見出し画像

山を越えて

昨日、春を迎える雨が降った。

今日、イワシの町へ行くため、私の車は里山を通り、山を越えていった。

里山はきみどりいろに覆われている。田んぼに一面に生えている柔らかそうなみどりは、イタリアンと呼ばれ、牛のご飯になると教わった。

緑色だけではない。土、桜、紅梅、菜の花、まんさく、レンゲ、大根そして川面の煌めきなどの美しい色がどんどん迫ってきては後ろにに流れていく。

寒い間地下へ潜っていたエネルギーが、緑という湿り気のある大きなエネルギーになって背中を盛り上ながらゆっくりと立ち上がる。

向こうに見えるいくつもの山々の窪みから、水蒸気でできた白蛇が天へ向かって立ち登る。あれらはもうすぐ雲となって空に浮かび上がる。

峠を越える頃には色々な種類の木のたくさんの緑色に包み込まれるようになる。名前を言える木が少ないのが悔しい。

自然のエネルギーの塊の中に入り込んだようで神妙な気持ちになる。こんなところにも道路ができて、人は自由に行き来ができるけれど、「通らせてもらっている」という気持ちを忘れないようにしたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?