「種明かし」はマジックを殺せるか?

よく「種を知っていたら、つまらなくなる」というセリフを聞きます

私はこの考え方があまり好きではありません
実際、優れたマジックが「種を知った」程度のことで色あせることってありますか?

適切に演じられるエキボックはその原理を知っている人ですらひっかかりますし
適切に演じられるミスディレクションはその原理を知っている人ですらひっかかります
キーリングを知っていてもリングは繋がったように見えますし
スムーズに行われるマトリックスはマジシャンですら煙に巻きます

マジックの原理は数えきれないほどあります
1つ2つ知ったところで別のトリックを使えばわからなくなります
そして数百数千のトリックを知ったあとは逆にその知識の多さゆえ
そのどれが使われているかが瞬時にはわからなくなるものです
まったく同じ外見から使用できるトリックが山ほどあるからです

そもそも「知っただけで全てが理解できる」なら
我々は学校のテストで苦労しなかったでしょう
知っていても、そこで使われているものがすぐに引き出せないからこそ
我々はテストで悩んだのです

「知っていていればすぐにわかる」のは
公式通りのまま演じているか
単純に技術が低い場合だけです
なんの工夫もなく、ベタなトリックをベタなまま演じていたり
稚拙なレベルのまま演じられているからです

マジックは
単体のトリック自体は知っていても
手順構成を知らなければ
初見でなかなか見抜けるようなものではありません

練り上げられた手順のトリックが、複雑に絡み合った上に
高く洗練された技術で行われ、巧みに心理誘導され
優れた演出までついて語られたものが
ただ断片的なトリックの知識があるだけで、全てわかる
そんなことはあり得ないのです

種明かしをする人がやれるのは公式までです
マジシャンが公式を知っている人であっても楽しめるような工夫を加えている限り
種明かしがマジシャンのトリックを全てバラすことは不可能です

ですから
種明かし【ごとき】がマジックの魅力を無くすなんて
できないのです

「種明かしをされたら、マジックがつまらなくなる」
と言われたら
私はこう言いたいです

「マジックをなめるな」と・・・。

つづく

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