交換コラムNo.29 めっちゃ告られた話

何もすることがない土曜日に、大学時代の先輩から「渋谷で飲んでるけど来る?」と連絡があった。

仲のいい先輩だし、久しく会ってなかったし、行ってみようとなった。

渋谷のなんてことないお店で、先輩と先輩の会社の同僚A子、A子の男友達2人が飲んでいるところにお邪魔する形になった。

A子はすごく美人で、性格的にも出しゃばりすぎずにタイミングをわきまえる、かなりいい子だった。が、その友達2人というのがいわゆる俗物で、とにかくつまらない合コンやナンパの話ばかりをする人たちだった。先輩はいつものようにヘラヘラと、しかし常軌を逸することなく、場を盛り上げていた。

一次会が終わって、さあもう一軒、というときに、A子の友人2人は帰っていった。自分としては、中身のない話にノリを合わせて相槌を打つ必要もなくなり、好都合だった。

次の店に入ってしばらく飲み、トイレから戻ると、A子が突然挙手をし「あの、ちょっといいですか」と場を仕切り直した。

何を言い出すのかと思えば「あなた(僕)のことがめちゃくちゃタイプで、私、どうですか?」などと言う。

生まれてこの方こんな経験はもちろんなく、カスカスの人生を送ってきた自分にとってはあまりにも衝撃的な出来事で、店でガッツポーズを掲げ「ヨッシャ〜」と叫んでしまった。かつ「こんなに真正面に思いを伝えられる人」に対して正直に「素敵だな」と思った。

すぐさま連絡先を交換して、そのテンションのままカラオケに行き、その日は解散となった。

翌日すぐにA子に連絡をして、翌週末にデートのお誘いをした。いきなり2人というのもなんだから、と間にいた大学時代の先輩も誘った。

事態がおかしくなり始めたのはこのあたりからである。

翌週のど平日水曜日、週末のことを考えながらぼんやりと仕事をしていると、その先輩から「話したいことがあるから今夜飲めないか」と連絡があった。

顔を合わせた先輩はどこか青ざめていて、瞬時に「A子のことだな」ということがわかった。

よくよく話を聞くと、その衝撃の告白があった帰り道、なぜかその先輩がA子といい感じになり、そのまま一夜を共に過ごしたという。先輩には3年付き合っている結婚目前の彼女がいるにもかかわらず、である。「僕浮気しちゃった…君には彼女から手を引いてほしい」と言われ、戸惑いながらも「はい分かりました」と返答した。

週末のデートは、そんな2人のいちゃつきをまざまざとみせられる、いわば地獄、あるいは虚無の時間と化した。

話しているとA子が漫画「パタリロ」をこの世で一番愛している、という話題になった。

「パタリロ」を画像検索して出てきた「パタリロ」がめっちゃ僕に似ており、そういうことかい、とずっこけた。

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