こゆびびび

よる

よるだった。ぼくらの まわりには にじいろの光が 満ちていて、じぶんの体も、あのこの目も、くっきり 見えた。とても 明るかったんだけど、なんでか『よる』だって わかった。

ぼくらは 水のうえに 浮いていた。きらきらゆれる水から、ほんの少しだけ うえのところに。ならんで、すわって、手をつないでた。ふたりきり。ことばは なにも 出てこなかった。そんなの いらないと思った。

にじいろが 逃げてく。どうやら 朝がきたみたいだ。光がどんどん 黒にぬりつぶされる。『またあした』はじめてきく あのこの声。ふりかえったら、となりにはもう、だれもいなかった。とりのこされた 右の手。ぼくは 水にしずんだ。

かれこれ2年くらい前に書いた文章です。

この世界観がけっこう気に入って、いろいろと関連・派生作品を考えたり、実際に作ったりしています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?