ブラッドパス「夕獄のカデンツァ」キャンペーン 感想

GM:Mr.Shineさん
PL:しのやんさん、こや

ジェノサイドサーカス発売に合わせて、ブラッドパスのキャンペーンを遊ばせていただきました。
GMのShineさん、本当にたくさんのNPCを演じ分け、設定を積み……正直、感服しかありません。
夕獄のカデンツァという下地にShineさんのカラーが付いた、オリジナル卓だったなぁと思います。この卓はShineさんにしかできない卓です!真似できない……すごい!全4話本当にありがとうございました。

PCたちの設定からそれぞれのプレリュードをたっぷり、しっかり表現していただいて、解像度高く物語に没頭することができました。
パラサイトがイレリア国の創設にどのように関わり、失われ、封印されて現代にいたり、血盟を組むに至ったのか。本当にシナリオと関係ないところなのですが、こんなに丁寧に表現していただけたこと感謝しかありません!

調査判定で、絵札成功か達成値20以上で、NPCの設定や傷号について判明し、妨害や対策を取ることができる、というハウスルールがこの卓の大きな特徴だと思いました。何気ないNPCたちにも細かな設定がしてあって……もうすごいですね。感嘆しか出ませんでした。
また、最終話では掃討判定というオリジナルルールも、面白かったですね。最終話の独特な状況だからこそ映えましたね。情報収集しか判定のないシンプルなブラッドパスですが、こういうルールを追加することによって盤面をさらにドラマチックにすることが出来るのだと感嘆しました。(しかし、私には真似はちょっと出来ないですね……)Shineさんのマスタリングだからこそ、事故ることなく楽しく遊べると思いました!

また、メインPCとは別に、共闘してくれる血盟(GMの演出のみの存在)が居ることで、キャンペーンに関わることのないウルゴスやアイリなどのメンバーについては彼らが何とかしているという演出も面白かったですね。しのやんさんが言っていた「赤夜のロンドが裏番組で進んでいる」という、まさしくそんな感じでした。フリーランスの血盟というのは外界への協力を得られにくいので、かわりに外界をになってくれる血盟というのはありがたかったです。

キャンペーン中に練度も飛び級進行で3、5、8、そして最終練度10まで遊ばせていただけ、初めての高練度で遊ぶことができてとても満足でした。見たことのない景色に連れて行ってもらったなぁという気持ちです。オリジナル特技をNPCから教わって、毎回ギリギリの戦いをくりひろげ、ヒリヒリして楽しかったです!
ミドルでの判定を促すなど、最終血戦以外にもカードを使って判定する機会があったり、リソースをその都度考えながらNPCからの支援を貰ったり。NPCとの絡みも多くてすごく楽しかったです。

●第1幕:因果 2021/06/20

4時間弱に渡るたっぷりな1話でした……。キャンペーンの導入として、業血鬼が起こした事件としては残虐性が少なく、本当に奇劇団が関わっているのか、という疑惑が生じる始まりでした。しかし、業血鬼と話をするのは難しいが、血僕の2人からなら話が聞けるのではないか、というモチベーションに変わっていくのが、面白いなぁと思いました。確かに、業血鬼とは会話しにくいけれど、血僕なら……と思いますね。また、ある程度、レーベルツェード奇劇団のキャラクター設定を知っていたので、ナールとの邂逅にドキドキしました。いきなり来ちゃうんだ、と……。

GMのShineさんのNPCへの解像度がどれも高くて、演出がニクい!
オリジナルイベントシーンで詩鈴が嘔吐している姿をみて、ちょっとびっくりしてしまいました。そんな演出を挟んでくるなんて……!何とかしてあげたいと思ってしまう!
彼女の強がりに優しく寄り添うジェイドと、強がりを脈拍や呼吸から見破ってしまうパラサイト。ヒトの機微が分からないパラサイトが可愛かったです。ずかずか詩鈴に聞いていく……それができるのは源祖だよな~と思ってしまいました。
響雷とのイベントシーンも、詩鈴とは異なりいきなり攻撃を仕掛けてきて、和解できそうな感じが一切ない、詩鈴とは対照的な演出。いや、好きですね!シスコンこじらせた弟はおいしいです!!!

1話の終わりで、詩鈴も響雷もたいした情報がなくて、がっかりしてしまうのですが、闇の中に手を伸ばして探っていく、というという感じが新鮮でした。逆に言うなら、PLがモチベーションを持って挑まないと、かなり受動的になってしまうのでその引き出し方がShineさんはお上手で、詩鈴や響雷との絡みはとても楽しかったです!無事保護できたのも、本当に良かったですね。
エンディングで4人一緒に公園で食事をするシーン。なんだか、数ヶ月後にこの場からひとり減るのかと思うと切ないですね。遅からずやってくる終わりまでの合間の、穏やかな時間。すごく、大事な時間でした。

●第2幕:唱慟 2021/07/10

1話を受けて、2話でパラサイトがオープニングから散歩していたの可愛かったですね。「イヌが~」って言ってしまうのも可愛いですし、いつまでも人嫌いと言っていたれない……という姿勢が好きです。
逆にジェイドは不死者なのに山積みの仕事をこなしているの、なんだか生きている人間と何も変わらないなぁと不覚にも思ってしまいました。

トレーラーにもあるのですが、業血鬼であるティニアが少年と仲良く歌を歌う、そんな日常を過ごしていると思うと、違和感というか「一体なぜ?」という違和感が強く出ますね。特に赤夜のロンドでティニア戦をGMした自分としては、その異質さが際立っていました。そこから、事件介入していく血盟……。やはり自分の足で調べていくスタイルが、このキャンペーンの特徴なのかな、と思いました。

パラサイトとイレリア国の話を、美部さんと一緒に聞いていたのはちょっと楽しかったです。改めてパラサイトという存在が希有な存在なんだなと認識しました。まぁ、建国から関わっていましたからね。
デルトラと邂逅し、窮地を救ってくれたのも好きですね。

純粋な少年マルコくんとのお話も好きでしたし、彼の内情(精気を見てしまう)という設定も好きでした。異端だから、他の人と交わる場所がない子という感じがひしひしとしました。理解者の居ない世界で、解ってくれた存在が業血鬼だったとしても、マルコにとっては大きな存在だったんだろうなぁと思いましたね。ジェイドとマルコのやりとりもすごく好きでした。もうすぐ死ぬ人間と、輝かしい未来が、たくさんの可能性がある少年とのやりとり。良かったです。
ティニアについての話をパラサイトとリリエラの2人がしているなかで、ヒトも吸血鬼も他者への羨望、嫉妬は変わらないんだなっとティニアの過去を知るほどに思いますね。そして、その中でパラサイトが人間が嫌いなのではなくて、ヒトの持つ感情が苦手なのかもしれないという話をするのが、おぉお!なるほど!と思いました。多くの吸血鬼がヒトから成っているということも、ふまえての発言なのだなと……。そうして、ヒトについて知っていきたいとパラサイトの方向性が変わっていくのがまた、うれしくもあり寂しくもあり……。
ティニアとの血戦前のやりとり、静かにバチバチやり合うのが密かに楽しかったです。いつまでも続く平行線のやりとり……。この血盟、どちらも優しいんですよね。私、すごく業血鬼に肩入れしてしまうキャラクターって好きなのですが、残酷に首をはねることをしないで、相手のことをどこまでも、最後まで尊重できる、PLとしてすごく徳が高いなぁと思います。考え方が似ている方、合わせてくれる方と遊ばせていただけるの、すごく幸せです。
最後にティニアと歌声を重ねて歌ったことを知っているのが血盟だけ、というのも切なくてもの悲しくて……切なくも、優しい物語でした。

●第3幕:屍連 2021/07/18

日常シーンが穏やかだったのが、印象的でした。一緒にケーキもぐもぐ。こんな穏やかな時間が最後だったなんて。
事件への介入で、自分たち宛の手紙を読みながらそれがイレリア王国の言葉で書かれている……という演出、ニクいですね。イレリア国の出身者には解るってやつですね。
そして、NPC側にはウルゴスからの招待状。業血鬼が2体、同時期に別の場所で舞台をするから人員が足りないというのは、内心ヒヤヒヤするシーン演出でした。ドキドキした!NPCの血盟に対して「お互いに頑張ろう」という演出が出来るのはいいですね。4人で遊ぶときも、あくまで業血鬼1体に対して血盟2人という演出が多かったので。裏番組で進んでいる感じ、一緒に目的を果たす血盟がNPCとして側にいてくれるのは本当に心強かったです。
調査シーンが遊園地内をうろうろしながら、手がかりを探していくというのが、場違いな感じがしつつも、最終的に工事中の城に行き着く……。サルタとしてもかすかにある、誰かの思い出の残滓を辿ってそこを選んだのかなと思うと、なんとも言えない寂しさがありますね。本人もきっと解っていないんでしょうが。
過去に戻って、パラサイトとアシュレイの過去のシーンを見るたび、泣きそうになっていました。美しい思い出をこんなに作っている……なのに、残酷な結末が決められているなんて。
アシュレイに対するパラサイトの思いが、理解度の高さがすごく素敵でした。サルタに対して「ただ力を求めて戦ったのではなく、人々の安寧を、平穏を願って戦い続けた男のものだ」というところが、本当に好きでした。アシュレイのことも大好きになりましたね!
サルタが血盟をリスペクトして、倒れていくのがもう、サルタさん!!!!というくらい彼女はシンプルで格好よかったです!!!!サルタさん!!!倒されても爽やかでかっこいい!!!練度8……一瞬撤退も考えるようなヒリヒリとした戦況でした。ゲームが変わった……本当に怖かった……!

●第4幕:終縁 2021/07/30

ついに、最終幕……。感慨深いですね。最終幕はびっくりするほどPLがついて行くのが精一杯だった印象を抱いています。東京中を覆う血戒の発生。緊急事態でした。なんだか、自分の生死とか言っている場合ではない状況になってナールを絶対に倒さなければいけないという問答無用に命題を突きつけられたような感じでした。
人々が笑い合って殺し合う状況に、業血鬼はこんなことも出来るのかと、びっくりしました。
NPCの血盟たちだけでなく、詩鈴や響雷、デルトラ、他の対鬼組織の血盟たちが力を貸してくれて、最終血戦までの道すがら、いろいろな者たちの力を借りてきて、ここに至ったのだなぁと改めて思い至りましたね。
全体を通してあらゆる場所でいろいろなNPCたちが動き回っている群像劇的な演出がされていて、GMの力量、表現の高さに感嘆いたしました。すごいな。これはShineさんにしか出来ないな。
NPC血盟との最後のやりとりもすごく好きでした。彼らとの出会いが落ちた砂時計を再びひっくり返すきっかけになったこと、もうとっくに彼らと友人同士だったこと、数ヶ月しか一緒に過ごしていなかった時間なのに、一番人間として濃い時間を過ごしたなと本当に思いました。
最後の吸血シーンでは、初めて血盟を組んだときと同じように、互いに傷跡を重ね合わせて、精気の交換をする。そういうのが本当に好きだったので、呻きました。ありがとうございます。
その上で、キャラメイク時にチラリと話していた「イレリアの大地にジェイドを埋葬する」という設定をパラサイトが提案してきたのはもう、語彙が死にましたね。ここで、回収するんだと……!感無量でした!
ジェイドの生も、死も無駄ではなく彼の命がこの星で循環していく、それをパラサイトが見守っていく、そう思うと泣きました。血戦直前なのに、感動でもういっぱいでした。
ナールとの最後のやりとりでパラサイトがかっこいいんですよ!「君がたどり着いたのなら、僕だってたどり着ける、取引はしない」とはっきり澄んだ瞳で言い切るのたまらなく格好よかったです。血盟がかっこいい!(語彙は死ぬ!)
練度10……生命カード13枚……本当に、本当に頑張りました。ありがとうございました。

・人間:ジェイド(PL:こや)
黒死病を患い、死の淵で半鬼の妹を置いて死ねないという強い望みにより鎖牢の主と契約してしまった人間。妹と死別したあと、100年も終わらない生をぼんやりと過ごしていたのですが、鎖牢の主の情報を聞いてようやく自分の人生を終わらせる覚悟を決めたキャラクターでした。
鎖牢の彷徨者として不死者となり、死なないという表現をShineさんが毎回、1回殺してくれる演出を挟んでくれたので、すごく楽しかったですね。人間離れしている感がひしひしと出ていて、「これはヒトの領域からはみ出てるな」と感じました!
第1幕の冒頭で血盟を組んだ二人でしたが、この二人がどのようになっていくのかすごくドキドキしました。どちらかというと、互いの利害の一致で血盟を組んだ二人だったので。ジェイドも熱く滾るキャラクターと言うよりは、冷めている、世界から置いて行かれてしまったという浮世離れした印象の強いキャラクターだったので。自分の終わりについて何度も何度も考えながら、どんな終着点に至れるのか、ドキドキしていました。
第2幕のはじめの交流シーンで「余白のように生きている、この生は間違っている」というジェイドに対して「星ですらいつかその生を終えるもの」という切り返しが詩的ですごく好きでした。「(パラサイトが)その生を終えるときまで待っていてもいいか」という問いに「きっと、すぐですよ」って答えてくれるの本当に、いろいろな感情でいっぱいでしたね。なにせ、100年以上妹を待たせている身の上でもあるので、待たせている妹にとっても、そしてこれから待つジェイドにとっても「きっと、すぐ」先の未来であるのだなぁと思うと少しだけ心が軽くなったのを覚えています。
第3幕で、「変わることができるだろうか」という問いに、セレネが「一歩踏み出した瞬間から変わっている」と教えてくれたこと、鎖牢の彷徨者となり、寿命を遙かに超えたとき、実は自分がすでに死んでいて、別の生き物に成ってしまった感覚を抱いていたのに、パラサイトがあっさりと「ジェイドは人間だろ」って全肯定してくれたことに、すごく前向きになりました。人間として人生を終える。それは、残酷に与えられるのではなくて、自分が自分で死ぬことを肯定して死ぬ。満足して死ぬ。たくさん悩んで覚悟が決まった瞬間だなあと今でもはっきり覚えています。「心ひとつで人はいつでも変わることが出来る」それを体現できたのは本当にGMとパラサイトのおかげでした。
第4幕での自分がなぜ、鎖牢の主と契約を交わしたのかという話をパラサイトとしたとき、自分勝手な人間だなぁと改めて思いました。パラサイトが嫌う人間たちと何一つ変わらない。弱いからこそ、縋る。そして、都合が悪くなったら契約を解除したくて、鎖牢の主を探す、倒そうとする。ただのエゴの塊だと思いました。
他の多くの人間たちと何も変わらない。人間の自分勝手で醜いそういう一面をパラサイトに見せたとき、軽蔑されることも覚悟の上だったのに、彼女が「後悔し、自分で自分の運命を決める。過ちをただそうとする姿は人間らしいと思う」と優しく受け止めてくれたのがうれしかったですし、最後に友達になれたのはすごく、すごくうれしいことでした。最終回で友達になるって熱いですね!お疲れ様でした。ありがとうございました。

・吸血鬼:パラサイト(PL:しのやんさん)
宇宙から飛来した隕石から発声した源祖。彼女(彼?)の力によって、周囲に精気が満ちイレリア国周囲が特殊な精気で満ちた……というすごい設定。彼女の持ち味の血奏法は電気や磁力を操り、AEDしたり、プロジェクターしたり、電脳化して情報を閲覧したり……本当に規格外でした。
イレリアの国を興したアシュレイと、その土地を提供した(?)パラサイト。国が出来て、そして滅亡するまでを見てしまい、国を仲間たちを屠った人間たちを嫌っているという設定。封印されて目覚めたら、イレリアの見る影もないというのは切なすぎますね……。
纏う空気感が独特で。物静かで、まるで物事を通り過ぎる現象、ただ見ているだけ、という人間側からすると少し高い位置にいる、神のような存在という印象を受けました。熱くなることはなく、情に揺らぐこともなく、でもまっすぐにその場にあるものたちを見ている。畏怖すら覚えました。
人間嫌いの吸血鬼。信頼しているのは血盟だけという立ち位置が当初から伝えられていたのですが、プレリュードをみてから、嫌いなことの話題で「人間」が出てくると分かっていても、「そうだよな……」って同意を示してしまいますね……。辛い!でも、人間って多面体だから、一方向だけでなくいろいろな方向から見て欲しい、という歩み寄りによって少しずつ少しずつ周囲の人々に心を許していくところ、変わっていくことが本当にうれしかったですね。そして、不変であるといわれている吸血鬼であっても少しずつ変わっていくんだなぁと思うたびに、不死で時間が止まってしまったジェイドとの対比になっていて、すごく好きな表現でした。
パラサイトとアシュレイのお話は特に3幕で深く掘り下げられていたのですが(もちろんそういうシナリオだったので)パラサイトが彼に「自分がこの国(イレリア)の行く末を見届ける」と約束しているところがこう……たまらなく、ぐっときました。感情で動くタイプではない、人情に動かされるタイプでもないパラサイトが、アシュレイの作った国を見届けるって約束するのが、言葉で上手く表せないのですが(誠実さとか、真実性みたいなかんじですかね)あぁ、絶対にその約束を違えることはないんだろうなってひしひしと伝わってきました。
奇劇団との戦いが終わったらイレリアの土地に帰って、あの場所でずっと過ごしていく、あの場所以外に自分の居場所はないという彼女の言葉に、これからもずっとあの場所で時間が流れるのを見つめていくのかなぁと思うと、やはり超越者という印象を受けました。
彼女の見守る土地で眠りを見届けてもらいながら、命が巡っていくことはきっと何にも代えがたい幸せなことですね。本当にありがとうございました!!

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