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昭和歌謡アカペラグループ「リストラーズ」に愛を捧ぐ 完 〜ネバーエンディング・ストーリー〜

【この道わが旅】
 長いようでそうでもなかったこの旅。ドラゴンクエスト2のエンディング曲のオーケストラバージョン(知らない方はぜひ聴いてほしい。やたらエモいのだ)が不意に脳内で流れ始め、しばらくは訳の分からない謎の達成感をかみしめていた。

 さすらいの旅の果てに、心に残されたのはもう2度と消せないリストラーズへの大量の♡。
 この想いを、何と名づけよう。
 リストラーズへの想いを私は最初に恋と言った。けれども私の抱きしめているそれは、そのたった一文字で単純に表すことのできない感情に変化していた。今までに感じたことのない熱をもって自分の中で脈をうっているこの感じに戸惑いを覚える。

 ねえ、みんなリストラーズって知ってる?サラリーマンの顔をして大真面目でふざけた動画をアップしているの。昭和歌謡をアカペラで歌う6人組のグループで、全員がとてつもない実力があるのに、全員がそれぞれの個性でリードボーカルができる程に才能の塊のように見えるのに、コーラスに回ると気配を消す。ベースもボイパも職人技で。
 だめだ、こんな言葉ではひとつも彼らという存在を説明できていない。ねえ、リストラーズって最高なのよ。誰か聞いてよ。ねえ!
 
 感情の温度が低かった私はどこに行ってしまったのだろう。人に何かを伝えたいなど思ったこともなかったのに。
 誰かにそうだよね、と言って欲しかった。私の同類を探したかった。

【ネバーエンディング・ストーリー】
 そんな私が新たに旅立った先は、SNSの世界だった。Twitterに趣味のアカウントを持っていた私は、それを使って同類を探した。わりとすぐに幾つかのアカウントを探し当てたものの、自分のアカウントは無言でひたすら写真をアップするだけのもの。フォローするのも美しい写真をアップするアカウントだけ。国籍も性別もわからないように、ついたコメントには短い英文で返すという徹底ぶりだったから、そこでいきなりリストラーズってね!などと騒ぎだすわけにはいかなかった。

 それでもとうとう自らに課しているルールを破ってリストラーズの公式アカウントをフォローし、リストラーズについて発信しているアカウントを幾つかフォローしてしまった。
 そう!それがいいたかった。よくぞ言ってくれた!それらの発信に喜び共感のいいねを送る。
 しかし、それだけでは私の心の中にある想いは外に出られない。
 
 7月ついに我慢の限界がきて、リストラーズの為だけのアカウントを立ち上げる。花畑で蝶々が花にとまっては蜜を吸うように、同じくらいの熱量がありそうなアカウントを嬉々としてフォローしてまわる。リストラーズへの想いのたけを好き勝手に発信できること、それに共感してくれる人がいること、全てが嬉しかった。
 今までの、温度が低く彩の少ないモノクロのような人生に急激にに生き生きとした血が通い、色彩に溢れた世界に自分はいたんだと気づいたのだった。
 
 思う存分リストラーズの世界を語り合える仲間たちができて、彼女たちの呟きに共感し、ある時は新しい気づきを与えられ、胸の内の名付けられない想いの輪郭がおぼろげに浮かび上がり始める。

 感情の温度が低かったのは、温度を上げるに足るだけの量の燃料がなかったのだと知った。リストラーズで温められた感情の温度はなかなか冷めることはなく、それどころか語りたいことが140字の制約を振り切って、とめどを知らなくなくなってきた。だから今ここでこうして駄文を垂れ流すことになってしまっているのだ。

  リストラーズに捧げる愛に名前はいまだつかない。この名状しがたい想いが何なのか、の答えを私はこれからも仲間たちの力を借りて探し続けるだろう。これは、それを探し続ける終わりのない物語の始まりである

And there upon the rainbow
Is the answer  to a never ending story

その答えは6色の虹の上に。
                    完
                    

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