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本心とハードル

バザー終了後、売れ残った品の処分方法や、次も使う備品をいかにわかりやすく保管するか、前年からの反省を生かし自分たちなりに翌年の委員へのわかりやすさをめいっぱい詰めて、ダンボール数箱に残した。

全てを幼稚園の保管場所に引き渡し、ゴミも片付けて、普段過ごしたホールのステージの端に物が無くなって、ああ終わったんだな、と実感した。

委員全体に感謝と今後の予定について連絡する。私は収支報告や翌年用引き継ぎファイルの仕上げもあるが、例年委員には最後にアンケートをお願いしている。委員をやっての感想、反省点を、正直に書いて欲しいということを伝えた。ぶっつけで委員長をやったので反省点は山ほどあるし返ってくるのが恐ろしいけれど、本心を書いてもらうことが次へ生かすための最良と信じて前年までの記名式を無記名式に変更しようと決めていた。

委員とお手伝いの係の方からたくさん返ってきたアンケートの用紙を確認する時は深呼吸した。

こわい。
自分で決めておきながらこわい。

人は匿名になると言いにくいことも言えてしまう。アンケートをきっちり確認するのは私と翌年以降のファイル保管者だけなので、今戻ってきたアンケートを見て矢を受けるのは自分だけだ。厳しい言葉もあるかしら。1人で刺さった矢を抜けるかしら。いやいや、ここに書いてあることは私個人へのクレームではない…けれど…痛手は負うだろう…

大きく息を吐き出して1枚1枚丁寧に読み込む。結構みんなみっちりと書いて文字の欄を埋めてくれている。匿名にしたけれど、ああこの人は委員だな、この人は係だな、というのは文面の温度差で伝わった。

自分が必死になって動いていたシーンを、そう見えていたのか…全然逆なのに…という意見が数点あった。これは私が至らなかった部分も大きいのだろうけれど、本当に人に伝えるのは難しいことなんだなというのを再実感した。

全てを読み終えて紙の束を纏め、ファイルのポケットにしまう。委員長ファイルにざっくりとした反省や次に生かせそうなことを要点で纏めたものを書面化し、折れかけの心を励ます。そう、これは次に生かすため。みんなにもそう伝えた。次に生かすために、正直に書いてください、と。だから、それを次に伝えるのが私の仕事。

私は出来るキャパを超えて精一杯やった。
それでも伝わらないことはある。
それでいい。無事にやりきった。それでいい。

バザー当日に、保護者の会の会長さんから労いのメッセージを貰い、何度かやりとりした中で自分がきちんと出来ていたか自信が無い事を漏らしたら、

『出来ていたよ!私は見てたよ!!』

と返事が返ってきた。私は見てたよ!!の言葉の力強かったこと。実際見ていて頑張ったねと言ってくれる人がいるということ。
とても嬉しくて、私も頑張っている人に、見てたよ、頑張ってたの見てたよ、って自然に伝えられる人になりたい、そう思った。頑張っている人に気付ける人生でありたい。伝えられることを伝えずに後悔しないように生きたい。

伝えることの難しさ、伝えられることの有難さ。

難しくても伝えたいし、伝わることは嬉しい。今回伝わらなかったとすれば、次はどうするかだ。このバザーにおいて私に次は無いけれど、記録を残すことは次のバザーに生かせるし、もしまた自分がうっかりこんな立場になった時、この反省を生かせることが経験を生かすということだ。

この半年、心折れた分だけ立ち直った。
折れた部分を切り捨てることも学んだし、上手に切り替えて修復することも覚えた。

思いがけずついた委員長の役職は、コミュ障に新しい世界を見せてくれた。ママ友も居ない、園のどのコミュニティにも属していない、最低限の関わりで良いと思っていた私が、色んな人に声をかけてもらうようになり、幼稚園ママっぽいことも経験できた。

正直現在も人との関わりは薄くていいと思っているし、目立つ役職はもうやりたくないと思っている。

でも、この半年経験したことは、悪くなかった。全部貴重で、全部楽しくて、全部大事な経験だった。色んなことをひっくるめて、私に手を抜かず最後まで無事にやり遂げたという自信もくれた。薄い関係でも良くしてくれるママ友もできた。

経験値を上げた。
このひとつの自信は、とても大きい。

この歳になって大きく成長する機会なんて無いと思っていたけれど、良い経験をさせて貰った。関わった全ての人に感謝しつつ、いっぱいいっぱいだった委員長のお話は終了する。

拙い文章を読んで下さった皆さまにも、感謝。

#バザー

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