第54回細胞検査士資格認定試験⑨

【体腔液・尿・その他3】1〜5問


答えは太字

1.自然尿の細胞診について正しいものはどれですか.

A.尿路上皮内癌と高異型度尿路上皮癌の鑑別が可能である. 
B.低異型度非浸潤性乳頭状尿路上皮癌では血管間質を伴う乳頭状集塊が高頻度で出現する. 
C.高異型度非浸潤性乳頭状尿路上皮癌では壊死性背景がみられることがある. 
D.反応性尿路上皮細胞では著明な核小体を認める. 
E.扁平上皮癌と尿路上皮癌が混在したときは扁平上皮癌と診断する.


尿路上皮内癌と高異型度尿路上皮癌の鑑別は困難なことが多い。

扁平上皮への分化を伴う腫瘍細胞のみで構成されている場合→扁平上皮癌
腺上皮への分化を伴う腫瘍細胞のみで構成されている場合→腺癌

扁平上皮への分化を伴う腫瘍細胞+尿路上皮癌細胞→扁平上皮への分化を伴う尿路上皮癌

腺上皮への分化を伴う腫瘍細胞+尿路上皮癌細胞→腺への分化を伴う尿路上皮癌


肺の小細胞癌に類似した組織像を示すものは多くで尿路上皮癌と併存しているが、小細胞癌の多い少ないに関わらず、小細胞癌とする

以下、反応性尿路上皮細胞などについて簡単にまとめました。

①反応性尿路上皮細胞
結石
増殖性膀胱炎に起因することが多い
N/C比増大
大型核小体

クロマチン微細
核形不整が軽度
細胞集塊の結合性強く、重積生に欠ける
集塊を形成する細胞核にばらつき、突出がない

②反応性尿細管上皮細胞
ネフローゼや糖尿病性腎症など高度の腎障害で出現
通常の尿細管上皮より大きく、類円形やホブネイル状
N/C比増大
大型核小体
時に細胞質空胞(卵円形脂肪体)
細胞質の長軸に対して線を引くと極性がある
通常の尿細管上皮との間に移行像
細胞質内にリポフスチン/ヘモジデリン顆粒
円柱と一緒に出現

LGUCは細胞異型乏しく、細胞が剥離しにくいため血管結合織を伴うような大型の細胞集塊の尿中への出現は稀です。

2.泌尿生殖器腫瘍について正しいものはどれですか.

A.淡明細胞型腎細胞癌の肉眼像は黄白色調を呈する. 
B.集合管癌は最も頻度の高い腎悪性腫瘍である. 
C.ジクロロメタンへの暴露は膀胱癌の発癌に寄与する. 
D.セミノーマは放射線感受性が低い. 
E.尿膜管癌の多くは膀胱頂部に発生する.

腎癌
70〜80%→淡明型腎細胞癌
10〜15%→乳頭状腎細胞癌
5%→嫌色素性腎細胞癌
1%→集合管癌

淡明型腎細胞癌
・近位尿細管上皮由来
・約6割にVHL遺伝子変異
・肉眼的に黄色調を示すこと多い

尿膜管癌
膀胱頂部の胎生期遺残物である尿膜管に発生する稀な腫瘍
ほとんどが腺癌
①腫瘍が膀胱調部にあること
②腫瘍と周囲膀胱上皮の境界が明瞭であること(膀胱壁浸潤例除く)
③他臓器原発腺癌の膀胱転移や浸潤が否定されること
3点満たせば尿膜管癌

ジクロロメタンは胆管がんのリスクファクター

セミノーマは放射性感受性が高い

3.乳腺良性病変の細胞診について正しいものはどれですか. 

A.乳管内乳頭腫の細胞集塊辺縁では細胞のほつれが目立つ. 
B.乳管腺腫ではアポクリン化生の成分を認めない. 
C.乳腺症ではメラニン貪食組織球が目立つ. 
D.筋上皮腫の筋上皮細胞は細胞質淡明化を示す. 
E.腺筋上皮腫では腺上皮細胞と筋上皮細胞の増生が目立つ.


細胞のほつれなど結合性の低下は悪性病変で見られることが多い
乳腺症では好中球の浸潤が目立つと思います

4.乳房パジェット病について正しいものはどれですか.

A.軟骨化生を認める. 
B.腫瘍細胞は乳頭の表皮内を進展する. 
C.腫瘍細胞にメラニン顆粒を認める. 

D.細胞質内小腺腔を認める.
E.腫瘍細胞は CK8 陰性である. 

乳房パジェット
非浸潤性乳管癌が乳頭・乳輪の表皮内に進展したもの
難治性のびらんや湿疹性紅斑をきたす
中高年女性に多く、乳がん全体の約0.5%
細胞質内にメラニン顆粒を認める

5.甲状腺疾患について正しいものはどれですか.

A.バセドウ病を細胞診で判定することは困難である. 
B.腺腫様甲状腺腫は多彩な細胞像を示す. 

C.慢性甲状腺炎では, 全周性の被膜形成が観察される. 
D.濾胞腺腫では Sanderson polster が観察される. 
E.プランマー病はほとんど悪性腫瘍である.

バセドウ病は血中の甲状腺ホルモンなどを測定して診断されていると思いますし細胞診で判定はしない。

腺腫様甲状腺腫は石灰化や嚢胞性変化などを伴い、肉眼的にも組織的にも多彩である。

周囲との境界明瞭な皮膜形成されるのは乳頭癌

Sanderson polster が観察されるのは腺腫様甲状腺腫

プランマー病は腺腫様甲状腺腫で稀に自律機能性を示し、甲状腺機能亢進症が起きた時の呼び名
甲状腺腫瘍は基本的にホルモンを分泌しないが、腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰
分泌することでTSH分泌抑制がかかる。その結果甲状腺機能亢進症になる。

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