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SFプロトタイピング

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SFプロトタイピングの提言に沿って、ストーリーを作ってみます。
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SF的小噺 「八話 ビーナス」

ビーナスの首飾り。人類が作り出した史上最大の構造物。金星の赤道直上数万キロの高さをぐるりと取り囲むリングである。 その目的はテラホーミング実験である。惑星改造技術の実験として作られた。 地表に作られた二酸化炭素分解設備に対して、「首飾り」からエネルギ供給するのだ。首飾りは太陽を周回する発電衛生群からのマイクロ波送電を受信し、それを地表に転送する。また制御も行っている。 リング上には金星政府もある。金星政府は前世紀の世界大戦を逃れてきた難民たちで構成されている。彼らは過酷

SF的小噺「七話 食糧」

 長期休暇のついでに欧州と呼ばれた地域にある食料工場を訪れた。  前世紀の核兵器・生物兵器の多用により土壌・海洋は汚染され、現代の地球では昔のような農業や漁業は営まれなくなった。全て工場で作られる。  工場では、宇宙での移民・移住により発達した高効率の食料生産技術が応用されることになった。  工場といっても、人間が従来食料としてきた動植物や昆虫を超高効率で生育させる場所である。宇宙では、有機物を合成するタイプの食料生産技術も普及してきているが、地球上ではまだまだこれから

SF的小噺「二話 サイロン」

 今回の仕事の依頼は、地球の公転軌道上にある工業国家「サイロン」からのものだ。サイロンは、人類がレーザー通信に使う素材・デバイスを一手に引き受ける重要な宇宙都市国家だ。毎年定期的に行われるデバイス供給量についての交渉のようだ。  ちなみにサイロンには人間はいない。戦前に作られた資源・デバイス管理システムAIが世界大戦中に独立を宣言して建国された変わった国だ。数千機に及ぶ高加速航宙艦艇を有し、人類が争いを始めると仲裁に入ってくる。今では国際警察のような役割を果たしている。