かるたの「あったらいいな」

 思うようにかるたの練習や大会ができない昨今、私はあれこれとかるたに関する妄想を繰り広げてみた。そんな妄想世界の産物の中から、かるたの世界にこんなものが「あったらいいな」というものをいくつか書き残しておきたいと思う。比較的実現性の高いものから、完全な妄想までいろいろである。

①スペクトログラム×読唱指導

 スペクトログラムとは、当アカウントでも何度か記事に載せている音響分析のツールだ(スペクトログラムに関する詳細はこちらの記事を参照していただきたい)。これまで私はスペクトログラムを使って読唱の分析をしてきた。そのほとんどは「選手がどうやって読みを聞き分けているか」だったが、読唱の指導や自己分析にも活かしてみたいと思っている。たとえば、スペクトログラムを活用すると、読唱指導が次のように変化する。

Before
「『やえむぐらー』の『え』が不自然な発音ですね」

After
「『やえむぐらー』の『え』の第二フォルマントが少し高くなっていますね。『い』と『え』の間のような発音になっているので舌の位置を意識的に下げて『え』を発音してみまょう」

 科学的な根拠とともに「何をどう改善すればいいのか」をはっきりと示せるようになるのではないかと思う。また、客観的に読唱を分析できるので、自己分析の精度を上げることにも貢献できるのではないか。

 ちなみにスペクトログラム分析自体はPCのフリーソフトで行えるため、お金をかけずに個人のレベルで始められる。

 最終的に、読み方講習会や読手講習会でスペクトログラム分析が活用されるようになったら大成功だと思う。分析ソフトの入ったPCとマイクさえあれば、マイクに向かって読んだ音声をその場で分析できるので、読唱指導がわかりやすく、楽しくなるのでは、とひそかに思っている。

②スペクトログラム×選手分析

 スペクトログラム関連でもうひとつ。スペクトログラムによる音響分析を読唱指導だけではなく、選手の特性を明らかにすることにも使えたら面白そうだ。

 たとえば、数十試合分の試合記録をデータベース化し、お手つきしやすい札や早く取れる札の傾向を挙げることで、その選手が音を聞き分けるときに何を重視しているのかを明らかにすることができる。母音重視タイプなのか、子音重視タイプなのか。それを自分で知っておくことで、お手つきを防止したり、送り札などの作戦面に活かすことができるのではないか。

③団体戦リーグ

 職域や高校選手権、大学選手権などのように1年に一度行われる団体戦の大会はいくつかあるが、中長期にわたって行われるリーグ戦はほとんど聞かない。年間通して順位を争う団体戦リーグがあったら面白いのにな、と思う。

 また、現在行われている団体戦の大会は、①職域や高校選手権のように学校・職場ごとにチームを組む大会、②各会対抗団体戦のようにかるた会ごとにチームを組む大会、③おおつ光ルくん杯や静岡オープン(静職)のように自由にチームを組む大会の三種類ある。私は③がもっと増えたらいいなと思っている。

 学校・職場やかるた会の仕切り関係なく、自由に組まれたチームどうしで戦う中長期リーグ戦。とても面白いと思うのだが、どうだろう。

④全自動札分け機

 想像に難くないことだと思うが、大会で使用する札を組んだり、使い終わった札の枚数を数える作業はものすごく大変である。大会の役員控え室では、表に出ていない役員がすべての札の枚数を数えて箱に入れる作業をしている。

 この作業をするたび、私は「全自動札分け機」が開発されることを心から願ってやまない。指定した札の組み合わせに札を分けて輪ゴムで止めてくれるだけでなく、使い終わった札の枚数を自動で数えてくれる夢のマシンだ。誰か、開発してもらえないものだろうか。

⑤改訂版「読み方かるた」

 昨年4月に全日本かるた協会の読手テキストが改訂された。それにともない、現在販売されている大石天狗堂さんの「読み方かるた」の記載と異なる箇所が出てきているので、ぜひとも改訂版を発売していただきたい。読唱の普及のためにも、大石天狗堂さん、よろしくご検討ください!

 こういうのは妄想しているときが一番楽しいのだ。しかし、実現できそうなもの(特にスペクトログラム関連)は自分でも少しずつやってみようと思う。

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