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ニューヨークの不動産業は差別との闘い

これだけ人種が入り混じってるニューヨークという所でビジネスをするのは本当に難しい。
アメリカでの法律は州ごとに違うが、ニューヨークは特にリベラルで民主党の多い州だから人種差別には厳しい。

不動産売買や賃貸における差別から市民を守るルールもどこの州よりも多い。
私も法律に関してそんなに詳しい訳ではないが、不動産業としてライセンスを維持する為に毎年ニューヨーク州の移り変わる法律についていける様に何時間もの講習を受ける事が義務付けられている。

肌の色の差別なんてベーシック中のベーシックで、それ以外に差別禁止項目が何十種類もある。

不動産で気をつけにといけないのはエリアごとにどう言った人たちが住んでいるかとかコメントをつけるのはご法度。例えばこの辺は富裕層が多く、学区も良いですよとか・
それ以外にも賃貸広告を出すときに ”ファミリー向け” とか ”女性におすすめ” とかジェンダーや結婚のステータスなども質問出来ない。。ファミリー向けと謳うと家族がいない人に対しての差別になるからだ。

女性向きと言う言葉もダメ。男性は住めないのか?と言う問題になる。

職業差別もダメで幾ら収入があったとしても、ミュージシャンだとかと言う理由で入居を断ってはいけない。

障害者向けの人に対する言葉使いもかなり厳しい。
ハンディキャップなどと言う時代遅れな差別用語を使うことはもってのほか、、
車椅子の人、、と言うこともダメで、車椅子に乗っている個人というニュアンスでないといけない。

今日の賃貸アパートの内見でハーレムに住んでいるミュージシャンとダンサーのカップルが来た。ちょっと笑ってしまうくらいいかにもアーティストという身なりで
このアパートの位置する保守的なエリアではかなり浮いている。
でもそこそこ成功してるアーティストらしく、二人の年収は1300万円くらいあるらしい。クレジットスコアもいい感じ。

しかし、何となくこのビルではかなり浮くタイプのカップルである事は違いない。

普通このタイプのアーティストは収入はそこまでないパターンが多く、プラス正社員の様に定収入ではないのでニューヨークでは入居審査に通るのが難しい。

彼らはそれを承知の上、自分の両親を連帯保証人につける為の書類も用意していた。彼女の両親は年収3000万は余裕で越すらしい。という事でちょっと強気モード。最初見せた物件より断然高い方の物件が気に入って、そちらで決めたいという。(ちなみに家賃は38万円ほど)。まーー保証人もいて全ての収入証明を出せるなら断る訳には行かない。

リースオフィスに戻っていつも一緒に働いている担当の彼女に会わせると彼女もギョッとしていた。それくらいぶっ飛んだ身なりだったのだ。彼女は白人のタップダンサー、彼氏はバリバリアフリカ系のベースプレイヤー。まるでライオンキングののショーから出て来たかと思うくらいカラフルな出で立ち。
その上さらにカラフルなインコ鳥を連れて来ていた。(このパターン初めて、鳥連れてアパート内見くるか?)

リースオフィスの彼女はドン引きしていたが差別的な事は一切言わず、上手くかわしていた。でも彼らの職業と収入を聞いた時に、彼女は余計な事を言ってしまったのだ。「アーティストは低収入もなく大変よねー、頑張ってもミリオンとか稼ぐっていうのは無理よね〜」的な。。。私自身もちょっとそのコメントはどうかなと思ったが、そのあとの手続きはスムーズに進んだ。

しかし、彼らが去ってから20分くらいしてから私にメッセージがきた。
『先ほどのオフィスの人のコメントに酷く傷ついた。私たちは成功している高収入アーティストだし、私の両親はマンハッタンに3億のアパートを持っている。彼女がいう様な貧乏なアーティストと一緒にしないで」とかなりお怒りの様子。

ニューヨーク州の規定でアパート内見の際に州規定の「差別禁止フォーム」にサインをしてもらわないといけない。それにサインして貰った直後だったから余計に、あのフォームにかなり反した行動じゃないかと抗議して来た。

まずい、、これは下手すると裁判沙汰になって私もライセンスを失うかもしれないしオフィスの彼女の立場も危うい。

まずすぐにそう言う気持ちにさせてしまった事を謝罪した。

その後すぐにオフィスの彼女にその事を伝えた。

続く。。。。


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