今、思うこと

 先日、大学選手権と職域学生大会D級の中止が発表されました。大学4年の私にとっては、最後の団体戦の大会。それが中止ということは、つまり、大学でのかるたはおしまい、ということになります。

 中止が発表されてから、しばらくの間、いろいろなことを考えていました。大学でのかるたのこと。読みのこと。日常が消えてしまった今の状況のこと。次から次へといろいろな記憶が、思いが、感情が、溢れてきました。そんなあれこれを、この場で書き残しておこう。そう思いました。

 私の大学でのかるたは、かるた会をつくるところから始まりました。もともと、私の入学した大学にはかるた会も、かるたサークルもありませんでした。そのことは受験する前から知っていたので、入学したら大学かるた会ではなく、一般のかるた会に移籍しようと思っていました。

 でも、いざ入学すると、やっぱりかるた会をつくって大学でかるたがしたいと思うようになりました。理由はいくつかありますが、一番はやはり、高校3年間をかけて取り組んできた団体戦に未練があったからだと思います。高校時代、ありがたいことに団体戦のメンバーとして高校選手権の東京都予選に出場させてもらいましたが、結果はベスト4止まり。高校選手権に出場することはできませんでした。東京都代表チームのメンバーとして参加した総文祭も、1試合出場しただけ。不完全燃焼でした。もう一度団体戦をしたい──。そんな思いを抱えて、私は大学にかるた会を一からつくる、という選択をしました。

 今思えば好運だと思いますが、入学してかるた経験者を探したところ、自分以外に有段者が3人も集まってくれました。さらに初心者も数名。こうして私は、全日協登録会「東京学芸大学かるた会」を立ち上げることができました。

 しかし、はじめのうちは練習場所の確保も難しく、初心者指導も難航して自分の練習どころではない状況でした。それでも、大学でかるたをやることにこだわったのは、どうしても団体戦がやりたかったからです。

 それから1年。学部2年の夏に、ようやく大学選手権と職域学生大会D級に出場することができました。大学選手権は2回戦負け、職域は1回戦負けと、決していい成績を残せたわけではありませんでしたが、大学で団体戦をやるという念願が叶い、とても報われた気がしました。

 かるた会を立ち上げて3年。今年は私にとって特別な1年になるはずでした。選手権と職域で今までで一番いい団体戦をして、後輩たちに何かを残して卒業したい──。

 おそらく日本中、世界中の人たちがそうであったように、私自身も、今まで歩んできた道のりや、今立っている場所、そしてこれからの未来を改めて見つめ直しました。時間をかけて見つめ直すほど、やはり、悔しいという感情が溢れてきました。何もないところからスタートした大学でのかるたが、一瞬で終わってしまった。何もできないまま、終わりを迎えてしまった。

 どうしようもないことだというのはわかっています。かるたは不要不急だ。今はかるたをすべきではない。それでも、何も残せないまま大学を卒業していかなければならないことは、悔しいとしか言いようがありません。もう一度、団体戦をして終わりたかった。今までで作り上げてきたものを感じながら引退したかった。こうなってみると、去年の夏の職域に事務的なミスで出られなかったのも悔やまれます。どうしてよりによってこの年に。どうしてこんなに運がないのだろう。自分は団体戦との縁がないのだろうか。そんなふうにも思ってしまいます。

 おそらく、同じような思いをされている方がたくさんいらっしゃると思います。大学生だけでなく、高校選手権や総文祭を失った高校生、中学生選手権を失った中学生もそうでしょう。とても他人事とは思えません。

 それでも、こういう状況になってしまった以上、諦めるしかないことなのだと思います。1ヶ月近くかけて、自分の中で沸き起こるいろいろな感情と向き合ってきました。それでも悔しさは余りありますが、またどこかで団体戦にチャレンジできることを願って、今はじっとしているしかないのだと思います。

 こうして3年間を振り返るなかで、改めてたくさんの方に支えられていたことを実感しました。この場で、少しでも感謝をお伝えできたらと思います。

 まず何よりも、ともに大学でかるたに取り組んでくれた同期に、感謝を伝えたいと思います。練習、練習のあとのご飯、大会、時には遠征にも付き合ってくれた同期の存在にずっと救われていたのだと思います。

 そして、私のわがままに付き合ってくださった2人の先輩方、本当にありがとうございました。先輩方のお力なくして、かるた会は成り立たなかったと思います。

 いつも練習に参加して、かるた会の運営にも取り組んでくれた後輩たちにも感謝しなくてはなりません。後輩たちが後を継いでくれたからこそ、これからも未来があります。本当にありがとう。これからのかるた会を盛り上げていってくれたらと思います。

 かるた会の立ち上げにご尽力いただいた皆様、本当にありがとうございました。あれほどかるた界の皆様の温かさを実感した出来事は先にも後にも思い当たりません。

 母校の関係者の皆様にも。今でもたまに集まってはエネルギーをくれる駒69の10人には、感謝してもしきれません。本当に、本当にありがとう。今でもいろいろなご指導をくださる先輩方にも、感謝申し上げます。いつも変わらず接してくれる後輩たちには、たくさんの勇気をもらっています。ありがとう。そして、顧問の先生方。指導者としての成長の機会をいただき、たくさんの経験をさせていただきました。本当にありがとうございました。

 私のかるたとの出会いをつくってくださった師匠にも感謝しきれません。大学に入ってからは高校時代よりも試合したりお話ししたりする機会が増えて嬉しく思っています。

 読手の関係者の皆様。いつも学びの機会をいただき、本当にありがとうございます。皆様のおかげで、私の世界は何倍にも広がりました。

 練習会や大会を通して知り合ったすべての方にも感謝申し上げます。すべての出会いが成長につながったと感じています。

 こうして感謝をお伝えすることしかできない引退は、やはり悔しいとしか言えません。畳の上で皆さんにお会いできる日が1日も早く来ることを祈るしかありません。そのときは、また温かく接していただけたら幸いです。

 入学してからの3年間、いろいろなことがありました。嬉しいことよりも、辛いことの方が多かったようにも思います。同期や後輩がかるたを辞めてしまったり、大会で勝てずに苦しんだり、人間関係に悩んだり。それでも、たくさんの山を乗り越えて今ここにいることを、大学での3年間を、そしてたくさんの仲間を誇りに思いたいと思います。

大学3年間、本当にお世話になりました。

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