見出し画像

2024年度以降の国立大学入試科目に「情報Ⅰ」決定〜6教科8科目を原則に〜

2022(令和4)年1月28日に国立大学協会が、2022年度の高校1年生(現中学3年生)が受験生となる2024年度(2025年実施)の入試科目に関する基本方針を公表しました。
一般選抜の受験生に対し、教科「情報」(科目名は情報Ⅰ)を加えた6教科8科目を課すのを原則とするとの方針を正式決定したとのことです。

「2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度―国立大学協会の基本方針―」の公表及び「2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度―国立大学協会の基本方針―」の策定に当たって(会長談話)の発表について

国立大学教育委員会HPより

情報はまだまだ少ないですが、今ある情報だけまとめて、過去の入試科目変更で起こった事態からどのようなことが起こるのかを考えて見ました。

1.国立大学協会資料、「情報」に関する記述全文

今回、国立大学協会が公表した資料には、「情報」以外の入試の方針についても記載されています。その中から情報に関する記述だけを抜粋しました。

1.2024年度以降の国立大学入学者選抜制度の基本方針
(2)「大学入学共通テスト」
6教科8科目の原則
 
高等学校においては、2022年度から新学習指導要領が年次進行で実施され、事象を情報とその結び付きの視点から捉え、情報技術を適切かつ効果的に活用する力を全ての生徒に育む必履修科目として、「情報Ⅰ」が設けられることとなった。2024年度に実施される大学入学共通テストからは、この新学習指導要領に対応した教科・科目が出題され、特に、大学入学共通テストの出題教科に新たに「情報」が加わることは、大学入試センター試験を含め初の教科の追加となる。
 国立大学においても、これからの社会に向けた人材育成の中で、文理を問わず全ての学生が身に付けるべき教養として「数理・データサイエンス・AI教育」が普及しつつある。そのような状況の中で、高大接続の観点からも、「情報」に関する知識については、大学教育を受ける上での必要な基礎的な能力の一つとして位置付けられていくことになる。
 よって、2024年度に実施する入学者選抜から、全ての国立大学は、「一般選抜」においては第一次試験として、高等学校等における基礎的教科・科目についての学習の達成度を測るため、原則としてこれまでの「5教科7科目」に「情報」を加えた6教科8科目を課す。
 なお、2024年度に実施する入学者選抜での経過措置問題を含む「情報Ⅰ」の活用の方法等について、各大学は、速やかにホームページを活用して公表するなど、受験生に対して十分な説明を行う。

2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度
-国立大学協会の基本方針-

ちなみに、共通テストの教科「情報」のサンプル問題はすでに大学入試センターから公表されています。

令和7年度以降の試験に向けた検討について

大学入試センターHPより

2.入試科目が変更になると起こること

国立大学が揃って科目を増やすのは、2004年1月の大学入試センター試験以来となります。
実は、筆者はこの年の大学受験生で国立大学志望でしたので、当時のことはよく覚えています。次の年には英語にリスニングが追加されるということも決定しておりましたが、私の母校ではほとんどリスニング対策の授業は行っていませんでした。同じような事態は全国で起こっていたのではないかと思います。こうなると受験生側は、「国立大学は勉強の負担が増える」「浪人するとリスニングの対策が大変」という気持ちがどの受験生にも働きます。結果として、国立大学の志望者がかなり減少し、当時の倍率はかなり下がりました。(おかげで筆者はかなり助かりました!)

最近の出来事として、科目が増えたことで入試に大きな変動がでたのは2012年入試の「倫理・政経」問題です。
東京大学や京都大学が「『日本史B』『世界史B』『地理B』『倫理・政経』という4単位科目から2科目を入試科目とする」と決定した際も大きな話題となりました。「日本史A」「世界史A」「地理A」「倫理」「政治経済」「現代社会」という2単位科目は入試科目として認められなくなったという問題です。

当時、文系の5教科7科目といえば、「世界史B」「現代社会」のような4単位科目と2単位科目を組み合わせて受験していた学生も多く、学校のカリキュラムもそれらを見越して授業が組まれていました。しかし、これが許されなくなったわけです。
東大・京大を受験するような生徒が多く在籍していた進学校では、授業時間を再編するという対応にを迫られていました。「高校公民免許を持っている先生の数が足りない」という問題を抱えていた県もありました。

今回の6教科8科目は4単位科目問題と同じように「どの国立大学で『情報Ⅰ』が入試科目として課されるのか?」ということが大きな焦点になってきます。
過去の動きを見れば、筑波大学、広島大学、東北大学、大阪大学あたりの決定と公表が先行しそうだなと予想しています。
それらの様子をみて、東京大学や京都大学がその対応を発表することでしょう。そして、この2大学が対応を公表したタイミングで情勢が大きく動くこととなるでしょう。また、東京工業大学などの理系に強い国立大学の動きにも注目したいところです。

筆者は、学習参考書などを制作する出版社に所属しています。
我々も、大学側の情勢を見ながら問題集などの発刊計画を立てていきますが、英・数・国・理・地歴・公民と違って、編集者側も新しい教科への対応を迫られていくことになります。また、制作体力という問題もあります。
共通テスト1年目の際に各予備校の共通テスト対策問題集は、「予想問題」と「センター試験の過去問題」という問題構成が大半でした。
つまり、今後、各予備校や出版社がどこまで問題集や参考書などを発刊できるのかについても不透明なところが多いのです。これも受験生にとって影響を与える要素なのだと考えています。

3.どのくらいの大学が入学者選抜で活用するのか?会長談話より

上記したように、各大学が「情報Ⅰ」を入試科目にどのように設定するかで影響度合いが変わってきます。その温度感を知る参考と資料として、国立大学協会会長の談話が参考になるように思います。
あまり談話を資料として出すことはないので、筆者の個人的な見解としては「文系も理系も覚悟せよ」ということなのではないかと感じています。こちらも全文を掲載いたします。

「2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度-国立大学協会の基本方針-」の策定に当たって(会長談話)

 このたび、国立大学協会は「2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度-国立大学協会の基本方針-」を策定し、公表しました。
この基本方針については、2022年度から年次進行で始まる、高等学校の新学習指導要領に対応し文部科学省から公表された「令和7年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」等の内容を踏まえ、国立大学協会として取りまとめた方針を示すものです。

 2024年度以降の入学者選抜において、最大の変更点は、大学入学共通テストの出題教科に、国語、数学、英語等と同様の基礎的な教科として「情報」が追加されることです。
 これまで国立大学協会は、「高等学校における基礎的教科・科目の学習の達成度を測る」ことを目的に、一般選抜において大学入学共通テストで「5 教科 7 科目」を課すことを原則として掲げてきました。2022年度から始まる高等学校の新学習指導要領では「情報Ⅰ」が全ての生徒が学ぶ必履修科目として履修され、一方、国立大学においても既に多くの大学で、「数理・データサイエンス・AI 教育」が文理を問わず全ての学生が身に付けるべき教養科目として履修されています。このような中において「情報」に関する知識については、国立大学の教育を受ける上で必要な基礎的な能力の一つとして位置付けられていくと考えています。それらを踏まえ、今回の基本方針では、一般選抜において、これまでの「5 教科 7 科目」に「情報」を加えた、「6教科8科目」を課すことを原則としています。
 大学入学共通テストでの「情報」導入初年度は、既卒者となる方への経過措置として、現行の学習指導要領の内容に対応した「旧情報(仮称)」が出題されます。既卒者の方は、自らが学んだ学習の成果を測るものとして、この「旧情報」を受験することができます。また、国立大学においては、「情報Ⅰ」と「旧情報」の内容の違いについて必要なサポートを行い、「情報Ⅰ」を学んだ方と共にさらに発展的な「数理・データサイエンス・AI 教育」を
学んでいただきたいと考えています。
 今後、各国立大学は、本基本方針を踏まえ、それぞれのアドミッション・ポリシー等に基づき2024年度に実施する入学者選抜に向け具体的な入学者選抜方法の検討を行い、2022年度中には予告・公表を行っていきます。

令和4年1 月 2 8 日
一般社団法人 国立大学協会
会 長  永 田 恭 介

「2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度-国立大学協会の基本方針-」の策定に当たって(会長談話)

また、進展がありましたらまとめていこうと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?