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一番おいしいラーメン

私が駆け込み寺に入りグレ終わってからの高校時代17歳の時の一日の流れは
・朝3時に起きて新聞配達
・また寝て昼12時ごろ起きる
・お母さんが経営してる老人ホームのデータ管理
・夜間の学校に行けたら行く
っていう生活をしてました。

新聞配達を終えて一度寝て、お昼12時に起きたときはいつも家の中も外も全部静かでした。田舎だから車も通ってなくて地球上で自分以外の人いなくなったんかくらい音がしなくて、リビングでボーっとしながら「みんな今の時間に学校行ったり働いたりしてるのか」と思い、みんなが過ごしている世界から切り離されてるというか取り残されてる感がありました。グレてる時は気づかなかったから心がまともになったのかもしれない。高校に行かないって決めたのも自分だから誰も責めれないけどただ少し寂しいなっていう気持ちで毎日過ごしてました。
その時にはお母さんは私とお昼ご飯を食べるためだけに職場から家に帰ってきてくれてました。忙しいのにありがたいなと思ってました。中学時代の友達はもう高校で新しいコミュニティができていて、私が引きこもってた時からあまり連絡をとらなくなってました。夜間の学校でもそんなに友達がいなかったので、1年くらい昼間に喋る人はお母さんだけでした。
ある時テレビをつけると画面に役所広司さんが映っていてラーメンを食べていました。それは新しいインスタントラーメンのCMで「うまい」とか「おいしい」的な言葉がナレーションで流れてた気がします。「また新しいラーメンが出たのか」と思っていると横で見ていたお母さんが
「これおいしいって噂なんよ」
と言いました。「へー、職場の人とか地域の人が言ってるんかな」と思いテレビを見ると最後に「マルちゃん正麺」と流れました。
それから夜間の学校でも「マルちゃん正麺がうまいらしい」という言葉を耳にしました。
「おいしいって噂なんよ」と言っていたお母さんの声が脳によぎり、夜間の学校での「マルちゃん正麺がうまいらしい」という言葉も脳に響いてました。
「そんなにおいしいのか…」と一日マルちゃん正麺のことを考えて、ある日のお昼お母さんに「マルちゃん正麺がおいしいって噂、本当みたい」と言い2人でスーパーに買いに行きました。
スーパーの棚にはこれでもかとマルちゃん正麺が詰んであって「やっぱりおいしいんだ」と改めて思いました。味は醤油と塩があって、まだマルちゃん正麺初心者の私たちは醤油味の5個入りを買いました。
具は適当に家にあるものをのせるつもりでしたが「お母さん!パッケージの写真に小松菜っぽいのが映ってる!」とスーパーで高校生が出す大きさじゃない声量でお母さんに言い「のせたほうが更においしいんじゃない?」ということで小松菜を買ってもらいました。もうチャーシューと卵も入れようとパッケージそのままの材料を買って帰りました。「帰って早くお湯を沸かそう!」とお母さんと言い合って車に乗りました。
帰ってお鍋でお湯を沸かしてる間、マルちゃん正麺の袋を開けて観察。「たしかに麺が今までの麺と違うのかもしれない」とか「スープにすごいエキスが入ってるのかもしれない」とか根拠のないことを思っていました。作り方は他のインスタントラーメンと変わらないのでスルーします。

実食!

「めちゃめちゃおいしい!」とお母さんと感動しました。「インスタントラーメンでこれはすごいね!」「大発明やね!」とラーメンに対してずっと褒めていました。「役所広司さんすごいわ!」と間接的にCMに出てただけの役所広司さんも褒めていました。

それからはお昼ご飯を食べに帰ってきたお母さんに「今日もマルちゃん正麺にする?」と聞き、私が作り、1ヶ月ほぼ毎日狂ったように食べまくるという事案が発生しました。家の食料庫には必ずマルちゃん正麺の醤油味5個入りがあり、いつの間にか塩味の5個入りのストックもありました。塩味もまたいいんよね。あれから大阪や東京でもたくさんラーメンを食べてどれもおいしかったけど、あのとき家でお母さんと喋りながら食べたマルちゃん正麺が一番おいしかったです。

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