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クラシックでDTMは流行らない?

 2020年から和声学を再開したときに同時にDTMも学びはじめました。そのため、EDM(クラブ・ダンス曲)を作るときはCubase,AbletonLiveなどを使っています。映画音楽などやバックオーケストラでプロのオケの音源や高音質のピアノの音源がVST音源として販売されていて、私も買ってみて、いくつか曲を作ってみたのですが、4つ打ちのクラブ曲などと比べるとクラシック曲はなかなか難しい。難しい理由はいくつかあると思います。

  ① ダイナミクスとパッセージなどの楽器の音の変化のヴァリエーションがまだまだであること。(映画音楽のようなダイナミクスはしっかり出る、というか映画音楽はDTMで作っている)
 ② クラシックのテンポ変化や拍の変化が激しく、等時間=等間隔でつくることが多いDTMソフトでは何となく慣れないこと(テンポ変化以外にもルバートやリタルダンドなどの変化)
 ③ 譜面浄書ソフトの再生機能から音を出す方法(Finale、Sibeliusなど )いまのところこちらのほうがクラシックでは楽譜との整合性も取りやすいし現実的だし分かりやすいのではと思います。ワルツのアゴーギグなども勝手に判断して割と生の音楽っぽく音をだしてくれます。(その分思わぬところで勝手に解釈されてしまう)。
 ④ ミキシング、マスタリングなどの知識不足 DTMでつくるようなポップス系の曲のミキシングではうまくいかない。(特にダイナミクスの変化やディビジ、楽器の配置とホールの残響など、)またそのノウハウがあまり知られていないため、作曲家、学生が一人でそこまで習得するのは大変である。

 ですが、今後発展していく分野なはずです。五線譜による作曲は消滅するでしょうか?わかりませんが、DTMの画面上のピアノロールや音圧波形ロールによってクラシック音楽が分かったり、和声進行の分析がしやすいわけではないため、両者を統合したような新たな記譜法がそのうちできるかもしれません。現実には今のクラシック作曲家は楽譜作成ソフトを使うほうが普通であるし、その際再生機能で合成された音を確かめつつ作曲をすすめている訳です。オーケストラ曲の場合作品を作って世に公開してから初演で大失敗したという例が歴史的には後世に伝えられているけれども、多くは多数の楽器による演奏の実際への想像力が及ばずということが多いので、その点はこれらのソフトでだいぶ予想可能になるため、助かるのです。
 (クラシックの打ち込みを極めて行かれている方のサイトhttps://nyoshi-ni.blog.ss-blog.jp/

  ミュージック・コンクレート Music Concrete の観点から
 音源のサンプリングを使って作曲に取り入れる試みはクラシックの場合あまりうまくいっていないように感じます。現代音楽では演説家の演説をコラージュしたりなどの技法として一部取り入れられていますし、ミュージカルなどでは効果音がサンプリングされて流されるなど総合芸術としての利用はされていますが、何か正統派ではないという印象です。短い音源やテンポが感じられないサンプリング音源は実演奏でキーボード奏者がサンプラーを鳴らすことで、実演奏と同期できますが、指揮者がいる場合長い時間の音サンプルを指揮者のタイミングにリアルタイムに変化に対応して合わせられるかという問題があります。Popsコンサートの場合ドラマーがDTM上のメトロノーム音をイヤーモニターで聞き同期していますがクラシック音楽の場合指揮者やコンサートマスターの動きをAIで検知して同期するなどの進歩をするのか、将来が楽しみです。

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