山とハードル

トートバッグにもりもりのハードルを、ファイルに認識するところからその年のゴールデンウィークは始まった。

闘うにはまず敵を知れ。
敵と呼ぶには悪役感無しではあるが、最終的にバザーを成功させる為にはひとつひとつ闘ってクリアしていくしかない。
経験値0からのスタート、むしろマイナスからと言ってもいい横の繋がりの無さ、ご厚意で前任者が園外での引き継ぎの機会を設けて下さるというので、副委員長と共に助けて貰う事にした。

しかし、引き継ぎしようにもわからないことがわからない。まず知らなければ始まらない。素人過ぎる。
狭い賃貸の部屋にファイルを並べ、最新の情報から読んでいく。追われるように次々と確認していく。急がないと、急がないと…、最初の作業に取り掛からねばならない日まで時間が無かった。
なるべく早いうちに全体像を掴んで、ファイルから読み取れない事への質問を箇条書きで纏め引き継ぎに備える。ざっくりと自分の準備が整った辺りで副委員長にもファイルを一部貸し、私が気付かない部分を補って貰った。

ついつい1人で何もかも抱え込んで1人で解決する生き方をしてきた私には、これが新鮮だった。たまたまかも知れないが、良い感じに私の視点とまるで違うところから同じファイルを捉えていく彼女が女神に見えるくらい、私の足りない部分を補って貰った。
他人の視点がこれほどありがたく大切なものだと感じた事がそれまで無かった。1人で抱え込む癖の力を抜こうとそっと心に誓った。

ずっとやってきた生き方はそう簡単に変わるものでは無いが、この年になっても誰かに教えてもらう事がたくさんあるなぁと自分を省みて、社会から離れて長いせいか忘れてたけど仕事するってこうだよねと思い出したりしていた。
まあ報酬はプライスレスなものしか無いので完全にボランティアなのだが。

元々大きなことと家事との両立がうまくやれない呪いがかかっている私は、この最初のバザーの山を越えようとした頃、新しく最初の『乾いた洗濯物の山』を作っていた。

この山は高尾山だったり富士山だったりエベレストだったりしながら、半年間ずっと私について回るのである。

#バザー

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