読みのリズムってなんだろう?

こんにちは。ずいぶんご無沙汰しておりました。

先日、Twitterのスペースでお話させていただいたときに、「読手をやると競技かるたの読みのリズムが掴めるようになるので、選手としても役立ちます!」ということを言いました。聞いてくださっていた方の中には、「読みのリズムってなんだ?」と思った方もいるかもしれません。ということで、今回は「読みのリズム」とは何かという話をしたいと思います。

競技かるたの読み上げ方

ご存じの方もいると思いますが、競技かるたでは歌を読み上げる速さが決められています。いわゆる「5-3-1-6方式」というものです。これは、下の句を5秒程度、下の句の余韻を3秒、余韻と上の句の間を1秒、上の句を6秒程度で読む、ということです。さらに、「な」「に」「わ」「づ」「に」という1音1音を約0.2秒で読むことになっています。この決まりがあることで、全国各地どこの読手でもおおよそ同じリズムの読みになるのです。

ところで、この記事を読んでいる方の中に、「読手をやってみたけど、なんだか間延びしてかっこよく読めなかった」「読みをやってみたいけど、リズムがうまく取れるかどうか不安」という人はいませんか? 実は、たった一つのことを意識するだけで、格段にリズムよく、そしてかっこよく読むことができるようになるのです。ここでは、そのコツをお教えします。

短歌の自然な読み上げ方

突然ですが、次の歌を声に出して読んでみてください。競技かるたをやっている方なら皆さんご存じの「序歌」です。競技かるたの読みのように節を付ける必要はありません。国語の授業で歌を音読するイメージです。

難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今を春べと 咲くやこの花

どうでしょうか。皆さんは今、こんな風に読んだのではありませんか?

なにはづに(長い間)さくやこのはな(短い間)ふゆごもり(長い間)
いまをはるべと(短い間)さくやこのはな

○は少し間を置くという意味です。「なにはづに」「ふゆごもり」といった五音句のあとには長めの間、「さくやこのはな」「いまをはるべと」といった七音句のあとには短めの間があったのではないでしょうか。このように読んだ人は、実は無意識のうちに八拍のリズムで読んでいるのです。

◇◇◇◇◇○○○
◇◇◇◇◇◇◇○
◇◇◇◇◇○○○
◇◇◇◇◇◇◇○
◇◇◇◇◇◇◇○

◇は声を出す拍、○は間を置く拍です。こうして見ると、長めの間と短めの間を組み合わせることによって、五つすべての句が八拍になるように調節していますね。つまり、短歌を読み上げるとき、五音句のあとには長めの間、七音句のあとには短めの間を置いて、各句が八拍になるように読むと、私たちは自然なリズムだと感じる(人が多い)のです。

かっこよく読むコツ

実はこれは競技かるたの読みにも当てはまります。ここで、競技かるたで序歌を読み上げるときにどのような読み方をしているのかを見てみましょう。画像は大石天狗堂さんから発売されている「読み方かるた」です。

画像1

注目していただきたいのが、伸ばしを表す「ー」です。よく見ると、長い「ー」と短い「ー」がありませんか? 「難波津に」のあとの「ー」は長いですが、「咲くやこの花」のあとの「ー」は短いですね。これは、先ほど説明した自然な短歌の読み上げ方と一致しています。音読では間を置くことによってリズムをとっていたのが、競技かるたの読みでは音を伸ばすことによってリズムをとっているんですね。

下の句の七七の間の伸ばしは長い「ー」になっているので、厳密にいうとそこだけは自然な短歌の読み上げ方とは違っているのですが、それ以外の伸ばしは一致しています。

これはどういう意味なのでしょうか? 賢明な読者の方にはもうおわかりかと思います。つまり、競技かるたの読みをするときに、伸ばしの長短を意識するだけで、格段にリズムがよく、自然でかっこいい読みになるのです。リズムがよい読みというのは、選手にとっても合わせやすく、取りやすいものです。5-3-1-6を習得するのは大変かもしれませんが、伸ばしの長短を意識することならすぐにできます。少し大げさすぎるくらいにやってみて、リズム感を掴むのもいいと思います。読手を始めたい、かっこよく読みたいと思っている人は、「読み方かるた」や「読手テキスト」を見ながら、伸ばしの長短を意識して読んでみてください

※この記事の内容はあくまで読手初心者の方向けの内容です。公認読手を目指す段階の方は5-3-1-6方式などの練習にも取り組みましょう。

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