 部室を出て、二手に分かれる。
 校舎がある裏手の地面には、雪が一面に広がっている。そこには誰の足跡も残っていない。
 花咲と二人で歩いている、そう意識した途端、心臓がどきどきしはじめた。冬が寒くて本当によかった、いやもう春か。
 人捜しという名目を忘れたわけではないが、いささか浮き足だった歩調で、歩いて行く。
「ごめん羽場くん。できれば左側に立ってくれるかな。わたしがこっちにいると、そっち側を見落としちゃいそうで」
「わかりました。僕が目になりましょう」
「スイミーみたいなことを」
 南側に比べて北側は見るところが少ない。校舎とは反対の左手側には塀がそびえているし、空間的にも細いため、正直、向こうまで行かなくても誰もいないのは見えている。それでも横着しないのは、一つは部長が心配だから、もう一つは花咲の左目役をもう少し長く続けたかったからだ。
「あ、そこ段差になってますよ」
 というアドバイスを、羽場が、花咲にした頃には、もう敷地内の東端が迫ってきていた。
 この奥に、昨日話した桜が植わっている。
 みぞれ状になった雪を踏みながら、歩いていく。建物で遮られていた日光が、ようやく右側から二人に降り注ぐ。南側を捜索している二人の姿はない。まだここまで来ていないのだろう。
 校舎の東側には外階段がしつらえられている。各階の踊り場についている非常口のランプは四六時中ともっているため、夜でも真っ暗にはならない。
 桜に近づくにつれ、雪の上に花びらが混じっていく。昨日の雪と今日の風で、既にいくらか散ってしまったようだ。花弁ごと落ちているものもある。
 桜の木の周囲には、足跡一つない。未踏だ。
 桜の枝に、うっすらと雪が積もっている。積もった白の隙間から、薄桃色の花びらが見えた。木の周囲には足跡一つない。風がそよと吹いて、木に積もっていた雪がはらはらと粉のように舞い散る。 
 その木の根元に、鶯谷がうつ伏せになって倒れている。
「ぶ、部長!」
 羽場は慌てて木の根元まで駆け寄り、かがみ込む。顔周辺の雪が血で赤く染まっていた。
 うつ伏せになった状態の鶯谷をひっくり返す。雪と血で顔が汚れていた。名前を呼んでも反応がないので、その体を揺する。何度かそうしたあとで、こういう時に揺するのはよくないのだと何かで読んだことを思い出したが後の祭りだ。
 だが今回はどうやらそれが功を奏したらしい。「う、う」と青ざめた唇から、吐息のようなうめき声が漏れた。
 そこで背後から足音が聞こえる。振り返ると、南側を歩いてきた繁縷と千本が追いついたところだった。


「それから救急車を呼んで、鶯谷さんは病院に運ばれた、ってわけなんだけど」
 あのロゴって自由の女神っぽいけど実はセイレーンなんだよね、という雑学でおなじみのカフェチェーン、そのテーブル席で、宇和島は言った。
「さいわい、傷はさほど深くなかったみたいでね。命に別状はなかったんだって」
「あ、生きてるんですか」
 向かいに座る甲森が意外そうに言う。
「うん。一日中外にいたせいで、だいぶ体温が下がっていたから、入院じたいは長引いたみたいだけど。それでも二、三日前に退院したってさ」
 鶯谷の退院後、羽場が彼のアパートに見舞いに行ったら、もう元気だったという。
「それは何より」ストローをかじりながら、甲森はさほど身が入らない様子でそう言うが、そこで、はたと動きを止めた。「ん? でも、それなら私は何を考えればいいんですか?」
「え? そりゃあ、誰が鶯谷さんを襲ったか、だよ」
「いやいや。だって彼は生きてるんでしょう。それなら本人の口から聞けばいいじゃないですか。もしかして、暗い中で殴られたから、犯人の姿を見ていないパターンですか?」
「いや、そんなこともないみたいだけど。校舎の非常口の明かりがあったからね」
「じゃあ、事件のショックで口がきけなくなった、とか」
「でもない」
「だったら」
「当の鶯谷さんが、口をつぐんでるんだってさ」
 羽場が見舞った際も、その時のことに話が及ぶと、貝のように黙り込んでしまうという。他の部員に対しても、同じ反応だったそうだ。
「警察にも、通報はしていないんですか?」
 宇和島はうなずく。「鶯谷さんが強硬に拒んだみたい」
「なかったことにするつもりでしょうか?」
「どうなのかな。その胸のうちは誰にもわからないみたい」
 甲森はストローをがしがし噛んでから、
「そういうことなら」
 と言う。
「こちらが、あえてほじくり返すことはないんじゃないですか? 本人がそれを望むのであれば、外野がとやかく言うことではないでしょう」
「まあそうなんだけどね。実際、羽場さんもこのままにしておいたほうがいいのかもなあ、みたいなことを言ってたし」
「だったら、なおのこと私にできることはないでしょう」
「でもさあ、それじゃあ私の気が済まないんだよね」
 宇和島の言葉に、甲森は怪訝そうに眉を寄せた。
「というと」
「羽場さんから一方的に話を聞かされてさ。答えがわからないまま宙ぶらりんにされるのは、もやもやして、気分がよろしくない。
 かといって、自分で考えても、まるでわからない」
「だから私に考えさせようと? え? ちょっと勝手すぎるでしょ」
「いやあ。別に、そんなつもりはないよ」
 宇和島は白々しく言う。
「気になることは気になるけど、世の中のすべてに納得のいく説明がいくわけじゃないし。諦めることも大事だよね。私としては話を聞いてもらえただけでもいいんだ。甲森さんだって万能じゃないもんね。期待しすぎたこっちが悪かったや。ごめんね。じゃ、そろそろ解散しようか」
 そう言って宇和島が腰を浮かせかけたところで、甲森は、
「い、いくつか質問してもよろしいでしょうか」
 と言った。
 宇和島は再び腰をおろし、席の背もたれに寄りかかる。
「どうぞ」
 宇和島のしたり顔に、不愉快そうに眉をひそめてから、
「まずは大前提なんですが」
 と甲森は言った。
「じつは鶯谷が足を滑らせて転んだだけだった、とか、そんなオチじゃないですよね」
「それならさすがに自分から打ち明けるでしょ。救急車まで呼んでるんだから」
「アルコールが入って記憶を失っているとか」
「鶯谷さんは、酒で記憶をなくしたりはしないタイプみたい。そういう人いるよね」
「一同が鶯谷を見つけた時、その周囲に何か落ちていた、とか」
 バール的な何かを念頭に置いているのかな、と予想しつつ、宇和島は首を横に振る。「何も見つからなかったみたい。桜の周囲には雪が薄く積もっていて、何か落ちてたらすぐわかったってさ」
「傷の形状から、頭にぶつかったものの形状がわかったりしませんか?」
「羽場さんは、何も言ってなかったなあ」
「そうですか」
 残念そうな甲森に、
「何が気になってるの」
 と宇和島は訊ねる。
「鶯谷が、どこで襲われたのかが気になってますね」
「というと」
「鶯谷が倒れていた日の朝、部室の床がべとついてたって言っていたでしょう。あれって間違いなく缶チューハイをこぼした跡ですよね」
 宇和島は得心がいったように「なるほど」と言う。「酔って部室にいるとこを殴られて、桜の根元にまで運ばれた、って考えてるわけだ」
「まあ可能性ですけど」
「でも、部室から桜まで背負っていくの大変じゃない? 大学の端と端だよ」
「まあそうですけど」
「でもさ、もしそれが真相だったら、少なくとも黄桃さんには無理だよね。だって足を怪我してるんだもの」
「いや。運んだあとか、運ぶ最中に怪我をした可能性もあるので」
「あ、そっか」
「というか、まだ部室で殴られたと決めつけているわけじゃないんで」
 先走る宇和島を甲森はなだめる。
「そのへんを特定するために、傷の原因がわからないかと思ったんですよ。たとえば頭の傷が、木の幹に頭を打ちつけてできたものとわかれば、現場は東側ということになりますし、逆に分厚い本とか、木彫りの熊とかなら、部室で殴られた線が濃厚になる」
「なるほど」
「ですが、情報がないのでは、そこから考えるのは難しいみたいですね」
 別の方向から攻めなくてはいけません。
 甲森はそう言って、ため息をついたあとで、
「部室の鍵の管理はどうなっているんです」
 と気を取りなおしたように質問に戻る。
「鍵はぜんぶで二つで、それぞれ鶯谷さんと花咲さんが持っているみたい」
「事件当日、鍵は」
「最初に来た花咲さんによると、開いてたってさ。ちなみに鶯谷さんの鍵は、発見された時に着てたコートのポッケに入ってたみたい」
 ふむふむ、と甲森。「雪が降った当夜の、文芸部員のアリバイは」
「全員不成立」夜だし、と宇和島。「ていうか、犯人は部内の人なの? なんかずっとそんな雰囲気でしゃべってるけど」
「鶯谷が口をつぐむくらいだから、そうなんじゃないですか? 彼の人づきあいは、部内がほとんどだったみたいですし。というか、もし部外者なら、ワインオープナーみたいにお手上げですね」
「だよね」
「です」
 と甲森がうなずいた、かに見えたがそのまま顔を上げない。推理モードに入ったみたいだ。彼女が推理モードに入ったところを宇和島が見るのははじめてだった。めちゃくちゃ瞳孔開いてるけど大丈夫かな。
 それにしても、甲森が桜フラペチーノを頼むとは意外だった。ブレンドコーヒーとかダークモカとか、黒っぽいものを頼みそうなイメージを持っていたのに。もしかしたら店内に書かれていた、桜フェア本日最終日の宣伝につられたのかもしれないけど。
 それにしてもベンティってめちゃくちゃ大きいな。遠近感がバグりそうだ。最初注文したものが出てきた時は、自分のほうがホイップクリームの上に乗ってるピンク色のマカロンを砕いたやつが少ない気がするってごねてたけど、どう考えてもそれ、カップが大きいからそう見えてるだけだよね。
 って、あ、そうだ。
「そういえば、羽場さんが言ってたんだけど」
 甲森が顔を上げる。「はい?」
「ほら、その日って季節はずれの雪が降ったでしょ。そのせいで、咲きかけた桜もあらかた散っちゃったって話したじゃん」
「それが何か」
「うん。でね。桜の周りの雪の上にも、桜の花びらがけっこう落ちてたんだけどさ。でも、駆け寄った時に、倒れてる鶯谷さんの周囲だけ、なんか花びらが妙に少なかったような気がしたんだってさ」
「少なかった?」
「うん。感覚的なものだから、気のせいかもしれない、とは言ってたけど」
「ああはいはいわかりました」
「ええ? 何よその態度。せっかく何か推理の一助になればと思って記憶から引っ張り出したってのに」
「? ほえ?」
「ほえ? って何よ」
「いや、だからわかりましたって」
「ほえ?」
「だから、犯人がわかりました、って言ってるんです」
「ほええ?」
「以下解決編ですよ」 
「ほえええ」



 皆様ごきげんよう。ここでミネルヴァさまからお知らせです。
 私わかりました、鶯谷を殴ったのが誰なのか。
 そしてそれがわかるのは私だけではありません。
 ちょっぴりの推理力があれば、あなたにもわかります。

 考えなくても全然かまいませんが、考える人のためにいくつか注釈。
 叙述トリック(男かと思ったら女だった、みたいなやつ)は考えなくてけっこうです。
 犯人は鶯谷を除く文芸部のメンバーの五名の中にいます。
 単独犯です。
 嘘をついているのは犯人だけです。
 また、犯人が用いた凶器がなんなのかは、考える必要ありません。
 鶯谷が口をつぐんでる理由をはじめとした、登場人物の気持ちも、考えなくてけっこうです。そんなの私にもわかりませんので。
 では解決編でお会いしましょう。
 ゴッドブレスユー。

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