障子とハードル

クラスの保護者作成日は、地域の公民館などを事前に申し込むシステム。忙しい相棒と都合の合う午前の半日を借りた。

自分が完全におうち大好き人間なもので、公民館の部屋って意外と予約でいっぱいなんだという事をその時初めて知った。手芸サークル、踊りのサークル、幼児のママの会…、勝手に年配の方ばかりのイメージを抱いていた自分を少し恥ずかしく思った。みんな上手に安く楽しい時間を過ごしているんだなぁ。

そんなわけで、予約に関しては相棒が動いてくれたのでおまかせ状態だったが、その日しか適した日が無くこの時間内で頑張ろう!と早目に行き準備をした。

受付のおじさんに注意と説明を受け、気を付けながら初めての場所でセッティングしていく。少し6月の暑さも出始めた頃だったので、エアコンを入れつつ換気で窓を開けようとしたら建て付けが微妙だったか私が不器用だったか障子を一部破ってしまった。

破ったら自分で直していただきますの説明が心の中で高速回転を始める。私は昭和の女、障子を直すことは最低限作業可能だ。なんなら貼り替えてもいい。問題は、なんで落ち込む原因を最初に作るかな私はっ!!と自分を責める時間が始まる事だった。いけない、時間は3時間しか無い、青い顔を隠しきれないまま相棒に終わったら謝って自分で直すから、と弱々しい笑顔で伝えちらほら来始めた保護者の皆さんと挨拶し軽い説明をする。

昨年のクラスでもこういうバザー作成の場はあったが、私は参加しなかった。参加したくないばかりに、でもまるっきり協力しないのも意に反すると各自宅で引き受ける作成物の為にミシンを買ったくらいだ。

下積み経験の無い者がいきなり筆頭に立って団体を動かす状況への人見知りの挑戦は、どんどんやってくる保護者の雰囲気が少し力を抜かせてくれた。私が参加してこなかった茶話会とかランチ会とか、こんな感じなんだ、なんだ、こわいところじゃなかったね。あんなに頑なに拒まなくてもよかったね。

内の自分に声をかけつつその場は障子の事を忘れるくらい和やかに作業が進んで行った。3種類の作成があったため3班に分かれたテーブル内でのやり取りも人を身近に感じ、また私の心を緩めて行ってくれた。バザー委員は2人しか居ないので、3つの内1つのテーブル作業のリーダーを引き受けてくれた経験者の保護者のアドバイスもまた、的確な内容で本当にありがたかった。

作成数はざっくりとした目標で伝えてあったので、少し足りないくらいで時間が終了した時に、半日しか借りてないの?という声が上がった。その人は悪意で言ったのではなく単純な質問だったのかもしれないが、ごめんね、いっぱいで借りられなくて…と言いながら激しく申し訳ない気持ちともっとこういう細かいところまで気付くための経験値の無かった自分への悔しさがまた心を押し潰しそうになる。更に最初に破った障子の事も思い出しどんどん気持ちが坂を転がり落ちた。

みんなで協力して綺麗に片付け、全員が出たところで障子を直す覚悟と共に受付のおじさんに謝りに行った。

『正直に言ってくれてありがとう、破っても黙って帰っちゃう人ばかりなんですよ、こちらで直しておくから大丈夫、気にしないで』

泣くかと思った。色々な凹みを一瞬で修復された。おじさんありがとう。好きになりそう。
地に頭がつくかというくらい頭を下げて丁寧にお詫びとお礼を言い、ママチャリに大量の荷物を積み帰った。狭い賃貸の我が家に、品質チェックをしながら数ヶ月預からねばならない。

メンタルに振り回されつつも結果的に良い時間を過ごせたなと、ひと山越えた後の帰宅のペダルは軽かった。


#バザー


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