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無垢の祈り

あらすじ
http://eiga.com/movie/85471/

「『超』怖い話」などで知られるホラー作家・平山夢明の短編集「独白するユニバーサル横メルカトル」に収録されている一編「無垢の祈り」を、「アルビノ」「私の奴隷になりなさい」の亀井亨監督が映画化。暴力的描写や10歳の少女への虐待描写など、過酷な内容が含まれるため、亀井監督が自主映画として製作した。

レコメンドを受けて、鑑賞。

見に行って良かった。本当に。

手持ちカメラの「アングラ」感を少し構えて見初めてしまったけれど、
話が動き出してしまえば、全くもって気にならず。

いわゆるグロ描写があるはあるけど、「はいどうぞ、グロ描写お待ちー!」
「こういうの好きでしょ、お客さーん!」という類のものではなく、
グロ描写が映されている時、そこにいる人物や、そこに焦がれる人の心情を
想うためにグロ描写が存在していたので、
ビックリ箱的な圧力や、異形の不快感の押し付けは全然無かった。

作品を通じて通底する終わらない何か。
終わらない日常、終わらない虐待、終わらない地獄、終わらない暴力
そこで何を思うか。

この映画は決して、サブカル趣味、アングラ嗜好を
満たすためのものではなかった。

監獄である自宅、虐待の心理的圧迫感は、映画「ルーム」を思い出した。

あらすじ
http://eiga.com/movie/83804/

アイルランド出身の作家エマ・ドナヒューのベストセラー小説「部屋」を映画化。監禁された女性と、そこで生まれ育った息子が、長らく断絶されていた外界へと脱出し、社会へ適応していく過程で生じる葛藤や苦悩を描いたドラマ。第88回アカデミー賞で作品賞ほか4部門にノミネートされ、息子とともに生きようとする母を熱演した「ショート・ターム」のブリー・ラーソンが、主演女優賞を初ノミネートで受賞した。監督は「FRANK フランク」のレニー・アブラハムソン。7年前から施錠された部屋に監禁されているジョイと、彼女がそこで出産し、外の世界を知らずに育った5歳の息子ジャック。部屋しか知らない息子に外の世界を教えるため、自らの奪われた人生を取り戻すため、ジョイは全てをかけて脱出するが……。

児童虐待、大人からの不条理な扱いを受ける現実は、「誰も知らない」を。

あらすじ
http://eiga.com/movie/1568/

父親が異なる4人の兄妹と母の母子家庭。アパートを追い出されないために、父が海外赴任中で母と息子の2人暮らしだと偽って暮らす彼らは、そのため学校にも通ったことがない。だが母親に新たな恋人が出来て、兄妹に20万円を残して失踪、子供たちはなんとか自分たちで暮らしていこうとする。

こうした、アカデミー賞のような賞レースにも絡む、現代的な主題を
掘り下げた社会的に意味のあり、かつ映像の快楽を伴う
紛れもない「映画」でした。「無垢の祈り」は。

uplinkの上映が観客の後押しで公開延長、オンデマンド、再上映となるのも
作品の評価を裏付ける。「この世界の片隅に」的なファンが、作品を後押し
するのと同様に。

ただ個々人の体験で、どうしても児童虐待に類するものが無理、
凄惨な殺人現場の描写が無理な場合には、やはり鑑賞は難しい。

映画の視聴後には「ダンサー・イン・ザ・ダーク」にもあるような
心の葛藤を和らげるため、原作者の平山さんと監督の亀山さんの
トークショーが基本セットになっている。(出演者ゲスト回もあり)
傍から見れば、出たがりかよ。というような揶揄もあるだろうが、
そうした些末なツッコミを越えて、執筆意図、制作意図を観客に伝える
情熱が本当に嬉しかった。そして足を運んでくれた観客に対して
本当に感謝の意を伝えてくれる。

子供の貧困や虐待の問題が本当にやるせないのだ。ということを
平山さんは強調されていた。

配給・映倫を通らず、完全自主映画として身銭を切られて
亀山監督はこの作品を完成させた。

そんな映画が、露悪趣味的な悪趣味自慢な映画であるはずがない。

子を持つ親である以上、対岸の火事では無いし、
虐待の芽はどこにでも自分にも転がっていることを反芻する。
反省や後悔や無情が促される。

見て良かった。

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