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「報恩講」――為された恩を知る――

 浄土真宗において、宗祖の親鸞聖人(1173-1262)への感謝の気持ちを表すために、約7日間勤められる法要が「報恩講」です。
 
 親鸞聖人が遷化されたのは旧暦11月28日でした。この旧暦11月28日が新暦では1月16日となるため、西本願寺様では1月9日から16日まで、東本願寺様では11月21日から28日まで報恩講が営まれるということです。
 
 仏教語「報恩」のサンスクリット語原語の一つに「クリタ・ジュニャ」があります。これを直訳すると、「〔自分に対して〕為された恩〔がどういうものであったか〕を知る」となります。この「クリタ・ジュニャ」の漢訳語には「知恩」というものもあり、浄土宗の総本山知恩院でも知られるように、むしろこちらのほうが馴染みのある語かもしれません。
 
 ところで、「為された恩を知る」とはどういうことでしょうか。たとえば、わたくしなどは、親から受けた恩でさえ、歳をとってからやっとそのごく一部を思い知るといった程度です。また、これも歳をとってからですが、学生時代に指導教授から頂いた何気ない言葉の断片が、最近、不思議な重みをもって思い出されたりするようになりました。
 
 わたくしが仏教を教わったある先生は、「わたしたちは為された恩を知ることはできない」と教えてくださいました。そして、知ることができないほど多くの恩を頂いて、いまわたしたちが生きていることを想像してみようと言われました。
 
 報恩、知恩といった言葉を目にしますと、いつもこの教えを思い出します。
 
2023年1月16日
(通雲)
 

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