「 #諦めのススメ 」抹 a.k.a.ナンブヒトシ レビュー
「諦めのススメ」抹 a.k.a. ナンブヒトシ(タワーレコードオンライン)
ダイレクトマーケティング。
このnoteは、同い年で知り合いの(友達なんて言う勇気はない)ラッパー、
抹さんこと「抹 a.k.a. ナンブヒトシ」のファーストアルバム
「諦めのススメ」のレビューです。
新しい音楽に出会いたい方や、
抹さんは知っているけど、音楽はどうなんだろうと思っている方や、
最高にアガりたい方の参考になれば幸いです。
あと、抹さんへのラブレターです。
抹さんと最初にお会いしたのは、SCRAPさんのお仕事でした。
最初の印象は「体の大きな優しいお兄さん」程度でしたが、知れば知るほど「何者だこの人は」という印象が強くなっていたことを覚えています。
そうそう、ORIGAMI Ent.さんのメンツを見てひっくり返ったなあ。それなりに初期の頃からニコニコ動画を愛用してきたので、らっぷびとさんだのK’sさんだの、なんて人たちとタメはってんだと。いろいろ分かってようやく「そうか、この人ニコラップ黎明期の人なんだ」と改めて認識。
なんてことを書きながら、グーグル先生で諦めのススメについて検索をかけていたら、こんな素敵な紹介文を見つけました。
「ぼくのりりっくのぼうよみ」「daoko」「電波少女」を生んだインターネットラップの開祖。(C)RS(ビルボードJAPAN)
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こちらは今回のアルバムとは別収録になりますが、
3:25前後の「諦めることを諦めるって決めたんだ」という歌詞は、
抹さんのスタイルを象徴しているな、と感じました。
このアルバムは、そんな抹さんの優しさと脂肪で出来ています。
ではでは、開祖のアルバム、1曲目からレビューしていきましょう。
1. intro ~first business~
このアルバムを買って正解だと、すぐに感じられる一発目。
クソほどカッコいい一言に引き込まれます。
抹さんって、こんなに良い声だったのね。
2. はたらこう
タイトルを見てGAKU-MCさんの「ハタラコウ」を思い出す20代。
GAKU-MCがリアルに人生ゲームの車をすすめるサラリーマンの
歓喜と悲哀を歌ったならば、
抹 a.k.a. ナンブヒトシは夢とリアルを二輪車にしてはたらく男の
苦渋と矜持を歌いあげます。
「嫌な仕事だけどやるしかないよな」という諦めとはまた違う、抹さんのヘコタレない前向きさを表しています。「夢も忘れないけどこの仕事も悪くないぜ」という、踏ん張ってる心持ちがとにかくカッコいい!
しかしこのMV。みんなが割りとカメラに慣れていない中、しっかり画写りを分かっている抹さんが面白い。
3. 諦めのススメ
タイトルチューン。
抹さん自身が走っている、夢の追い方。
夢を追うためにリアルを大切にする、なんて10代の頃には五月蝿く感じた意見の、しかしその難しさを教えてくれます。
ノリノリで力強いリズムとフレーズで、夢だけを追おうとする若造と、夢を追うことを手放しで賛美する老害をぶん殴ってくれるなんて、抹さんは優しいなあ。
アルバム帯の一文と、サビ終わりに鳴り響くお鈴の音色が、この曲をさらに際立たせます。そう、諦められれば、死なないということ。
4. 今夜はブギウギ無礼講 feat.コレガゼンリョクズ
18歳で東京アナウンス学院に入ったもので、またここがきちんと業界の作法を教えてくれるところでして、そもそも無礼講なんて素敵なワードに触れる機会なんてありませんでした。
自分が飲み会でやらかしたことがない、なんて大それたことは申し上げません。「俺もどっかでこんなことしてるのかなあ……」と心配になる程度には、この勘違いサラリーマンの哀しくも愛おしいブギウギラップは、なかなかに胃の痛いナンバーに仕上がっています。明るくゆるいブギに乗せてお届け、するような内容じゃありませんが。良い曲です。
5. HERA KILL TRAX
どうも、サブカルクソ野郎(自称・他称)です。
ゲームミュージックのようなユーロビートは、私の大好物。しかし歌詞の内容は「メンヘラに浸ってないでいいから踊れ」という、強制うつ病治療みたいな曲。
ところで、ニコニコ動画で初期から活動を続けるボカロP・梨本ういさんの楽曲に「死にたがり」という曲があります。
「うつ病きどりの一般人」というフレーズが印象的で、過激な内容でありながら生きることへの讃歌になっている名曲です。
そう、この曲も生きることへの讃歌。
しかし、歌詞の中にあるフリックやタップというワードを見ながら、今はスマホをいじりながらうつ病を気取ることが出来る時代なんだなあと、しみじみ感じました。
6. yrst feat.ハシシ, Jinmenusagi, NIHA-C
男同士ではエロい話をし合うって、割とふつうのコトなんですかね。私は意外とそういう機会が少なくて、たとえば「あの女イイよね!」みたいなことって話したりしてこなかったんですね。草食系と言うには、女性に対する興味は強いので、その分をこじらせてるのかな、とは思います。
この曲は、そんな人間からすると羨ましくなるくらいにストレートな、男の欲望垂れ流しソングです。まあ、HIPHOPはこういう曲が多いわけですが、このアルバムでは一番エロいです。
女からしたら「男ってバカだよねえ」と言われてしまいそうな、でも妙に色気のあるような言葉の洪水。なんにも考えずに口にしたくなる「ヤる?ヤラない?」というリフレイン。ヤれる!じゃねえよ(笑)
ところで抹さん、本当にベッドの上でもすごいんですか?
7. 女々しい男
この女々しさ、共感しか出来ない。
スローテンポに乗せて語られる男の心境は、まさに女々しくて仕方ない。でも、失恋した時ってこれだけダラダラと言いたくなるし、片思いしている時って女の子のことをこれだけ気にしちゃう。
女々しくてといえば、当然ゴールデンボンバーさんの楽曲を思い出しますが、あれに登場する男も相当に女々しいです。あちらがポップに男の嘆きを叫んでいたのだとすれば、こちらは自分の中でグルグルと回っているだけ。言葉にしたくても出来ない、男らしい女々しさを歌っています。
8. skit ~phone call~
ミニコントのようなスキットは、青春ドラマのように曲へとつながっていきます。これPVで観たいなあ。苦虫噛み潰した顔をしている抹さんが観たい。
なにより「はいはいはいはい」ってあの人の話聞いてないバカにした感じ、本当にイラッと来ますよね。きっと、同じことをされたんだろうなあ……なんて想像してしまいます。
9. HIPHOPって何だ?
世の中に抵抗しようとしても抵抗することを許してくれない。
抵抗していたはずの「仲間たち」はいつの間にか群れをなして縮こまっていたり、病んで止めて逃げていた。反逆へのヘイトを謳うやつらは、自分たちへ反逆する奴らをヘイトしていた。
反逆の音楽を歌おうとしても、反逆することの意義を失いそうになる時代。その悔恨に、HIPHOPは応えてくれるのか。
抹さんは、HIPHOPを続けることで出来た味方や敵やそのすべてを飲み込んだ上で、敢えて問いかけます。俺はここに立っている、お前はどこに立っているんだ、と。
10. Afterword to Kureha
このアルバムはどれも最高にかっこいいですし、最高に気持ちいいんですが、エモさはこの曲が最高です。
まず、イントロから流れる、泣きたくなるくらいに心地よい笛の音が、スタートから一気にエモさ全開にしてくれます。
リリックもエモさ満載。あの日描いた夢と、今描いている現実は違うかもしれないけれど、今もあの日の夢を描こうともがく姿を歌います。
やりたいことがあって、やれることがあったとしても、それが繋がるかどうかはわかりません。何が現実で、何が夢幻なのか。その答えが正しいのか間違っているのか、判断する前に飛ばなければいけない。いや、飛んだほうがいいのです。逃げない方が、きっとカッコいいですから。それはきっと、あの日描いた夢のなかにいる自分に、きっと近づいているのです。
11. outro ~fin?~
うん、これもエモかった。
K'sさんはどうしてこうもエモくさせるのが上手いのか。
12. to be continued!! feat.ORIGAMI Ent.
さあ、ORIGAMI Ent.大集合の楽しい大団円です。
ニコ動で観たことがある名前がたくさん並んでいて、私はもう大喜びです。
あるきょーさんとブルスコファー薺さんから始まる、終わりを終わりと感じさせない勢いとリリックの洪水に、まずは圧倒されます。
個人的な話になりますが、あるきょーさんと薺さんを知ったきっかけが「ジャストビーエル」という、まあひどい「歌ってみた」でした。興味のある方は検索していただければと思いますが、自己責任でお願いします。
それで、私の友人2人がこの曲を良くニコカラで歌ってまして、それでお名前を知ったんですね。ちなみにその友人の友人、一度お会いしたことはあるんですが、先日AMBに出てたそうです。不思議なご縁。
ここまででも十分すごいんですが、抹さん・Romonosov?さん・らっぷびとさんが出てきてからのボスラッシュ感。ここぞとばかりにアニメネタを放出しまくる抹さんに、ピー音ですらリリックに聞こえるRomonosov?さん。そして王道をバッチリ決めてくるらっぷびとさん。この1曲聞くために買ってもいいとさえ思えました。買ったあとですけどね。
サビなんて楽しくて楽しくて、最後のワンフレーズなんてつい口ずさんてしまいます。アニメのエンディングみたいなのは、抹さんの好みなんでしょうかね。とにかく、良いアルバムだったね……と締めてくれることうけあいです。
以上、レビューでした。
参考にしてもしなくてもいいので、さっさと購入してしまいましょう。
2500円に消費税で、これだけ濃厚なリリックと音楽が聞けるなんて贅沢。
そしてキメキメの抹さんが載ったジャケットまでついてくるんですから。
是非、お買い求めください。
「諦めのススメ」抹 a.k.a. ナンブヒトシ(タワーレコードオンライン)
最後に。
抹さん、俺あんたのこと好きです。
なかなか会いに行けないけど、
同い年で踏ん張ってるカッコいい男として、
そのまんま走ってください。
そんで、また仕事させてください。
俺ももっと売れるから、
あなたも、今よりもっと売れてください。
言われなくても、売れてくれるでしょうけど!
フリーランスで活動しております。ご支援いただくことで、私の活動の幅が広がり、より良い言葉をお届けできます。よろしくお願いいたします。