精神科を目指す人へ

 どうも、はなまるです。今回は精神科を今後専攻しようと考えている医学生や初期研修医の先生に向けて書いてみることにしました。これまでの経緯や今後を見据えてワイなりに考察してみたことを記します。何か質問等あればtwitter(@ksksk16g)に連絡していただければと思います。

<精神科に進んだ理由>

 ワイはもともと祖父が呼吸器疾患で亡くなったのをきっかけに医学部に進学しました。医学部3年生で臨床科目の講義が始まった時、漠然と呼吸器内科に進もうかなと考えておりました。

 しかし、その後講義が進むにつれ、ワイが気になるようになったことは、日本の高齢化が異常なスピードで進んでいること、その中で若年者(=労働者)の健康を維持することが重要であると感じました。高齢化は現在も進行する中で、労働環境は激しく変化し、第3次産業であるサービス業がメインになってきた世の中で若くして働けなくなる人が増えることによる社会の損失について考えるようになりました。そう考えるうちにそういった若年者の健康の維持に繋がる精神科が自分にあっているのではないかと考えるようになったわけです。

 実際精神科の講義を受けた時には、(真面目な学生ではなかったせいかもしれませんが) 何もわからなかったです。今、もう一度講義を受けてみたいと切に感じます。ワイら精神科医が日常診療でよく診る疾患として、統合失調症やうつ病、認知症が挙げられますが、どの病気も原因ははっきりしていません。それぞれ発症のきっかけはありますが、原因不明の疾患を治療しています。そして、現在主流である薬物療法も薬理作用は分かっているものも多いですが、なぜ効果があるのかわからないものもあります。統合失調症に対する抗精神病薬に至ってはドパミン仮説に基づいて考えられているのです。わからないものだらけの分野に進んでみたくなり、精神科に進むことを決めました。

 専門医や指定医を取得した現在に至っても、臨床の悩みは尽きません。むしろわからないことだらけです。だから学生時代にわからないからと精神科を敬遠していた方も改めて選択肢として考えてもらえると幸いです。

 また、ネガティブな専攻理由としては、運動部に所属していたワイですが、いかんせん体力がなく、また視力も悪く、手術を一生続けれるとは到底思えなかったことが挙げられます。当直明けの手術なんてワイには到底ムリです。外科の先生方は尊敬します。

<初期研修のローテートについて>

 まずは必修科を一生懸命学ぶことが大切だと思います。今後専攻しない科は初期研修のうちでしか触れることはできません。精神科を専攻すると仮定してローテート時に最低限学んでおくべきことを記載したいと思います。そりゃ少しでも多く学ぶに越したことないです。ただそれはなかなか限界があるので、最低限をこっそりお伝えします。ここはワイ個人の意見ですのでご了承ください。

 内科系の科では、輸液、抗生剤、糖尿病、電解質異常、心電図、経管栄養、神経学的所見、DNARの説明を学んでおくことをお勧めします。精神科では入院患者さんの全身管理をすることとなります。内科の先生は非常勤、という病院も少なくないためある程度自身で調整できるようになっておくべきです。また、水中毒や横紋筋融解症など電解質異常を含む血液検査データの読み方は知っておいた方が良いと思います。精神科の薬剤ではQT延長症候群を含む不整脈、また急変時の読影が必要なため、心電図もある程度読めた方がいいかもしれません。少なくともこの波形はヤバいというのがわかれば良いと思います。また、今後認知症など高齢者の入院が増えてくることを予想すると、DNARの取得については学んでいた方が良いと思います。精神科病院は急変時に万全とは言えない体制であることが多いです。DNARの説明が上手な先生から初期研修のうちに説明の仕方のコツを学んでおくと役に立つと思います。

 外科系の科では、簡単な縫合手技、、、のみでも構いません。あとは手術からの回復過程を学んでおくと後々どこかで役に立ちます。実際のところワイは縫合を数年しておりません。

 マイナー科では、CT、MRIの読影、めまいの鑑別、軟膏の使い分け、褥瘡は学んでおくと役に立ちます。ワイの初期研修先の病院はローテートする科の選択が豊富にできることが特徴でした。ワイは初期研修2年目に放射線科を3ヶ月ローテートし読影レポートを数百枚作成しました。頭部のCT、MRI、胸部〜腹部のCTを中心に読影させてもらえたことは今でもかなり役に立っています。ローテート先として放射線科はかなりオススメです。精神科をローテートすることに関してはさほど重要ではないかもしれません。よほど良い先生がいれば別ですが、研修中の勉強では薬理の知識も身につきません。少なくともワイはさっぱりでした。

<実際に精神科に進んで良かったこと>

 前述しましたが、体力的には他の科に比べ楽なことは間違いありません。精神的にはかなりきつい日もありますが。また、基本的には9時〜17時の規則正しい勤務となります。呼び出しや急変も他科より少なく、アフター5を楽しむことができます。呼び出しが少ない分、バイトの寝当直をいれることで給料も同学年の他科の先生より多いことがほとんどです。結婚したのちも家族との時間を多く作ることができるため、男性だけではなく女性の先生にも選択しやすい科であると思います。また、指定医を取得するとさらに給料が上がることがあります。メリハリがついていて働きやすいと思います。また、手技が少ないため出産や育児などのブランクがあいても復帰しやすいと思います。

 専門医や指定医といった資格が早い年次で取得できることもメリットと言えると思います。専門医や指定医は現在最短で医師6年目で申請することができます。かなり努力は必要ですが、同時期に申請することもできるので、翌年には専門医と指定医両方取得できる可能性もあります。

 医師という仕事をしながら、自分の時間の確保がしやすいことは最大の利点と呼べるでしょう。最近のワイは育児をしながら、資産形成の勉強も行っています。

<精神科を専攻するにあたり気をつけること>

 近年、精神科の人気は上昇中のようです。内科の専門医の複雑化、女子学生の増加、外科志望者の減少などが理由に挙げられるかと思います。実際東京など都会では精神科医は飽和状態になりつつあると聞いています。なお、ワイ地区も含めて地方はまだまだ引く手数多な状況です。都会で診療を検討されている際には、何か強みが必要になってくる時代が来るかもしれません。専門医や指定医による最低限の能力の担保、サブスペシャリティーの取得など必要になってくる可能性があります。

 次に入局するかどうかについて考えていきましょう。入局におけるメリットは、基礎が学べることだと思います。大学では上級医が他の施設に比べたくさんいます。薬物療法など治療に関するアドバイス、指定医や専門医の指導など得られる恩恵は大きいと思います。いきなり単科病院に就職することは当たり外れが大きくリスキーであると思います。年配の先生ばかりの病院だと、薬物療法に関しても学べないことも多々あると思います。(そもそも指導できる人がほとんどいない場合もあります。) 専門医や指定医は一人の力では合格する難易度が上がると思います。

 デメリットとしては、自由の妨げになることでしょうか。給料が安いことや、就職を考える際に脱医局など考える必要があると思います。

 また、重要なこととして漢方や栄養学に若手のうちに手を出さないことを伝えておきたいです。時々、若手のうちから漢方などにハマりだす先生がおられます。やはりまずは基礎、典型的な薬物療法をある程度使いこなせるようになってから派生の分野に手を出すべきだと思います。薬物療法を学んでいない先生は、漢方薬も栄養学もその他の治療も使いこなせません。

 転科し、当科を選ばれる先生も多いようです。転科される先生はこれまで精神科に対して持っていた知識を一回リセットし学び直す必要があると思います。中途半端な知識を持ったままだとうまく軌道に乗らない可能性があります。また、指定医や専門医の指導を若手の先生に指導してもらう機会があるかと思います。かなり厳しい指導になると思いますので、そこをなんとか頭を下げて教えてもらうこととなります。そこを頑張らないとどちらの資格も取る難易度が上がってしまいますので注意が必要です。

 以上、雑多ではありますが、今回は気の向くままに書き連ねてみました。少しでも参考になればと思います。またtwitterで会いましょう。ありがとうございました。


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