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自然言語処理応用: 専門知識でプロンプトを書く

この記事は、↓こちらの自然言語処理入門(全7回)の次に読むことを推奨します。

入門編で学んだ専門知識を身につけると、専門性を持ったプロンプトを設計できるようになります。

当然、専門知識を持たない人が書く一般的なプロンプトよりも、目的に対してより高品質な出力を望むことが可能です。
つまり、下記のような疑問点を解消できます。

Q. プロンプトエンジニアの専門性はどこにあるのか?
Q. 自然言語処理の知識を学ぶと、一般的な応答プロンプトからどんな工夫ができるようになるのか?

1: メカニズムへの深い理解:

1 - 1. なぜこの専門性がプロンプトに応用できる?

自然言語処理に関する専門知識を持つ人は、テキスト生成やその他のタスクに関してAIがどのように動作するのか、そのメカニズムや制約を深く理解しています。この理解により、モデルの出力がどのように形成されるのか、また、どのような入力が有効であるかを把握することができます。

1 - 2. 具体的な応用例

ChatGPTに「次の文章の要約をしてください」というプロンプトを入力した際、モデルが意図しない詳細な要約を提供することがあった。自然言語処理を理解しているユーザーは、モデルが要約の「長さ」や「詳細度」に関する具体的な指示を必要とすることを認識しており、プロンプトを「次の文章を5文以内で要約してください」と修正することで、期待する出力を得ることができた。

1 - 3. プロンプト

一般的なプロンプト: 
「次の文章を5文以内の要約として生成してください。」
専門的なプロンプト: 
「次の文章をBERTモデルを基にした5文以内の要約として生成してください。」

当たり前じゃん、と感じる方もいると思います。
なぜなら、「文字数を指定する」のような具体的に条件を指定することは、効果的なプロンプトの定石として皆さんご存知だからです。でも、「なぜそうなんですか?」「どういう仕組みだから、その条件指定が効果的なんですか?」という深い質問には、定石を形式的に覚えているだけでは答えられません。

モデルが要約の「長さ」や「詳細度」に関する具体的な指示を必要とする」という性質を専門知識として有していることが、このような(簡単だけども本質的な)プロンプトの発想に繋がります。

次の新しい定石を自ら開発し続けるためには、自然言語処理の専門知識が必要になります。

2: 意図的なバイアスの調整

2 - 1. なぜこの専門性がプロンプトに応用できる?

AIやモデルのパラメータや設定を調整する際、この専門知識を持つ人は、期待される結果に近づけるための適切な調整を行う能力が高まります。具体的には、モデルのトレーニングやファインチューニングの方法、ハイパーパラメータの選択などにおいて、より熟練した判断を下すことができます。

2 - 2. 具体的な応用例

ユーザーがChatGPTに「アメリカの歴史について教えて」という質問をした際、モデルが20世紀後半の出来事に特に焦点を当てた回答を返すことがあった。自然言語処理の知識を持つユーザーは、モデルが最近の情報にバイアスを持つことを理解していたため、プロンプトを「アメリカの19世紀の歴史について詳しく教えて」と修正し、期待する情報を得ることができた。

2 - 3. プロンプト

一般的なプロンプト:
「アメリカの19世紀の歴史について教えて。」
専門的なプロンプト:
「アメリカの19世紀の歴史について、transformerベースのモデルが参照しがちな初期のコーパスに基づいて詳しく教えて。」

3: エラーの特定と修正

3 - 1. なぜこの専門性がプロンプトに応用できる?

何か問題や誤りが生じたとき、この知識を持つ人は、原因を特定し、解決する手段を迅速に見つけ出すことができます。例えば、モデルが特定の入力に対して意図しない出力をした場合、その原因や背後にあるメカニズムを理解することで、解決策を導き出す手助けとなります。

3 - 2. 具体的な応用例

ChatGPTに「最も人気のある果物は何ですか?」と質問したところ、モデルが「地域や時期によって異なります」という一般的な回答を返してきた。自然言語処理の専門知識を持つユーザーは、モデルが曖昧なプロンプトに対して一般的な回答を生成する傾向があることを理解していた。そのため、プロンプトを「2023年のアメリカで最も人気のある果物は何ですか?」と具体的に修正することで、具体的な情報を得ることができた。

3 - 3. プロンプト

一般的なプロンプト:
「最も人気のある果物は何ですか?」
専門的なプロンプト:
「2023年のアメリカのデータセットに基づき、TF-IDFスコアが高い果物を1つ指定してください。」

4: カスタムモデルの開発

4 - 1. なぜこの専門性がプロンプトに応用できる?

専門知識を持つ人は、プレトレーニングされたモデルだけでなく、カスタムモデルの開発や改良も行えます。これにより、特定のタスクやニーズに合わせて、最適なモデルを作成することができます。

4 - 2. 具体的な応用例

特定の業界用語やジャーゴンを含む文書の要約を行うためのカスタムモデルを開発した際、生成された要約が専門用語を適切に扱わない問題が発生した。これは、一般的なコーパスでプレトレーニングされたモデルでは、特定の業界のジャーゴンに対する理解が不足しているためだった。専門知識を持つ者は、この原因を特定し、専門的なデータセットでのファインチューニングを行うことで問題を解決した。

4 - 3. プロンプト

一般的なプロンプト:
「業界の用語を理解するためのモデルを作ってください。」
専門的なプロンプト:
「業界特有のジャーゴンを含むテキストを処理するための、RoBERTaベースのファインチューニングモデルを設計し、評価してください。」

5: 過学習の認識

5 - 1. なぜこの専門性がプロンプトに応用できる? 

過学習や他のトレーニング関連の問題を早期に検出し、対策を講じる能力があります。これは、モデルの一般化能力を高め、実際のタスクでのパフォーマンスを向上させるために重要です。

5 - 2. 具体的な応用例

新しい質問応答システムのモデルをトレーニングしている際、トレーニングデータに対する精度は非常に高かったが、検証データに対する精度が低かった。これは、モデルがトレーニングデータの特定のパターンを過度に学習してしまっていたためだった。自然言語処理の専門知識を持つ者は、この過学習を認識し、正則化手法を導入することで問題を緩和した。

5 - 3. プロンプト

一般的なプロンプト:
「モデルが正確に動作しているか確認してください。」
専門的なプロンプト:
「質問応答モデルのトレーニングログを基に、L2正則化やドロップアウトの最適なパラメータを推薦してください。」

6: データの前処理

6 - 1. なぜこの専門性がプロンプトに応用できる? 

自然言語処理の知識を持つ人は、モデルのトレーニングや評価に最適なデータの前処理やクリーニング方法を知っています。これにより、ノイズの少ないデータを使用して、モデルの性能を最大限に引き出すことができます。

6 - 2. 具体的な応用例

テキスト分類タスクのためのデータセットを使用している際、モデルのパフォーマンスが予想よりも低かった。これは、テキストに多数のスペリングミスや文法的な誤りが含まれていたためだった。専門的な知識を持つ者は、この問題を認識し、データのクリーニングと前処理を行うことで、モデルの性能を向上させた。

6 - 3. プロンプト

一般的なプロンプト:
「テキストデータのエラーを修正してください。」
専門的なプロンプト:
「テキスト分類のためのコーパスにおいて、スペリングや文法のエラーを検出し、SpacyやNLTKを用いてクリーニングの推薦手法を示してください。」

7: 解釈可能性の向上

7 - 1. なぜこの専門性がプロンプトに応用できる?

モデルの出力や動作の背後にある理由を理解し、それを他のステークホルダーに説明する能力があります。これは、モデルの採用や実用化を促進する上で非常に有用です。

7 - 2. 具体的な応用例

ある企業の内部文書を分析するAIモデルが、特定のキーワードに基づいて文書をクラス分けしていた。しかし、そのキーワードの選択や重み付けの理由が不明確だった。専門知識を持つ者は、アテンションメカニズムや他の解釈可能性ツールを使用して、モデルがどのようにキーワードを選択しているのかを明確にし、ステークホルダーに説明した。

7 - 3. プロンプト

一般的なプロンプト:
「モデルがどのキーワードを重視しているか教えてください。」
専門的なプロンプト:
「Transformerベースのモデルのアテンションウェイトを用いて、特定のキーワードに対する重要度を可視化し、解釈を提供してください。」

8: セキュリティとプライバシー

8 - 1. なぜこの専門性がプロンプトに応用できる?

自然言語処理の専門家は、モデルの出力がセンシティブな情報を漏洩するリスクを理解しています。そのため、これらのリスクを緩和するための措置を取ることができます。

8 - 2. 具体的な応用例

ユーザーからのフィードバックを分析するAIモデルが、特定のユーザーのセンシティブな情報を間接的に公開してしまう可能性があった。これは、モデルがユーザーの具体的な情報を元の形で再生成するリスクがあったためだった。専門知識を持つ者は、このセキュリティリスクを認識し、データの匿名化やモデルの出力制限を行うことで、情報の漏洩を防ぐ措置を講じた。

8 - 3. プロンプト

一般的なプロンプト:
「ユーザーの情報が安全か確認してください。」
専門的なプロンプト:
「ユーザーのフィードバックから生成されたテキストを分析し、センシティブな情報が再生成されるリスクを評価し、Differential Privacyの導入を検討してください。」

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