ボスデータ作成のバランス【魔法学園RPGハーベスト】

 TRPGのシナリオを自作するとき、ボスエネミーのデータの構築で悩むことはございませんか? 僕はあります(即答)。強すぎればPCを全滅させる可能性もありますし、弱すぎれば満足に最終戦闘を演出できない可能性があります。特に魔法学園RPGハーベストは、慣れていないと魔法で攻撃力や防御力がどれくらいになるのか分かりずらいのもあるのか、自作シナリオ作成においてボス作成がネックになるとの声も聞きます。
 本記事では、そんな魔法学園RPGハーベストのオリジナルシナリオを作成する際のボスエネミーのステータスバランス目安、大魔法バランス目安を、2つの難易度ごと(初期作成(アマリリスも含みます)、院生)に分けて記述したいと思います。あくまで筆者の意見であるのでご注意ください。本記事が通常のシナリオの作成時や、ディスコードグループで開催が準備されているイベント「ドロシーインフィニティ」制作時のご参考になれば幸いです。
 また、本記事の目的は、ハーベストのシナリオ制作初心者が「うっかり強すぎるデータでPCに勝ってしまう」「逆に弱すぎて勝負にならなかった」という状況をできるだけ防止することです。既に何度かボスエネミーを作成しており、何となくバランスを掴めている方にはかえって不要であると思います。
 最後に、使用時に注意した方が良い魔法一覧を書きました。迷ったときのご参考になれば幸いです。
※本記事の前に、公式サイトの「ゲームマスターパート>エネミーデータの作り方」をご参考ください。
 本記事の推敲をしてくださった魔法学園RPGハーベスト作者である涼宮隼十さん、本当にありがとうございました。

(以下、2021/07/16 追記)新サプリや細かい修正により、強い魔法、大魔法、トラップが変わったので、追記しておきます。

1. 基本能力の目安

 ここでは、クライマックスで使用するボスエネミーの能力値の目安を書いていきます。各ステータスに幅を設けているのは、PCの人数や熟練度で調整するためです。PCがこれより少ない場合は、HPと防御力を少し減らした方が良いです、多い場合もしかりです。なお、TPを設定するのは、発狂で倒すPCがいる可能性を考慮してです。
 ここでは、能力値の目安だけでなく、魔法、グッドステータス(グステ)、バッドステータス(バステ)、地形、オブジェクト、トラップについての注意も軽く書きます。これは絶対にやらない方がいいというわけではなく、GMも思っていないところで、PC側の詰み、場の硬直、超理不尽が生まれる可能性のあるものを挙げました。
 ちなみに、なぜ初期作成はPC4人想定で、院生はPC3人想定かというと、院生のデータでPC4人でやった例が圧倒的に少ないからです……。データ求む。

1.1. 初期作成(PC4人想定)

アクション値:7くらい
※興奮込みで最終的にアクションダイス数が8~10になると丁度良いです。

リアクション値:4~5(防御が高すぎると無駄なストレスになる可能性があります。防御力よりもHPと大魔法で耐えた方が良いと思います。)

HP(1マス):60~80くらい
HP(2マス):80~100くらい
HP(4マス以降):100~180くらい

TP:25~40くらい

攻撃力:気持ち高めで大丈夫です。3~6くらい。

防御力(1マス):0~4くらい
防御力(2マス):2~4くらい
防御力(4マス以降):3~6くらい

SS値(ほぼPCに負けない):11~
SS値(速いPCにしか負けない):8~10
SS値(ほどほど):5~7
SS値(だいたいのPCに負ける):~4

移動力:1~2

〇魔法について:本当の初心者相手を想定するのであれば、レベル5魔法を取らないのもありだと思います。
〇グステについて:覚醒はバステメインのPCを殺してしまう可能性があるので、初心者相手には与えないことをお勧めします。言わずもがな、時空転移は行動回数を増やせて強いのでご注意ください。
〇バステについて:沈黙はカース魔法なら割と簡単に与えられますが、初心者相手には強すぎるので与えないことをお勧めします。同じく怯みも盾を完全に無効化してしまう可能性があるのでご注意ください。また、重圧が期待していた以上に効きすぎる場合があるのでご注意ください。
〇地形について:高レベルの溶岩をマス全体に入れると下手すると詰んでしまう可能性があるので、レベル2までくらいまでが良いと思います(それ以上でも大魔法で割と何とかなる場合が多いので基本は大丈夫です)。
〇 オブジェクトについて:特になし
〇 トラップ:ライフスナッチ、チェインバーストの運用にはご注意ください。いきなり火力役や盾役が戦闘不能になったりします。特にトラップを使ったことがないPCが多いときはご注意ください。特に、ライフスナッチはPCのHP調整が崩れる原因になるので、基本的におすすめしません。


1.2. 院生(PC3人想定)

※院生のデータはPLが慣れているか、いないかで差が出やすい上、相性差も出やすいのでご注意ください。

アクション値:8~10
※興奮など込みで最終的に11~13ダイスくらい?になると丁度良いです。

リアクション値:6~8

HP(1マス):100~200くらい
HP(4マス以降):200~300くらい

TP:50~100くらい

攻撃力:気持ち高めで大丈夫です。6~10くらい。

防御力(1マス):0~
防御力(4マス以降):5~

SS値(ほぼPCに負けない):16~
SS値(速いPCにしか負けない):10~13
SS値(ほどほど):6~9
SS値(だいたいのPCに負ける)::~5

移動力:1~3

〇魔法について:ボスエネミーは、グステ、バステ、地形を無効化する魔法か特技(できれば特技)を必ず持っていきましょう!ひどい場合は何もできずに敗北します。
〇グステについて:特になし
〇バステについて:沈黙、怯みを与えるときには少し注意した方が良いと思います。
〇地形について:特になし
〇オブジェクトについて:特になし
〇トラップ:トラップ知識がないPCにライフスナッチを設置する場合は少し注意した方が良いと思います。

2. 大魔法バランス目安

 ここでは、大魔法の取得数、運用の仕方の基本、お勧めの大魔法、逆にGM初心者にはお勧めできない大魔法を書いていきます。

2.1. 取得、運用の基本

大魔法の取得数の目安は、基本的には「PC数と同じ数」です。シナリオで大魔法の裏効果での使用想定がある場合は、その分大魔法数を減らしても良いと思います(例えば、PC4人のシナリオで、大魔法の使用想定が1個の場合、ボスエネミーのもつ大魔法数は3個が目安)。また、攻撃系の大魔法(イマジナリー・ウイングなど)と防御系の大魔法(ヴァイス・ヴァーサなど)を最低1つずつは取りましょう。
大魔法運用の基本は、「大魔法を一度に2つ以上使用しないこと」です(イマジナリーウイング+アカシックレコードなど)。これは、一度のダメージが大き過ぎてPCが大魔法を使ってもどうしようもない状況にしないようにするためです。この他の理由としては、ボスエネミーの2つ以上の大魔法を、もしPCが少ない大魔法で処理できてしまうと、余裕ができて戦闘の緊張感が薄くなってしまう可能性があるからです。

2.2. お勧めの大魔法

〇イマジナリー・ウイング(攻撃系)
理由:GMから能動的に使用できるのでお勧めです。さらに、防御魔法に対する強い制約があるわけでもなく、攻撃力が理不尽に強くなるわけでもない安定性から、雑に使用できるのでお勧めです。
〇アンブレイカブル・フォートレス(防御系)
理由:防御系の大魔法の中で最もお勧めします。効果もシンプルかつ、どのような状況でも確実にダメージを0にするという安定性があるからです。ボスエネミーが瀕死になる攻撃に対して使用すればよいという分かりやすさもあります。
〇アスタリスク(防御系)
理由:範囲攻撃でない敵の攻撃を完全に避けられるからです。追加効果も受けません。範囲攻撃の前には無力な点だけは注意してください。範囲攻撃のあるアタッカー役が準備を整える前にさっさと使ってしまいましょう。実は、敵の攻撃を避けるという防御系以外の使い方もありますが、基本的にはお勧めしません。慣れてきたら状況を考えながらやってみましょう!(例:オブジェクトを敵にぶつける、敵が地形やオブジェクトで整えた場を荒らすなど)
〇ヴァイス・ヴァーサ(防御系)
理由:攻撃魔法を1つ無効にできるのがやや理不尽に感じることもありますが、テスタメントや、高攻撃力の魔法に使用できて、使いどころが分かりやすいのでお勧めです。
〇デウス・エクス・マキナ(万能系:攻撃、防御どちらでも使える)
理由:単純に1つの大魔法に対して1つの大魔法を使用するという安定性があるのでお勧めです。また、”大魔法の打ち合い”を演出できるのでお勧めです。

2.3. GM初心者にはお勧めしない大魔法

〇テスタメント(パニッシュメント)(攻撃系)
理由:テスタメントはリアクション魔法制限の効果が強く、多くのPCが大魔法を使って対応してくれます。PCに演出を与える良い機会になるとても良い大魔法です。ただし、PCが防御系の大魔法を持っていない場合は、返せない場合があるので、少し自重した方が良いと思います。うっかり全滅の危険があるため、こちらに入れましたが、他の4つよりは間違いなく使用しても良い大魔法です。
〇エンド・オブ・ノクターン(グランシェルルミエール)
理由:単純にボスのHPが2倍になり、それを考慮してバランス調整をしなければいけないのでお勧めしません。
〇チェックメイト
理由:使い方が難しい上、使い方が上手すぎるととてつもなく強く、安定性がないのでお勧めしません。
〇ラスト・ピリオド
理由:使い方が難しいのでお勧めしません。
〇スタンスの大魔法
理由:弱いので通常のボスエネミーが使用する分にはお勧めしません。

3. 使用時に注意した方が良い魔法一覧

 ここでは、何も考えずに発動し続けると、うっかりPCを全滅させてしまう魔法、PCとの相性では期待していた以上に強すぎる魔法を書いていきます。GMに慣れてきたら、逆に少しずつ使い、適度に戦闘のスパイスにすると良いと思います。
ただし、次の3つの魔法「ガーネットコスモス」、「ゲファタートート」、「メイルシュトローム;square」だけは、基本的には使用しない方が良いと思います。やるとしても、実際に使用する前にかなり考えてみてください。とりあえず、使用回数に制限を設けた方が良いでしょう。なぜなら、どちらも条件によっては、一発撃つだけで、非常に理不尽にPCを全滅や完全な詰み状態に導く可能性を秘めているからです。

3.1. 初期作成

〇フェアリーズイン(ブリリアントドレイン)
理由:一般的にボスエネミーの攻撃力は高く、無意味に長期戦になってしまうのでお勧めしません。
〇(オブジェクトを全てのマスに召喚する魔法と)ブラックホール
理由:防御役を倒すだけならまだしも、火力役や支援役をいとも簡単に倒してしまえるので、この組み合わせで発動する場合のみお勧めしません。
〇アクアエクスカリバー
理由:初期作成のPCのTPは低いので、いたわってあげてください。
〇ホイールオブフォーチュン
フェアリーズインなどと同じ理由です。出し続けると、突破までに以上に時間がかかったり、詰んだりする可能性があります。
〇ヴァリアブルコード
理由:うっかり6以上の興奮や暴走を奪ってしまうと、全滅まで見えてくるのでお勧めしません。発動する場合は、回数制限を付けることをお勧めします。
〇メイルシュトローム;square
理由:最強のバッドステータスである沈黙や、非常にレベルの高い衰弱を永続的に付与してしまうと、アタッカーが完全に機能しなくなります。与えるバッドステータスに制限をかける場合を除き、たとえPCが上級者であっても絶対にお勧めしません。
〇ガーネットコスモス
理由:リアクションフェイズが行えないという最上級のリアクション制限、ボスエネミーはオリジンもアイリスも持っていることが多いという事情を踏まえ、たとえPCが上級者であっても絶対にお勧めしません。
〇(アムネシアと)イレイズ
理由:少ないダイスで強い魔法を打てるので、乱打することはあまりお勧めしません。このコンボは、イレイズを「C34」のコストだけで打つことができます(Cはカース)。
〇スカーレットコスモス(裏)(スカーレットコスモスのエンハンス)
理由:リアクションフェイズで魔法を発動できないという制限も、防御無視という追加効果も強すぎるので絶対にお勧めしません。
〇アブソーブゲイト(トライアンドエラーのエンハンス)
理由:PCは元々通常攻撃の範囲が狭く、工夫をしないと切り抜けられないので、特にPCが初心者の場合はお勧めしません。PCが上級者の場合であっても、範囲攻撃が無いと強すぎるのであまりお勧めしません。
〇レベル5魔法のカースエンハンス
理由:全体的に強いのでお勧めしません。GMがデータに慣れてきたら、そこそこ使えそうな魔法を探してみると面白いと思います。
〇沈黙、怯みを与えられる魔法
理由:どちらもPCが何もできなくなる可能性のあるバッドステータスなのでお勧めしません(怯みは盾役のみ)。
〇防御無視系のアクション魔法
理由:盾役のPCによっては、どのように対処すれば良いかわからず、無力感を感じる場合が多いので、基本的にはお勧めしません。
〇回避系のリアクション魔法
理由:PCが範囲魔法を持っていなければ詰む可能性があり、逆に全範囲を持っているPCには無力であるなど、安定性が無いので、あまりお勧めしません。
〇PCの魔法攻撃をそのまま反撃できるリアクション魔法(HPの多い巨大エネミーのみ)
理由:巨大なボスエネミーの受けるHPは大きく、PCのHPは巨大ボスエネミーよりも少ないという事情から、攻撃役が軽減不可のダメージによって倒れる可能性があるのでお勧めしません。

3.2. 院生

〇メイルシュトローム;square
理由:たとえ院生のPCであったも、沈黙を完全に克服できる構成は少ないので、あまりお勧めしません。
〇ガーネットコスモス
理由:一撃でPCが全滅する可能性があります。
〇スカーレットコスモス(裏)(スカーレットコスモスのエンハンス)
理由:一撃目で盾役のPCが壊滅し、二撃目でPCが全滅する可能性があります。
〇イグジステンス(ドッペルゲンガーのカースエンハンス)
理由:行動回数が増えるだけでなく、場所を圧迫する、キャラクターシャドウが前提のコンボが成立する、処理が重くなるなどの理由でお勧めしません。ただし、この辺りのデメリットを理解した上で、特殊な演出や特殊なボスを制作すれば、とても面白い魔法になると思います。
〇ゲファタートート(ヴァリアブルコードのカースエンハンス)
理由:一発でPCが詰む可能性があります。


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