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日本の伝統技術、土葺き瓦屋根


瓦一枚自体の重さと下に敷く土の重さ、震災の影響などで今ではあまり見かけることができなくなっしまった瓦屋根の「土葺き工法」。
瓦の下に敷く土を接着剤の代わりのようにして瓦を固定し、ビスや釘を一本も使わずに瓦を固定する技術。一見自分もやれそうな。。。って思ったら大間違いな技術で、手間暇のかかる昔ながらのすごい技術です。

そもそも土葺きとは、明治時代から昭和初期にかけた屋根材の流行りで、瓦の下地となる野地板の上に杉の皮などを敷き、その上に土・粘土を乗せて、その土・粘土の接着力で瓦を固定していく工法らしいです。

杉皮の上に土を敷き並べて瓦をのせて固定していく。
職人さんの手の動きを見ながら自分でもやれるかな?って思ったけどこれはすぐにはやれる自信はない!
職人さん曰く、「今の若い子で土葺きできる人いないんじゃないかなぁ」って言うぐらいのなかなかの技術で、瓦の高さや軒先の出、不陸を一枚ずつ調整していくので、右ばっかりに気を取られていると左の方がずれてしまったり、建物自体の倒れなど全体を見ながら調整していく、大変手間のかかる作業です。

風から建物を守る重し代わりにしていたり、断熱材のない時代に瓦の下の敷く土を断熱材の代わりにしていた理由で瓦屋根が主流になっていた時代があったそうです。が、関東大震災の際、土葺き屋根の瓦が落ちてしまったのに対して、引っ掛けて留める瓦屋根の被害が少なかったため、土葺きの瓦屋根の見直しがはじまり、関西淡路大震災を契機にますます使われなくなったそうです。

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また、土と瓦一枚自体の重さが一坪あたりおそよ300kgぐらいあるので、その重量に耐え得る建物の骨組み、柱や梁など頑丈な構造・躯体も必要になってきます。建売住宅などの小さな構造・躯体では土葺き瓦屋根はのせれなくなってきたのが現状。
その後、現在主流になっているスレート屋根や板金材の屋根にシェアを奪われて、最近ではなかなか見ることができなくなってしまった土葺き瓦屋根。死して、それに合わせて土葺きを施工できる職人さんも徐々に減ってしまった時代背景があるようです。

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住宅建築って雑誌に、「屋根再考」という特集が組まれていました。
そこにある一文が、震災以降瓦の生産量は5分の1まで落ち込み、一般住宅では使われることはかなり減ってきた。ある大工さんは「瓦がのせられない家の方が逆に大丈夫か?」と建物の構造・躯体の心配もされているそうで、阪神大震災で建物が倒壊した原因の多くは、建物の躯体の方に欠陥があったと調査でわかったそうです。ある意味、風評被害に繋がり瓦のマイナスイメージだけが残ってしまった感があります。また、スレート屋根やガルバリウム屋根などの新建材は瓦と違って素材が呼吸せず下地と密着しているので結露が起きやすくそれが原因でビスや釘が抜けてしまうことも。。。

時代の流行りすたり中で、無くなってしまいそうな土葺き瓦屋根。
土壁・土葺きの屋根でできた建物って夏涼しくて結構快適な記憶があります。そう思うと、建物に呼吸を与える瓦屋根って日本の高温多湿の気候に合ってるんじゃないかなぁって思いました。
建物の外観デザインの好き好みもあるかと思うけど、日本の意匠デザインだけじゃなく、建物のことも考えた土葺き瓦屋根って奥が深くて、それを施工できる職人さんの数が減ることで日本の伝統技術が無くなりそうな土葺き瓦屋根でした。

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